転生した俺、弱虫勇者の保護者(えいゆう)になりました

雪鵠夕璃

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第一章:神聖リディシア王国襲撃編

リレウ・アンティエール ⑨

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【白龍の瞳】。それは生まれつきヒメライ・ユギンの右眼に宿る真なる想いを読み取る龍眼りゅうがん

「それで?【ネグド病】の件の事、考えてくれた?」

【白龍の瞳】の力を解除し、ヒメライはリレウに尋ねる。

「・・・あなたは私が醜いと思わないの?」

赤黒い痣だらけの体を抱いてリレウは呟く。瞳は不安で揺らいでいる。ヒメライはヘラッとした笑みではなく、子供に笑いかけるような穏やか柔らかい笑みを浮かべて、不安で今にも潰されそうなリレウの頭を優しく撫でた。

「貴女がこれまでどんな辛い目に合わされてきたのか、私には分からない。けれど、一つだけ分かることはある。それは、貴女が綺麗な女の子って事よ」

さっきまでの気の抜けたような話し方はどこへ行ったのかと言いたいくらいの変わりぶり。目の前にいる彼女の言葉を本当に信じていいのかは分からない。けれど、リレウはその微かな奇跡すくいにすがりつく。きっと、これが最後の奇跡すくいだとしても。

「それじゃ、【ネグド病】を抑制するわね。来て、【救命ノ繋術具メディス・アネント】」

ヒメライは【救命ノ繋術具メディス・アネント】を顕現させる。

「痛みはないから安心してね」

その一言に、リレウは小さく頷く。

「【繋術具アネント】No.Ⅱ『癒制針ティル・メイダー』」

無数の医療術具の中から細長い針とその針の後端に繋げられた緑色の液体の入った容器がヒメライの手に収まる。

癒制針ティル・メイダー】とは、【救命ノ繋術具メディス・アネント】によって生み出される特殊な医療術具。容器に入っている緑色の液体は、全ての病を抑え込む効果がある。

「これをあなたの体内に浸透させることで、【ネグド病】を抑えることが出来る」

ヒメライはそう告げ、リレウの二の腕に【癒制針ティル・メイダー】を突き刺した。その際にリレウの体が一瞬だけ痙攣する。それに遅れて全身を蝕んでいた赤黒い痣がどんどんと胸の中心へと収束していく。それを確認したヒメライは、

「よし。これで症状は抑えられたね~。ただ、完全に治すにはこの病についてもっと研究しないとダメみたいね」

救命ノ繋術具メディス・アネント】を消し、席に腰を下ろしながら呟く。

「・・・」

そんな彼女を、リレウは無言で見つめる。その視線に気づいたヒメライはヘラっとした笑みを浮かべて、リレウの頭を優しく撫でた。

「さて、治療は終えたわけなんだけど、貴女はこれからどうするの?」

「・・・分からない」

リレウは小さく呟く。というのも、彼女は一日一日を生き延びる事で精一杯で、その先のことなんて考える暇はなかった。それに、今更真っ当な生活を送ることなんて無理に決まっている。あの時、悪事に手を染めた時点で、手遅れだった。何もかもが。

「うーん、分からないね~。王様の世話になってる身の私が黙って養うってのはヤバいだろうし…あー、どうしたものか」

頭を抱えそうなくらいの勢いで思考していると、医務室の扉を誰かがノックする音がした。

「はいは~い。どなた~?」

1度、考えるのをやめて、ノックしてきた誰かに声をかける。

「ヒメライ先生、私です。レティリアです」

返ってきた声は若い少女の声。

「姫ちゃんか。入ってきていいよ~」

「ありがとうございます。では、失礼します」

ヒメライの了承を得て、レティリアは扉を開けて中へと入ってきた。

「いらっしゃい。で、今日はなんの用事なのかな~? 姫ちゃん」

「えっと、ですね。私もよく分かってないのですが、賢者様に『素敵な出会いがあるよ』って言われて・・・あ!!」

扉をパタンと閉め、こちらに体を向けたレティリアは、ベッドに座り込むリレウに気づき、大きな声を上げた。思わず耳を塞いでしまうほどの声に、リレウはビクッと肩を震わせた。

「ねえ!貴女って昨日のお嬢さんよね!? そうでしょ?ねえ!ねえ!」

レティリアは瞳をキラキラ輝かせながら、リレウに詰め寄る。

「・・・やっ。来ないで!」

「ねぇ、貴女は名前はなんて言うの? 私はレティリア!あ、自己紹介は昨日したわね!えっと、そうよ!私ね! 庭の花を見るのが好きなの! 貴女も見る? 見たいでしょ?ねえ!ねえ!」

グイグイとくるレティリアに、リレウは助けを求めるような視線をヒメライに向ける。その光景に、ヒメライは溜息をつき、

「はいはい、姫ちゃんが好奇心旺盛なのは分かるけど、この子を怖がらせないの」

レティリアの首根っこを掴み、リレウから距離を離す。ほっ、と安堵のため息をつくリレウ。

「それで?素敵な出会いってのはなんなのかしら? 賢者様」

ヒメライが先程、閉められた扉に向かって告げる。すると、扉がひとりでに開き、

「ははは。完全に気配を消したはずなんだけど、流石はヒメライ先生です」

真っ白な紙に絵が浮かび上がるように、賢者リンゲルの姿が現れた。
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