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第1章 ブルーな初恋
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高校に来るだけで心が痛む日々に、どうやって終止符を打てばいいのかな。
教室で幼なじみの笑い声を聞くだけで、嫉妬が溶けた悔し涙が製造されそうになる。
僕、萌黄輝星が人前で悲哀を洩らさないようにと必死にマスターしたのは、悲しい時ほどエンジェルスマイルを顔に張りつけるというチープな技。
放課後の今だってそうだ。
黄色いエプロンをはおり、卵を菜箸でとく手が止まってはいるものの終始笑顔。
僕の目じりは理想どうり垂れさがり、口角上向きのハピネス顔をキープできている。
調理室の2階の窓からテニスコートを見下ろし、スマッシュを決めた幼なじみと恋敵がハイタッチをした地獄絵図が、僕の瞳に映っているにもかかわらずだ。
あっぱれにもほどがある。
僕は人を騙す才能でもあるのだろうか。
テニスの試合は霞くんたちが勝ったんだなと、嬉しさよりも悲しみが色濃く心を占める。
遠くから見てもわかるよ、霞くんと恋敵くんが満面の笑みでグータッチを決めているもん。
恋敵くんなんてワイルドフェイスに白い歯を輝かせながら、霞くんの肩に腕を回していて。
はぁぁぁ、見てるのしんどい。
癖のように視線を突き刺してしまう幼なじみの残像を闇に葬りたくて、窓に背中を強く押し当てた。
悲しみが僕の表情筋を殺そうとする。
でも必死に抵抗、作り笑いは消したくなくて。
作り笑いは自分の心を偽る行為。
そんなことをして心が無傷ではいられないことは100も承知。
笑顔で悲しみに蓋をしているわけだから、そこそこの代償があるわけで。
いま僕は作り笑いをしちゃっているんだ。
むなしさを自覚した直後、心がトラックにひかれたような激痛にいつも襲われてしまう。
まさに今も心臓が苦しい。
悲しみを吐き出す術を身につけないと、精神が崩壊する日が来てしまうだろうな。近い将来、間違いなく。
「やっぱりもう一個追加しよう」
調理室の冷蔵庫に向かい、ボールに卵を割り入れる。
手についた白身のベタベタが負の感情とリンクしているようで、闇を消したくて石けんで念入りにぬめりを落とした。
報われない想い。
幼稚園から抱き続けている恋心。
さい銭箱に500円玉10枚を投げ入れて『霞くんの恋人にしてください』なんてお願いをしたら
『無理難題を押しつけられても困る。目が合っても無視されているじゃないか。嫌われているんだ諦めろ』
迷惑極まりないと言わんばかりのため息をこぼす神様に、おさい銭を投げ返されるだろう。
辛い、悲しい、苦しい。
恋心を捨てたい、この悲しみから逃れたい。
霞くんを諦めるための最適解は――
絶望にひたっている時のひらめきほど、とりつかれ注意なのかもしれない。
数週間前の僕は本当にどうかしていた。
でも、これしかないとすがってしまった。
【霞くんと誰かを僕の脳内で恋人にして、推しカプだと思いこめばいいんだ】
BL好きの腐女子ちゃんが親友だからだろうな。
自分のものとは思えない湾曲ぎみのひらめきが、病んだ脳に降ってきたあの日。
霞くんのお相手?
間違いない、心を許している彼しかいない。
俺様っぽいのに親しみやすくてコミュ力が高い。
僕が勝手に恋敵と思い込んでいる、赤城奏多くん。
テニス部に所属していて、霞くんとダブルスのペアを組み、先日の県大会で優勝を果たしたスポーツ万能イケメン。
またか。
傷つくとわかっていながら、ついテニスコートの霞くんを瞳に映してしまった。
僕の瞳ってドM確定?
ただのチラ見グセにしては諦めが悪すぎるよ。
ほらやっぱり、霞くんを見なきゃよかったでしょ。
僕の心の弱い部分が、後悔の悲鳴をあげている。
奏多くんはラケットを担ぎ、霞くんの肩を抱いている最中で、ニヒヒと笑みをこぼしながら、霞くんのサラサラな髪を豪快にかき乱した。
霞くんは奏多くんの腕を跳ねのけることなく、楽しそうに肩を揺らしている。
仲が良すぎ。
霞くんの幼なじみは、僕じゃなくて奏多くんだったんじゃないかな。
二人はすでに付き合っていたりして。
霞くんと奏多くんの【カスミソウ】コンビは、女子たちにも大人気だ。
麗しすぎて目の保養になると、あえて3年の廊下までのぞきに来る集団が後を絶たない。
おっとり微笑む優雅な王子様タイプの霞くん。
それに対し、奏多くんは見た目も性格もオスっぽい俺様系。
二人とも美形すぎで並ぶとさらに尊さが増す。
手を合わせて拝みたくなるご神仏レベルの神々しさだから、キラキラ直視は目の疲労面で長時間要注意。
なんの取り柄もない僕なんかが割って入るす隙間は、残念ながら一ミリもない。
カスミソウカプを推している女子たちに睨まれるとメンタルが病みそうだし、近づかないのが一番。
とわかってはいるものの、推しカプを作ったことが功を奏し霞くんをほぼほぼ諦めたからと言って、恋心が日に日に膨れ上がってしまっているのが現実で。
やっぱり好きで、大好きで、でも手には入らなくて、無視されっぱなしで、結局しんどいまま。
高校を卒業して霞くんを瞳に映さなくなったら、ちゃんと別の恋ができるのかな。
違う人を好きになって、霞くんのことを忘れることができるのかな。
早く高校を卒業したい。
まだ半年以上もあるのがもどかしい。
ただ別枠の感情もある。
霞くんともう一度笑い合いたい。
小学生の頃みたいに僕だけを友達認定して、僕だけを独占してほしい。
嫌われているのにやっかいな願望が心底にくすぶっているから、ごみを捨てるように恋心を放り投げることはできないんだ。
教室で幼なじみの笑い声を聞くだけで、嫉妬が溶けた悔し涙が製造されそうになる。
僕、萌黄輝星が人前で悲哀を洩らさないようにと必死にマスターしたのは、悲しい時ほどエンジェルスマイルを顔に張りつけるというチープな技。
放課後の今だってそうだ。
黄色いエプロンをはおり、卵を菜箸でとく手が止まってはいるものの終始笑顔。
僕の目じりは理想どうり垂れさがり、口角上向きのハピネス顔をキープできている。
調理室の2階の窓からテニスコートを見下ろし、スマッシュを決めた幼なじみと恋敵がハイタッチをした地獄絵図が、僕の瞳に映っているにもかかわらずだ。
あっぱれにもほどがある。
僕は人を騙す才能でもあるのだろうか。
テニスの試合は霞くんたちが勝ったんだなと、嬉しさよりも悲しみが色濃く心を占める。
遠くから見てもわかるよ、霞くんと恋敵くんが満面の笑みでグータッチを決めているもん。
恋敵くんなんてワイルドフェイスに白い歯を輝かせながら、霞くんの肩に腕を回していて。
はぁぁぁ、見てるのしんどい。
癖のように視線を突き刺してしまう幼なじみの残像を闇に葬りたくて、窓に背中を強く押し当てた。
悲しみが僕の表情筋を殺そうとする。
でも必死に抵抗、作り笑いは消したくなくて。
作り笑いは自分の心を偽る行為。
そんなことをして心が無傷ではいられないことは100も承知。
笑顔で悲しみに蓋をしているわけだから、そこそこの代償があるわけで。
いま僕は作り笑いをしちゃっているんだ。
むなしさを自覚した直後、心がトラックにひかれたような激痛にいつも襲われてしまう。
まさに今も心臓が苦しい。
悲しみを吐き出す術を身につけないと、精神が崩壊する日が来てしまうだろうな。近い将来、間違いなく。
「やっぱりもう一個追加しよう」
調理室の冷蔵庫に向かい、ボールに卵を割り入れる。
手についた白身のベタベタが負の感情とリンクしているようで、闇を消したくて石けんで念入りにぬめりを落とした。
報われない想い。
幼稚園から抱き続けている恋心。
さい銭箱に500円玉10枚を投げ入れて『霞くんの恋人にしてください』なんてお願いをしたら
『無理難題を押しつけられても困る。目が合っても無視されているじゃないか。嫌われているんだ諦めろ』
迷惑極まりないと言わんばかりのため息をこぼす神様に、おさい銭を投げ返されるだろう。
辛い、悲しい、苦しい。
恋心を捨てたい、この悲しみから逃れたい。
霞くんを諦めるための最適解は――
絶望にひたっている時のひらめきほど、とりつかれ注意なのかもしれない。
数週間前の僕は本当にどうかしていた。
でも、これしかないとすがってしまった。
【霞くんと誰かを僕の脳内で恋人にして、推しカプだと思いこめばいいんだ】
BL好きの腐女子ちゃんが親友だからだろうな。
自分のものとは思えない湾曲ぎみのひらめきが、病んだ脳に降ってきたあの日。
霞くんのお相手?
間違いない、心を許している彼しかいない。
俺様っぽいのに親しみやすくてコミュ力が高い。
僕が勝手に恋敵と思い込んでいる、赤城奏多くん。
テニス部に所属していて、霞くんとダブルスのペアを組み、先日の県大会で優勝を果たしたスポーツ万能イケメン。
またか。
傷つくとわかっていながら、ついテニスコートの霞くんを瞳に映してしまった。
僕の瞳ってドM確定?
ただのチラ見グセにしては諦めが悪すぎるよ。
ほらやっぱり、霞くんを見なきゃよかったでしょ。
僕の心の弱い部分が、後悔の悲鳴をあげている。
奏多くんはラケットを担ぎ、霞くんの肩を抱いている最中で、ニヒヒと笑みをこぼしながら、霞くんのサラサラな髪を豪快にかき乱した。
霞くんは奏多くんの腕を跳ねのけることなく、楽しそうに肩を揺らしている。
仲が良すぎ。
霞くんの幼なじみは、僕じゃなくて奏多くんだったんじゃないかな。
二人はすでに付き合っていたりして。
霞くんと奏多くんの【カスミソウ】コンビは、女子たちにも大人気だ。
麗しすぎて目の保養になると、あえて3年の廊下までのぞきに来る集団が後を絶たない。
おっとり微笑む優雅な王子様タイプの霞くん。
それに対し、奏多くんは見た目も性格もオスっぽい俺様系。
二人とも美形すぎで並ぶとさらに尊さが増す。
手を合わせて拝みたくなるご神仏レベルの神々しさだから、キラキラ直視は目の疲労面で長時間要注意。
なんの取り柄もない僕なんかが割って入るす隙間は、残念ながら一ミリもない。
カスミソウカプを推している女子たちに睨まれるとメンタルが病みそうだし、近づかないのが一番。
とわかってはいるものの、推しカプを作ったことが功を奏し霞くんをほぼほぼ諦めたからと言って、恋心が日に日に膨れ上がってしまっているのが現実で。
やっぱり好きで、大好きで、でも手には入らなくて、無視されっぱなしで、結局しんどいまま。
高校を卒業して霞くんを瞳に映さなくなったら、ちゃんと別の恋ができるのかな。
違う人を好きになって、霞くんのことを忘れることができるのかな。
早く高校を卒業したい。
まだ半年以上もあるのがもどかしい。
ただ別枠の感情もある。
霞くんともう一度笑い合いたい。
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