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第二章 すれちがいの、その先に
言えなかった夏
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中三の夏 回想シーン
「なあ、憧子」
「……なに?」
「最近、ずっと避けてただろ。わかってたけど、あえて聞かなかった。でももう、ちゃんと聞く。……あこは、俺のこと、どう思ってる?」
一瞬、時間が止まったようだった。
蝉の声、遠くで響く風鈴の音。すべてが背景になっていく。
憧子は、小さく息を吸って、言葉を探した。
でもそのとき、ふたりの背後から、小さな気配があった。
ふと振り返ると、陽菜が遠くからそっとこちらを見ていた。
気づいてるかどうかわからないくらい、静かに――でも、やさしい目で。
憧子は、もう一度、航太のほうを見た。
そして――
「……ごめん。今は、わからない」
そう言うのが精一杯だった。
本当は、伝えたかった。
夢に見たあの日の約束も、心の奥でずっと大切にしてた気持ちも。
でも、陽菜の存在が頭をよぎってしまった。
(陽菜ちゃんは、航太のことが好きだった)
あの日、陽菜は確かにそう言った。
「協力してほしい」って笑っていた。
あんなふうに笑える人を、悲しませたくなかった。
そしてなにより――自分の気持ちに、まだ確信が持てなかった。
「……そっか。ごめん、変なこと聞いて」
航太は笑って見せたけど、その目はほんの少し、寂しそうだった。
沈黙が降りる中庭に、蝉の声だけが響いていた。
***
その夜、憧子は一人、布団の中で天井を見つめていた。
(どうして、好きって言えなかったんだろう)
誰も悪くなかった。
ただ、気持ちが追いつかなかっただけ。
誰かを傷つけるのが怖かっただけ。
でも――あの夏を思い出すたびに、胸の奥がチクッと痛む。
そして今――
高校生になって、また同じような気持ちが、自分の中で膨らみ始めている。
今度こそ、自分の気持ちに、ウソをつかないように。
「なあ、憧子」
「……なに?」
「最近、ずっと避けてただろ。わかってたけど、あえて聞かなかった。でももう、ちゃんと聞く。……あこは、俺のこと、どう思ってる?」
一瞬、時間が止まったようだった。
蝉の声、遠くで響く風鈴の音。すべてが背景になっていく。
憧子は、小さく息を吸って、言葉を探した。
でもそのとき、ふたりの背後から、小さな気配があった。
ふと振り返ると、陽菜が遠くからそっとこちらを見ていた。
気づいてるかどうかわからないくらい、静かに――でも、やさしい目で。
憧子は、もう一度、航太のほうを見た。
そして――
「……ごめん。今は、わからない」
そう言うのが精一杯だった。
本当は、伝えたかった。
夢に見たあの日の約束も、心の奥でずっと大切にしてた気持ちも。
でも、陽菜の存在が頭をよぎってしまった。
(陽菜ちゃんは、航太のことが好きだった)
あの日、陽菜は確かにそう言った。
「協力してほしい」って笑っていた。
あんなふうに笑える人を、悲しませたくなかった。
そしてなにより――自分の気持ちに、まだ確信が持てなかった。
「……そっか。ごめん、変なこと聞いて」
航太は笑って見せたけど、その目はほんの少し、寂しそうだった。
沈黙が降りる中庭に、蝉の声だけが響いていた。
***
その夜、憧子は一人、布団の中で天井を見つめていた。
(どうして、好きって言えなかったんだろう)
誰も悪くなかった。
ただ、気持ちが追いつかなかっただけ。
誰かを傷つけるのが怖かっただけ。
でも――あの夏を思い出すたびに、胸の奥がチクッと痛む。
そして今――
高校生になって、また同じような気持ちが、自分の中で膨らみ始めている。
今度こそ、自分の気持ちに、ウソをつかないように。
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