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第一章:神聖リディシア王国襲撃編
リレウ・アンティエール ⑦
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リレウにとって眠りから覚める事は天国から地獄に引き戻される事と同じだ。残酷で醜悪な現実。それが彼女の生きる世界。
「・・・?」
視界がはれて、まず最初に映ったのは見たことの無い天井。リレウがいつも起きた時に最初に見る憎いほどに綺麗な青空とは違う。それに地面の感触も違う。フワフワとした柔らかいもので、ぬかるんだ地面や硬い地面とは大違いだ。
「・・・ここは?」
ムクリと身体を起こして、リレウは首を傾げた。鼻にツンとくる謎の臭いや綺麗な壁に天井、床。軽く見渡して行くと、視線がある所で止まる。
椅子に座るヨレヨレの白衣を羽織る女性の後ろ姿に。
「・・・」
頭の中で、『誰だ?こいつは』という疑問が乱反射する。リレウは冷静な思考を取り戻すことが出来ない。それは無理もない。なぜなら、彼女は【スレイブ迷道】で衛兵達に殺されかけていたのだ。だと言うのに、目覚めてみれば見慣れない部屋にいて、見知らぬ女性がいる。こんな意味不明な状況で、冷静な思考を保てというのは無理がある。そんなリレウに、白衣の女性が気づいた。
「あ~。起きたんだね~。おはよ~」
なんとも気の抜けた喋り方で笑いかける白衣の女性は、 椅子から立ち上がる。彼女の片手には小さな紙を束ねた記録を記す『日記』がある。リレウは投剣魔法を狙いを定めずに乱雑に放つ。しかし、目の前の女性はそんなことお構い無しと言わんばかりに近づいてくる。オマケに魔法によって生成された短剣は女性を避ける様に壁に突き刺さっては消えていく。やがて、互いに触れ合う位の距離まで女性は近づいていた。
「・・・っ!?」
右手に短刀を生成し、女性の腹部に突き刺そうとした瞬間、
「そんな危ないものは捨てましょうね~」
「・・・は?」
そんな声と共に、手の平に確かに感じていた短刀の柄の感触が消えていた。何かの間違いだろうと自身の右手を見れば、そこにあったはずの短刀は無かった。リレウは反射的に目の前の女性を睨む。敵意むき出しの瞳に相対して、女性は気の抜けた様なヘラっとした笑みを浮かべた。その笑みからは敵意を感じない。ましてや殺意も。
「目覚めたら知らない場所にいて、知らない人間がいるって状況を直ぐに理解するのは難しいよね~。けど、ひとつ言えるのは私はあなたに危害を与えないってこと。だから、その敵意剥き出し状態を解いてくれると嬉しいかなぁ~」
きっと女性が今言ってることは嘘ではないのだろう。ただ、そうだとしても敵意を解くことはそうそう簡単にできない。というのも、リレウにとって他の人間はみんな敵だから。誰もが『醜い』・『死ね』・『化け物』・『異常人』と彼女を罵り貶した。だから、負の感情に慣れすぎた彼女は、優しくされる事に慣れていない。罵られ貶されるのが当たり前で、優しくされるのは間違っている。
「なるほどね~。君、自分以外の人間は敵って思い込んでるでしょ?」
未だに敵意むき出しのリレウに白衣の女性は心を見透かしたように告げる。
「・・・っ!!?」
「図星みたいだね~。こういうケースの子は意外と沢山いるんだよ~。君みたいに『愛情』を知らない子達が」
白衣の女性は机の引き出しを開けて、数枚の紙の束を取り出した。そしてそれをリレウの目の前に置いた。
「このリストに記されてる子達は皆、君と同じ境遇だった。そして、その苦しい境遇から救われた子達でもある」
目の前の女性のその言葉に、リレウの瞳が一瞬、揺らいだ。微かな『奇跡』に心が揺らいだ。しかし、彼女の心を縛るのはとても深く強い闇だ。そう簡単にその闇から解放されることは無い。
「まぁ、直ぐに私に心を許すのは無理だよね~。あ、因みに私は、ヒメライ・ユギン。よろしく~」
白衣の女性ことヒメライはヘラっと笑みを浮かべてそう名乗った。
「・・・?」
視界がはれて、まず最初に映ったのは見たことの無い天井。リレウがいつも起きた時に最初に見る憎いほどに綺麗な青空とは違う。それに地面の感触も違う。フワフワとした柔らかいもので、ぬかるんだ地面や硬い地面とは大違いだ。
「・・・ここは?」
ムクリと身体を起こして、リレウは首を傾げた。鼻にツンとくる謎の臭いや綺麗な壁に天井、床。軽く見渡して行くと、視線がある所で止まる。
椅子に座るヨレヨレの白衣を羽織る女性の後ろ姿に。
「・・・」
頭の中で、『誰だ?こいつは』という疑問が乱反射する。リレウは冷静な思考を取り戻すことが出来ない。それは無理もない。なぜなら、彼女は【スレイブ迷道】で衛兵達に殺されかけていたのだ。だと言うのに、目覚めてみれば見慣れない部屋にいて、見知らぬ女性がいる。こんな意味不明な状況で、冷静な思考を保てというのは無理がある。そんなリレウに、白衣の女性が気づいた。
「あ~。起きたんだね~。おはよ~」
なんとも気の抜けた喋り方で笑いかける白衣の女性は、 椅子から立ち上がる。彼女の片手には小さな紙を束ねた記録を記す『日記』がある。リレウは投剣魔法を狙いを定めずに乱雑に放つ。しかし、目の前の女性はそんなことお構い無しと言わんばかりに近づいてくる。オマケに魔法によって生成された短剣は女性を避ける様に壁に突き刺さっては消えていく。やがて、互いに触れ合う位の距離まで女性は近づいていた。
「・・・っ!?」
右手に短刀を生成し、女性の腹部に突き刺そうとした瞬間、
「そんな危ないものは捨てましょうね~」
「・・・は?」
そんな声と共に、手の平に確かに感じていた短刀の柄の感触が消えていた。何かの間違いだろうと自身の右手を見れば、そこにあったはずの短刀は無かった。リレウは反射的に目の前の女性を睨む。敵意むき出しの瞳に相対して、女性は気の抜けた様なヘラっとした笑みを浮かべた。その笑みからは敵意を感じない。ましてや殺意も。
「目覚めたら知らない場所にいて、知らない人間がいるって状況を直ぐに理解するのは難しいよね~。けど、ひとつ言えるのは私はあなたに危害を与えないってこと。だから、その敵意剥き出し状態を解いてくれると嬉しいかなぁ~」
きっと女性が今言ってることは嘘ではないのだろう。ただ、そうだとしても敵意を解くことはそうそう簡単にできない。というのも、リレウにとって他の人間はみんな敵だから。誰もが『醜い』・『死ね』・『化け物』・『異常人』と彼女を罵り貶した。だから、負の感情に慣れすぎた彼女は、優しくされる事に慣れていない。罵られ貶されるのが当たり前で、優しくされるのは間違っている。
「なるほどね~。君、自分以外の人間は敵って思い込んでるでしょ?」
未だに敵意むき出しのリレウに白衣の女性は心を見透かしたように告げる。
「・・・っ!!?」
「図星みたいだね~。こういうケースの子は意外と沢山いるんだよ~。君みたいに『愛情』を知らない子達が」
白衣の女性は机の引き出しを開けて、数枚の紙の束を取り出した。そしてそれをリレウの目の前に置いた。
「このリストに記されてる子達は皆、君と同じ境遇だった。そして、その苦しい境遇から救われた子達でもある」
目の前の女性のその言葉に、リレウの瞳が一瞬、揺らいだ。微かな『奇跡』に心が揺らいだ。しかし、彼女の心を縛るのはとても深く強い闇だ。そう簡単にその闇から解放されることは無い。
「まぁ、直ぐに私に心を許すのは無理だよね~。あ、因みに私は、ヒメライ・ユギン。よろしく~」
白衣の女性ことヒメライはヘラっと笑みを浮かべてそう名乗った。
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