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第一章:神聖リディシア王国襲撃編
蝶の群れ
しおりを挟む「姉を自分に呑み込んだ??」
ユルゲンは目の前で起こった出来事に驚愕する。
「『侵食蝶』。なるほどね、不気味な力を彼女たちから感じると思ってたけど、まさか六魔獣の一柱、【呪双悪娘】だったなんてね」
ヨレヨレの白衣を纏ったヒメライが冷や汗を垂らして告げる。彼女はこのままでは勝てないということを理解している。ユルゲンが勇者の力に目覚めたのは良い事だが、それだけでは勝てない。本来、【呪双悪娘】は分裂している時より融合している時の方が強力な存在となる。言い伝えでは、蝶を操る美しき少女が国ひとつを一日で壊滅させたとある。
「気を引き締めなさい、君!」
「あ、あぁ!!」
ヒメライの言葉に頷き、ユルゲンは【月穿】と【聖輝神腕】を構える。微かな緊張の空気に包まれる。それを破るかのように、膝をつき悲しんでいたセリアがおもむろに立ち上がり、告げる。
「『蝶よ、舞え。そして--狂い、喚き、嘆き、唄え、貪れ』」
その瞬間、彼女の肉体から千を超える程の蝶が放出された。それは城の全てを呑み干すんじゃないかと思わせるほどに多い。その蝶達は、警戒を怠らないユルゲンとヒメライの方へと舞い始める。
「君、来るわよ!!」
「言われなくても、わかってる!!」
二人が各々得物を構えるが、視界を覆い尽くす程の蝶の群れは通り過ぎていく。一切、目もくれず一直線にどこかへと向かっていく。目的地がどこかなんて分からない。意味のわからない蝶の行動に困惑する二人は、やがて視界を覆い尽くすソレが消えた後、セリアを見やるがさっきまでいたはずのセリアが消えていた。恐らく、蝶により視界を覆われていた内に逃げたのだろう。
唯一残されていたのは一枚の蝶の羽だけ。
「くそっ!逃がしたか」
「残念だけどもう気配を感じられない。それよりもあの蝶の群れは私達を無視して何処へ向かったのかしら?」
「さぁな。だけど嫌な気がするんだよな、あの蝶の群れ」
ユルゲンは蝶の群れが向かった先を見やり告げる。2人が蝶の群れを気にする一番の理由はセリアが告げた言葉。
『蝶よ、舞え。そして--狂い、喚き、嘆き、唄え、貪れ』だ。単語の一つ一つが怪しすぎる。特に最後の『貪れ』という単語。要するに何かを貪るということ。その『何か』が何を指すのかは分からないが決して良いことでは無い。必ず『何か』嫌なことが起きる。
「大気よ、蝶の痕跡を我に教え給え」
ヒメライが追跡系の魔法を発動する。すると大気が微かに震え、キラキラと光る線が象られる。それは蝶の行き先を教える道標。
「あの群れを追うわよ、君」
「あぁ、わかった」
ユルゲンは一度『月穿』と『聖輝神腕』を解除し、壁に持たれ掛けさせていたミレルを担ぎ、ヒメライと共に蝶の痕跡を辿り始めた。
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