48 / 89
第五章 あの日の続きを、今
女子会と、再会の話
しおりを挟む
金曜の夜、久しぶりに会った陽菜と憧子は、駅前の小さなカフェで向かい合っていた。
学生時代からお気に入りだったその店は、今も変わらず落ち着く空間だった。
「ほんと、ひさびさ!先生生活、どう? 慣れた?」
「うーん、まだまだ。生徒は可愛いけど、親がちょっと手強いかな」
陽菜の口調は軽いけれど、どこか頼もしさが増していた。
教壇に立つようになってから、陽菜は少しだけ大人っぽくなった気がする。
「それよりさ」
陽菜がアイスティーを置いて、顔を近づける。
「最近、なんかあったでしょ? わたしの勘、当たるんだから」
「……うん。実はね」
憧子は、スプーンをくるくる回しながら、ぽつりと話し始めた。
「この前、会議でね……和真と再会したの」
「えっ!」
思ったより大きな声で、陽菜が身を乗り出した。
「会ったの!? それで? それでどうだったの?」
「……変わってなかった。いや、少し大人になってたけど、中身はあの頃のまま。すごく落ち着くっていうか、ほっとする感じで……」
「じゃあ、また会う予定あるの?」
「うん。今度、またご飯行こうって」
陽菜は、ふっと表情を和らげた。
「よかったじゃん。憧子、ずっと和真くんのこと、忘れられなかったでしょ? 無理して笑ってたの、わたし知ってたよ」
「……陽菜」
「もう、言い訳しないで素直になっていいんじゃない? 6年経ったんだし、また始めたって、誰にも文句言われない」
憧子は、思わず涙ぐみそうになってうなずいた。
陽菜は、ずっとそばにいてくれた。
どんなときも、自分を責めてしまう憧子を責めなかった。
今もこうして、背中を押してくれる。
「ありがと。陽菜がいてくれて、本当によかった」
「うん。で、次の女子会では進展報告、よろしくね!」
笑い合うふたり。
夜の街に、優しい風が吹いていた。
学生時代からお気に入りだったその店は、今も変わらず落ち着く空間だった。
「ほんと、ひさびさ!先生生活、どう? 慣れた?」
「うーん、まだまだ。生徒は可愛いけど、親がちょっと手強いかな」
陽菜の口調は軽いけれど、どこか頼もしさが増していた。
教壇に立つようになってから、陽菜は少しだけ大人っぽくなった気がする。
「それよりさ」
陽菜がアイスティーを置いて、顔を近づける。
「最近、なんかあったでしょ? わたしの勘、当たるんだから」
「……うん。実はね」
憧子は、スプーンをくるくる回しながら、ぽつりと話し始めた。
「この前、会議でね……和真と再会したの」
「えっ!」
思ったより大きな声で、陽菜が身を乗り出した。
「会ったの!? それで? それでどうだったの?」
「……変わってなかった。いや、少し大人になってたけど、中身はあの頃のまま。すごく落ち着くっていうか、ほっとする感じで……」
「じゃあ、また会う予定あるの?」
「うん。今度、またご飯行こうって」
陽菜は、ふっと表情を和らげた。
「よかったじゃん。憧子、ずっと和真くんのこと、忘れられなかったでしょ? 無理して笑ってたの、わたし知ってたよ」
「……陽菜」
「もう、言い訳しないで素直になっていいんじゃない? 6年経ったんだし、また始めたって、誰にも文句言われない」
憧子は、思わず涙ぐみそうになってうなずいた。
陽菜は、ずっとそばにいてくれた。
どんなときも、自分を責めてしまう憧子を責めなかった。
今もこうして、背中を押してくれる。
「ありがと。陽菜がいてくれて、本当によかった」
「うん。で、次の女子会では進展報告、よろしくね!」
笑い合うふたり。
夜の街に、優しい風が吹いていた。
0
あなたにおすすめの小説
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。
ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。
子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。
――彼女が現れるまでは。
二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。
それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる