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美代の章 ―失っても、なお愛して―
第3話 「夏の蜃気楼」
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昭和22年・盛夏
連日の猛暑が街を包み、蝉の声が響きわたる頃。
診療所の窓は開け放たれ、風鈴の音がほんのり涼しさを運んでいた。
美代は、慎一郎との距離が少しずつ近づいていることを自覚していた。
彼は無口ながら、時折見せる優しい笑顔で、診療の疲れを癒してくれた。
仕事の合間に交わす言葉も増え、心の隙間に静かな光が差し込むようだった。
しかし、慎一郎には決して触れてはならない秘密があった。
彼は既婚者だったのだ。家には妻と子どもがいる。
それを知りつつも、美代は自分の気持ちを抑えきれずにいた。
ある晩、二人で残業をしていた時。
慎一郎がぽつりと言った。
「美代さん、君は本当に強い。だけど、強い人ほど孤独なんだね」
その言葉に、美代の心は締めつけられた。
胸の奥の痛みは、かつて隼人に別れを告げられたあの日のようだった。
夏の蜃気楼のように、近づきたくても近づけない現実が二人の間にあった。
けれど、静かに積み重なる日々の中で、美代は初めて「愛しい」と感じる感情に戸惑いながらも、少しずつ心を許していった。
それは、もう一度幸せになりたいという、抑えきれない願いだった。
連日の猛暑が街を包み、蝉の声が響きわたる頃。
診療所の窓は開け放たれ、風鈴の音がほんのり涼しさを運んでいた。
美代は、慎一郎との距離が少しずつ近づいていることを自覚していた。
彼は無口ながら、時折見せる優しい笑顔で、診療の疲れを癒してくれた。
仕事の合間に交わす言葉も増え、心の隙間に静かな光が差し込むようだった。
しかし、慎一郎には決して触れてはならない秘密があった。
彼は既婚者だったのだ。家には妻と子どもがいる。
それを知りつつも、美代は自分の気持ちを抑えきれずにいた。
ある晩、二人で残業をしていた時。
慎一郎がぽつりと言った。
「美代さん、君は本当に強い。だけど、強い人ほど孤独なんだね」
その言葉に、美代の心は締めつけられた。
胸の奥の痛みは、かつて隼人に別れを告げられたあの日のようだった。
夏の蜃気楼のように、近づきたくても近づけない現実が二人の間にあった。
けれど、静かに積み重なる日々の中で、美代は初めて「愛しい」と感じる感情に戸惑いながらも、少しずつ心を許していった。
それは、もう一度幸せになりたいという、抑えきれない願いだった。
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