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第一章 力の覚醒
24話 編入生
しおりを挟むルリが編入してから二か月が経過した。
ネムがBクラスの中で、一番ルリと親密になっていた。
(噂の影響は中々大きかったんだね…)
ルリはアレク様の推薦された人って認識されていたから、他の生徒達は一定の距離を保っていた。
(私も姉のツバキに頼まれていなかったら、こんな積極的には話し掛けてはいなかっただろう)
昼休み、ネムとルリはBクラスでゆっくり食事をしていた。
ネムは卵パンを咀嚼して飲み込んだ後、ルリに尋ねる。
「そういえば、この学園に来る前はどこに住んでいたの?」
編入してきたルリにこの手の質問はしなかった。
何故なら、ネムも住んでいる所を訊かれると困るからだ。クラスメイトたちに尋ねられても、彼女はいつもはぐらかしていた。
ただ、今回はルリになら話してもいいと親からも承認を得たのでネムは思い切って訊いたのだ。
「ポッチ村って呼ばれるところにいたよ」
「そうなんだ!」
(んー、もしかしてあのポッチ村だろうか?)
昔、大災害があって辺境の土地になってしまった小さな村らしい。
何故、その村だけに大災害が発生したかは不明だが、このキーシャでもこんな噂を聞いたことがある。
火山が噴火して壊滅してしまった村。
地震が発生して津波に飲まれて廃れてしまった村。
一説によるとドラゴンに襲われてしまった村などと
、突拍子も無い噂も流されているのだけれど、真相は誰も知らない。
少なくとも平民のネム達には。
だから興味本位でルリに尋ねることにした。
先週、ネムの姉であるツバキが、
「ルリを遊びに誘ってほしい!」
と頼まれたからでもある。
「今度さ、ツバキと一緒にポッチ村のお家に遊びに行ってもいいかな?」
自分の住んでいる家に招待しても良かったのだが、ルリが恐縮するかもしれないと思ったネムはあえて訪問することにした。
(とりあえず、ルリの家にお邪魔できるなら目的は達成だからね)
「んー。ツバキちゃんって、Aクラスにいる双子のお姉ちゃんだっけ?」
「そうそう。ダメかな?」
ルリは困り顔で苦笑すると、乾いた声で答えた。
「別に何もない所だし、あんまり遊べる場所もないからつまらないよ!?」
「んー。そっかー」
(ルリの反応がよろしくない…。もう少し仲良くなって誘うべきだったかな?
親も容認しているから、家に招待するしかないのかな…)
「じゃ今度、私の家に遊びに来てみる?もし、良かったらだけど!」
浮かない表情をしたルリだったが、家に招待するとニコッと微笑みを浮かべた。
「うん。また今度、ネムのお家にお邪魔するね!」
「うん、喜んで!」
とりあえずツバキとの約束は果たせそうなので、ネムは満足した。
(私もルリのことは気になるから)
「ご馳走様でした。少しお手洗いに行ってくるね」
パンを完食すると、ネムは席から立ち上がる。
ルリに見えない角度で、小さくガッツポーズをしたネムはトイレに向かった。
始めはツバキに頼まれたから、彼女に近付いた。
下心がなかったと言えば、嘘になるかも知れないけど。
純粋に、ネムもルリと仲良くなりたいなって気持ちもあったのだ。
ルリは一ヶ月前の筆記・実技試験どちらもこのBクラスでトップクラスの成績を収めていた。
ネムの推測だが、Aクラスでも同じ成績を残せるくらい優秀な人物だと思う。
すっごく田舎で育った理由もあって、ルリは世間の常識には疎いようだが。
(三代公爵家を知らないとか。キーシャの王族の名前も覚えていないとかね)
ただ、ルリは一年後には学園を卒業してこのキーシャを旅立つらしいから、別に問題はないだろう。
冒険者として色んな国を巡るなら、あまりこの国の上流階級に関心がなくてもいいのかもしれない。
まだ、二ヶ月ほどしか彼女と接していないけれど、ルリは恐らく本人も自覚がない秘密を抱えている。
どうしてルリがあんな特異体質になったかまでは分からないが。
表沙汰にしてはいけない内容なのは間違いない。
ネムは偶然だけど、ルリの秘密の一部を垣間見てしまったのだ。
ネムはこのクラスメイトに誰も打ち明けていないけれど、魔眼保持者だ。
魔眼とは名前の通り、魔力が宿った眼のことだ。
先天性の病気みたいなもので、魔眼保持者は限りなく少ない。故に魔眼の謎は未だ多く、研究者の意見も様々だ。
呪われた瞳と揶揄する人もいるくらい、魔眼は世間から恐れられている。
とはいえ、ネムの場合ある程度制御できるし、比較的他の魔眼に比べると優しい部類の眼でもあった。
暴走したことはなかったからだ。
魔眼で偶然ルリを視たとき、彼女の胸に黒い鎖がびっしり巻き付いていた。
痛々しいくらい鮮明に映っていたのだ。
この眼は戦闘向けではないけれど、魔力が込められた封印や呪いを可視化できる。
ネムは今まで色んな人の呪いや封印を見てきた。
家の事情で。
ただ、ルリの胸に巻き付いた黒い鎖は初めて視る代物だった。
実家にある魔導書でもこんな呪い、お目にかかった事はない。
それくらい珍しい魔法だった。
だからこそ、ネムは彼女をもっと知りたいし、偉そうかもしれないけど、できる事なら解呪してあげたいとも思った。
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