転生した俺、弱虫勇者の保護者(えいゆう)になりました

雪鵠夕璃

文字の大きさ
84 / 117
第一章:神聖リディシア王国襲撃編

リレウ・アンティエール ③

しおりを挟む
翌日の朝。リレウはいつもの様に食べ物を盗み、衛兵達から逃走していた。

「そこの女!!待ちやがれ!!」

「今日こそはとっ捕まえてやる!!」

「お前らは右に行け!先回りしてあいつを挟み撃ちにするぞ!!」

背後から聞こえる衛兵達の声に、馬鹿らしいと言いたげに口元に笑みを刻む。1度も自分に触れることさえ出来てないのに、策を立てた所で無意味。オマケにこの辺りの道の構造は衛兵達よりリレウの方が詳しい。

【スレイブ迷道】と呼ばれるこの道は、攻めてきた敵国の兵士達を迷わせる為に使われていた。しかし、数十年前から使用されることはなくなり、気づけば悪人達の逃走路に使われるようになっていた。ならば、この道を壊せばいいと思うかもしれないが、ここを壊せばまた敵が攻めてきた時に簡単に攻められてしまうという理由で壊すことが出来ない。それに大体の悪人達は迷いに迷ってそこで一生を終える事の方が多い。その為、リレウの様に道に迷わない人間は稀なケースだ。

「あァ、クソ!!」

「あの女、どこ行きやがった!!?」

「ちっ。仕方ねえ。お前ら!邪魔な障害は全て蹴散らせ!」

リーダ格らしき衛兵は衛兵らしくない言葉を吐いて、前を遮る障害物を魔法で蹴散らした。他の衛兵達も最初は戸惑ったが、リーダ格らしき衛兵にひと睨みされ、渋々、魔法で障害物を蹴散らしていく。

「--っ」

背後から聞こえる爆発音に、リレウは舌打ちをする。普段の衛兵達なら強行突破はしなかった。だが、今回の衛兵達は衛兵らしからぬ行動に出てきた。さすがに予想外すぎる行動に初めて、リレウの顔に焦りが現れた。

「見つけたぞ!女!!」

「--!!?」

衛兵の声が響くと共に、背中を大きな衝撃が襲った。その一撃は彼女を吹き飛ばすのには容易い。というのも、衛兵や魔道士と違い、リレウは鎧や肉体強化の魔法等を使用していない。そもそも剣の才能も魔法の才能があるかさえも不明だ。それに半魔半人ハーフと言っても、魔族の力を親から学ぶ前に捨てられている為、自分の中に魔の力がある事も分かっていない。

「ハッ!もう逃げらんねえぞ、女」

「手間かけさせやがって、異常人ゴミクズが!!」

衛兵の1人が勢いよくリレウの腹部を蹴った。容赦のない一撃にリレウは意識が飛びかける。今まで味わったこと無いほどの激痛。その激痛が消える事はなく、リレウはされるがままに蹴られ罵られた。何度も何度も激痛は全身を襲った。

『やめて』『痛い』『ごめんなさい』

その言葉を言う暇さえ与えてくれない衛兵達。最初は怒りに顔を赤くしていた衛兵達も、途中からは楽しそうに笑っていた。

あぁ・・・この表情だ。私を…【異常人カディメラ】を虐げる時の人間の表情。あのレティリアとか言う気味悪い存在と違う本物の人間だ。

「ん? おい、こいつこんな目に合わされて笑ってんぞ」

「あ? マジかよ。ハハ、痛みで頭でもおかしくなったか?」

「そんなに虐げられるのが好きならもっと痛ぶってやるよ」

リーダ格らしき衛兵が指先に炎を生み出して告げる。その衛兵はその炎を徐々にリレウの片眼へと近づけていく。

「--ひっ」

自分の顔に近づいてくる炎に、笑みではなく恐怖が刻まれる。消えかかっていた恐怖が一瞬にして襲いかかり、頭が混乱していく。逃げようにも2人の衛兵に押さえ付けられているため、動けない。

「俺を恨むなよ。恨むんなら【異常人カディメラ】に生まれた自分を恨むんだな」

「--ぁひ」

脳が恐怖に支配される。まともに言葉も出せない。あんなに死に場所を求めていたのに、いざその状況になると怖い。

「安心しろって。まだ殺しはしねえ」

「--ぁ」

「たっぷり楽しんでから殺してやるよ」

リーダ格らしき衛兵は、気味悪い笑みで舌なめずりをして、

「まずは片眼と、さよならだ」

その一言と共に動いた。


そして、リレウの視界が真っ赤に染まった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

テンプレ最強勇者に転生したら魔女が妻になった

紡識かなめ
ファンタジー
七つの大陸、それぞれを支配する“七大魔女”── 魔力あふれる世界《アルセ=セフィリア》は、魔女たちによる統治と恐怖に覆われていた。 だが、その支配に終止符を打つべく、一人の男が立ち上がる。 名はルーク・アルヴェイン。伝説の勇者の血を引く名家の出身でありながら、前世はただの社畜。 高い魔力と最強の肉体、そして“魔女の核を斬ることのできる唯一の剣”を手に、彼は世界を平和にするという使命にすべてを捧げていた。 ──しかし、最初に討伐した《闇の魔女・ミレイア》はこう言った。 「あなたの妻になります。魔女の掟ですから」 倒された魔女は魔力を失い、ただの美少女に。 しかもそのまま押しかけ同居!? 正妻宣言!? 風呂場に侵入!? さらには王女や別の魔女まで現れて、なぜか勇者をめぐる恋のバトルロイヤルが始まってしまう!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...