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第5章 痛バック
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しおりを挟む「光くんとぬい君ってわかる? 数日前から帰ってこないの」
「人間になったとたん陽葵にベタベタ絡んでるペンライトと、かわいい顔してキャンキャン吠えまくる推しぬいか」
「見てたの?」
「俺がかかっていたのは陽葵の部屋の壁だ。見たくなくても、目に飛び込んできてたんだよ」
あれ?
ぬいくんがわたしの部屋で人間になった時、痛バックは部屋から消えていた。
なんで人間のぬい君のことを知ってるんだろう?
今はそんなことを考えてる場合じゃないか。
「痛バックが家のどこにもないって話をしたら、焦った顔で家を飛び出しちゃって」
「だろうな」
「え?」
「俺は過去に一度だけ人間になった時があった。あいつらのことが気に食わなかったから、ペンラと推しぬいをゴミ袋に入れて捨ててやったんだ」
「ほんとの話?」
「陽葵のばあさんがゴミ捨て場で見つけて、部屋に戻しやがった。俺はすぐ痛バに戻って、つい最近また人間になった」
知らなかった。
おばあちゃんが、わたしの宝物を守ってくれたんだ。
「ねぇバクくん、光くんたちは今ごろ車にひかれてないよね? ゴミ収集車に投げ込まれて燃やされてないよね?」
「あいつらのこと思い出したくないんだけど」
「同じ物人間でしょ」
「一緒にすんな! 今朝だってガミガミギャーギャーうるさくて、俺の鼓膜をぶった切るつもりかよ、マジ声聞きたくねー」
「二人の居場所を知ってるの?」
「あっ」
「どこ?」
「口止めされてるわけじゃねーし、しゃべってもいいか」
「教えて!」
「落ち着け、俺の服をひっぱるな」
「あっ、ごめん」
「あいつらはこの中学の寮に住んでる」
そっか、もう二度と会えないのか、寂しいな……って。
ん?
「えぇぇぇ?! 寮に住んでる?!」
そもそもこの中学に寮があるなんて初耳だよ!
「驚きすぎ、声デカすぎ、耳いてー」
「ごめんね、発声練習ばっかりしてるからついお腹に力が入っちゃって。予想外すぎたから」
「俺たち4人で住むのは学園長命令。なんで俺が、生活力ゼロでうるさいあいつらの面倒を見なきゃいけねーんだよ」
「バクくんも一緒に暮らしてるんだ。って、4人?」
「もう一人はおまえの推し」
「まさかノエル君じゃないよね?」
「おまえの推しは、アズリズのノエル一人だけだろうが」
「え、うそだよね? 冗談だって言ってよ! バクくん!」
「俺の腕を揺らすな! でもって声量!」
うっ、ごめんなさい。
「あいつも厄介な一人。おっとり笑顔で面倒ごとをスルーする迷惑なクセ持ってるし」
「大人気アイドルと推しグッズたちが、一緒の家に住んでるってこと?」
「全員そろうと喧嘩ばっかりで病むわ。住み心地最悪。安全ピンぶっさして、あいつらの口を塞いどきてー」
天国のおばあちゃん、今のはなしを聞いてた?
【大人気アイドル】【ペンライト】【推しのぬいぐるみ】【痛バック】が一緒に暮らしてるんだって!
驚きが強すぎて、呼吸が止まりそうになったし。
「学園長はなんで、この4人を一緒に住まわせたんだろう」
「俺たち物人間を近くに置いて監視したいんじゃねーの? 人間講座とか受けさせられるんだぜ、マジ意味わかんねー。学園長の声むだに眠くなるし、声に睡眠薬でも仕込んでんのかよ」
「大丈夫だよね? 3人がもともと人間じゃないって、ノエルくんにバレてないよね?」
「別にどうでもいい」
「ダメダメ、ノエルくんにも他の人間にもバレちゃダメだからね!」
「めんど」
「この中学に通うなら、学校にいるあいだも言動には気をつけて。ってことは、まさか光くんたちも今日からこの中学に通うんじゃ……」
「登校した瞬間から女子に囲まれまくりって、ペンラと推しぬいは大人気アイドルじゃねーのにな」
「ん、女子に囲まれてる?」と、わたしはキョトン。
「外を見てみろ。台風の目が3つもかよ。大人気アイドルのノエルに人が群がってるのはわからんでもないけどさ、ペンラと推しぬいはいくら顔がよくても一般人だっつーの」
旧校舎2階の窓から外を見下ろす。
校庭には制服姿の光くん、ぬい君、ノエル君の姿あり。
3人バラバラで女子に囲まれていて、校舎から飛び出し3人に駆け寄る生徒もいるくらい大人気。
ちょちょちょ、ちょっと待って!
わたしは大丈夫なの?
光くんとぬい君と知り合いです。
数日前まで一緒に暮らしてました。
なんてバレたら、女子生徒たちからの嫉妬の矢がビュンビュン飛んできそう。
やわなハートにグサグサ突き刺さりそう。
ノエル君とも、偶然そでが触れ合った仲というか、それ以上というか、みんなに内緒で恋人ごっこをすることになっているし。
頭に手のひらが乗っかり、つられて視線を上げる。
「沼瀬陽葵と初対面のフリをしろって学園長からくぎを刺されてる。光もぬいもおまえを守るために気をつけるって言ってたぞ」
「そっか、ちょっと安心した。バクくんも、初対面の同級生って距離感で接してくれるよね?」
バクくんも間違いなく、イケメンと呼ばれる部類。
ヤンキーっぽい男子を好む女子たちが、放っておくはずがないもん。
「学園長が決めたルールなんかに従う気はねーよ」
「え?」
「今までやりたいことなんて何もできなかった。我慢するだけの痛バックだった。人間の姿で生きられる時間がどれだけあるかわかんねーし、ジコチュウ上等で好き勝手生きてやる!」
バクくんはこぶしを握りしめながら力強く言いきったけど、わたしには強がりに聞こえた。
瞳に悲しみが宿っているように見えた。
バクくんも光くんもぬい君も、今までは物だったから自由なんてなかったよね。
『いつか物に戻って、一生人間にはなれなくなるかも』
そんな不安を抱えながら、今を生きているのかな?
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