甘酸っぱい恋の味

月華 澪

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第八章 甘酸っぱい恋の味、永遠に

両家へ結婚の挨拶

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冬の澄んだ空気が、街を静かに包み込んでいた。
クリスマスも過ぎ、街は年末年始モード。
そんなある日、和真と憧子は、少しだけいつもより背筋を伸ばして電車に乗っていた。

――今日は、両家へ「結婚の挨拶」に行く日だった。

もちろん、これまでも年末年始にはお互いの実家を訪れていた。
和真の両親も、憧子の両親も、二人の関係を知っていて、温かく見守ってくれていた。

けれど今回は、ちょっと違う。
ちゃんと、口に出して「結婚します」と伝える日。

「緊張してる?」
憧子が小さくたずねる。

「してるよ。憧子のご両親、優しいけど、やっぱり正式にってなるとさ」
「うん……私も。和真のお母さん、泣くかもって思うと、余計に緊張する……」
「泣かせようぜ」
「ちょっと(笑)」

二人は笑い合いながらも、手をぎゅっと握りしめた。



■ まずは、和真の実家へ。

こたつのあるリビングで、お茶を手にした和真の母が笑った。

「もう何回も来てるから、改まって言うのもなんだけど……」

和真は姿勢を正し、深く頭を下げる。

「母さん、父さん。俺たち、結婚することになりました。
これからは、ふたりで支え合って生きていきます。どうか、よろしくお願いします」

憧子も、続いて頭を下げた。

「至らないところもあると思いますが、どうかよろしくお願いします」

和真の父は、静かにうなずき、
母はすでに目にハンカチを当てていた。

「うん……よかった。ほんとに……よかったねぇ……」

「やっとだな」
と、父がぽつりと笑う。

「こっちは、もう家族だと思ってたからさ。改めて言われると、やっぱり嬉しいな」
母の言葉に、和真の胸がじんと熱くなった。



■ その数日後、憧子の実家。

桜子と双子の姪たちが先に騒ぎ始めていたが、
リビングで憧子の父母がきちんと並ぶと、自然と空気が引き締まった。

和真が正座をして、口を開く。

「このたび、憧子さんと結婚させていただきたく、ご挨拶に伺いました。
どうか、娘さんを僕にください」

「お願いします」
と、憧子も小さく深く頭を下げた。

一瞬の沈黙のあと――

「やっと、その言葉が聞けたねぇ」
と母が微笑み、
「うん。安心した」
と父がうなずいた。

桜子は「やば、泣きそう」と言ってこたつにもぐり、
双子たちはまったく空気を読まず「けっこんってなあにー?」と無邪気にはしゃいでいた。

その様子に、みんなが笑った。

こうして、
ふたりの結婚は、正式に家族に受け入れられた。

おめでとう、と言われるたびに、
「ああ、本当に結婚するんだな」とじわじわ実感が湧いてきて、
憧子も和真も、顔を見合わせて何度も微笑み合った。
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