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第8-2話 かなしい過去っ!
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「……許せる訳、ないでしょ。王様は自分の都合で二人を遠くに追放したのに、今度はいきなりクエリちゃんだけをよこせって言ったんだよ。そんなの……許されるワケ無いじゃんっ!!」
喉の奥で渦巻いていた熱を吐き出すように、私は答える。
ああ、ダメだダメだ。こんどは私が熱くなりかけちゃった。
「じゃあ、この後どうするんだ? お姫様を連れて来ちまった以上、もう城下町には戻れねえぞ」
「うん、それなんだけどさ…………まずはクエリちゃんをお母さんのところに連れて行ってあげようよ。ずっと離れ離れにされちゃってたんだから、会わせてあげたいじゃん!?」
私はお腹に力を入れて、はっきりとネムちゃんに提案した。
実は、最初からそのつもりだったんだよね。
だってクエリちゃんは毎晩のようにお母さんの夢を見て、会えないコトを涙してたんだもん。
王城から逃げる時、リスクを犯してまでクエリちゃんを連れ出したのはそのためだ。
このかわいいクエリちゃんが、お母さんと感動の再会をするところを見てみたーーいっ!
だが、そんなウッキウキな私にネムちゃんは冷静に言い放った。
「ピルタよぉ、お前そんな事言ってるが、お姫様の母親が今どこにいるのか、見当はついてるのか?」
「うぐっ……」
ぐさりと突き刺さるツッコミ。
ネムちゃんの指摘ももっともだ。
あの王様のところからクエリちゃんを連れ出さなきゃ……とは思っていたけど、ハッキリ言ってその先はノープラン。
なんとかなるでしょの精神だけでクエリちゃんを連れ出しました、とは言えない。
「え、えと、あの……ノ、ノルトアイルってところに居るんだよね、クエリちゃんっ!?」
「は、はい、たぶん。でももう1年も会えてないから、今もそこにいるかどうかは……」
「う、うぐぐ……で、でもとりあえずそのノルトアイルに行ってみようよ!?」
ダメもとで提案してみた私だったが、ネムちゃんは走りながらため息を吐いた。
「はぁ……あのなピルタ」
「は、はい。なんでしょか、ネムちゃん様?」
「ノルトアイルってのはこのレアリーダ王国領の北にある土地の名前で、この世界の言葉で『北に続く道』って意味だ。その名の通り、領土の最北端にある山脈まで続いてる渓谷全部をさす名前だぞ。その広さは、王城の城下町と比べてざっと20倍だ」
「え……えぇぇぇええぇえ!? あの広い城下町の、さらに20倍もあるのぉ!?」
「そうだ。そしてその土地の殆どが切り立った崖や深い森で覆われていて、冬になれば一面雪に覆われる寒冷地だ。そんな所にいるであろうたった一人の人間を探すなんて、お前なにかアテがあんのか?」
ネムちゃんの口から次々に語られる現実を聞き、私は頭がずっしりと重くなってしまった。
『ノルトアイル』とやらは、たぶんだけど……だいたい東京都と同じくらいかな。
そんな広大な面積から、たった一人の人間を探し出す……。
うん……ムリだよ、そんなの。
砂漠の砂のなかから、一本の針を探せって言ってるのと同じだ。
むしろ人間と違って針のほうが、動かずにいるから見つかるかもしれないってレベルだね。
うぅぅ……クエリちゃんをお母さんに会わせてあげたいと思って連れてきたものの、見通しが甘かったと言わざるを得ない。
あわよくばクエリちゃんの記憶を辿って行ったり、なんなら近くに街があるならそこで聞き込みでもすればいいやと思っていたけど……ダメそうだ。
自分の甘さと計画性の無さに恥ずかしくなり、ネムちゃんの背中の毛に顔を埋める。
「せ、聖女さま……?」
「……何も考えてなかったのか?」
「……はい」
「やれやれ、そんなこったろうと思ったぜ」
「うぅぅ…………」
ふがいない自分が、ホントいや。
そんな私を見かねたのか、ネムちゃんは優しい声で語りかけてきた。
「仕方ねぇなあ。ピルタ、俺が探してやるよ」
「ほぇっ!?」
絶望に打ちひしがれていた私の耳に、ネムちゃんのイケボが響く。
い、いま何て?
『探してやる』って言った!?
「ネ、ネムちゃんっ、もしかしてクエリちゃんのお母さんを探す方法があるの!?」
「ああ。俺は人間が見ている夢を探し出す事ができる。それこそこの世界だけじゃなく、ピルタの居たような遠い世界のものも含めてな。つまり今夜ノルトアイルの付近で、このお姫様が出てくるような夢を見ている人間がいれば、それがお姫様の母親の可能性が高いって訳だ」
「えぇぇぇぇっ!? そ、そんなことできるのぉぉ!?」
私が驚愕の声を上げると、ネムちゃんはちょっとだけドヤ顔になってみせた。
走りながらも、長い鼻を高々と上げてみせる。
「俺は夢を司どる幻獣だぞ。今夜、お姫様の母親がお姫様の事を夢に見ていればの話だが、そうなれば見つけ出すのは簡単だぜ」
「や、やったーーーー! う、うわーーーーん! ありがとう、ネムちゃぁぁぁんっ!」
私は嬉しさのあまり、ネムチャンの背中の毛にほっぺたをスリスリした。
んもーーーー!
ネムちゃんったら人が悪いんだから! 人じゃないけど!
そんなコトができるなら、最初から言ってよぉぉ!
もーホントにこの相棒ったら、最高だわっ!
「そ、それにしても凄いね。 ネムちゃんってそんなに凄い子だったんだね!?」
「当たり前よぉ。俺を何だと思ってたンだぁ?」
「ワシントン条約で保護されてる絶滅危惧種」
「誰がマレーバクだ! あんなシロクロアニマルと一緒にすんな!」
「いでっ!?」
王城の窓を破壊できるほどの威力が出せるネムちゃんの尻尾が、冗談を言った私の後頭部をどついてきた。
もうっ! 女子に手を出すなんてダメでしょ!? 手じゃないけど!
そんな私たちのやりとりを見ていたクエリちゃんは、ぽかんとした顔で聞いてきた。
「ま、まれーばく、ってなんですか?」
私は異世界からやってきたコトを全力で隠しながら、マレーバクの説明をするハメになるのだった。
喉の奥で渦巻いていた熱を吐き出すように、私は答える。
ああ、ダメだダメだ。こんどは私が熱くなりかけちゃった。
「じゃあ、この後どうするんだ? お姫様を連れて来ちまった以上、もう城下町には戻れねえぞ」
「うん、それなんだけどさ…………まずはクエリちゃんをお母さんのところに連れて行ってあげようよ。ずっと離れ離れにされちゃってたんだから、会わせてあげたいじゃん!?」
私はお腹に力を入れて、はっきりとネムちゃんに提案した。
実は、最初からそのつもりだったんだよね。
だってクエリちゃんは毎晩のようにお母さんの夢を見て、会えないコトを涙してたんだもん。
王城から逃げる時、リスクを犯してまでクエリちゃんを連れ出したのはそのためだ。
このかわいいクエリちゃんが、お母さんと感動の再会をするところを見てみたーーいっ!
だが、そんなウッキウキな私にネムちゃんは冷静に言い放った。
「ピルタよぉ、お前そんな事言ってるが、お姫様の母親が今どこにいるのか、見当はついてるのか?」
「うぐっ……」
ぐさりと突き刺さるツッコミ。
ネムちゃんの指摘ももっともだ。
あの王様のところからクエリちゃんを連れ出さなきゃ……とは思っていたけど、ハッキリ言ってその先はノープラン。
なんとかなるでしょの精神だけでクエリちゃんを連れ出しました、とは言えない。
「え、えと、あの……ノ、ノルトアイルってところに居るんだよね、クエリちゃんっ!?」
「は、はい、たぶん。でももう1年も会えてないから、今もそこにいるかどうかは……」
「う、うぐぐ……で、でもとりあえずそのノルトアイルに行ってみようよ!?」
ダメもとで提案してみた私だったが、ネムちゃんは走りながらため息を吐いた。
「はぁ……あのなピルタ」
「は、はい。なんでしょか、ネムちゃん様?」
「ノルトアイルってのはこのレアリーダ王国領の北にある土地の名前で、この世界の言葉で『北に続く道』って意味だ。その名の通り、領土の最北端にある山脈まで続いてる渓谷全部をさす名前だぞ。その広さは、王城の城下町と比べてざっと20倍だ」
「え……えぇぇぇええぇえ!? あの広い城下町の、さらに20倍もあるのぉ!?」
「そうだ。そしてその土地の殆どが切り立った崖や深い森で覆われていて、冬になれば一面雪に覆われる寒冷地だ。そんな所にいるであろうたった一人の人間を探すなんて、お前なにかアテがあんのか?」
ネムちゃんの口から次々に語られる現実を聞き、私は頭がずっしりと重くなってしまった。
『ノルトアイル』とやらは、たぶんだけど……だいたい東京都と同じくらいかな。
そんな広大な面積から、たった一人の人間を探し出す……。
うん……ムリだよ、そんなの。
砂漠の砂のなかから、一本の針を探せって言ってるのと同じだ。
むしろ人間と違って針のほうが、動かずにいるから見つかるかもしれないってレベルだね。
うぅぅ……クエリちゃんをお母さんに会わせてあげたいと思って連れてきたものの、見通しが甘かったと言わざるを得ない。
あわよくばクエリちゃんの記憶を辿って行ったり、なんなら近くに街があるならそこで聞き込みでもすればいいやと思っていたけど……ダメそうだ。
自分の甘さと計画性の無さに恥ずかしくなり、ネムちゃんの背中の毛に顔を埋める。
「せ、聖女さま……?」
「……何も考えてなかったのか?」
「……はい」
「やれやれ、そんなこったろうと思ったぜ」
「うぅぅ…………」
ふがいない自分が、ホントいや。
そんな私を見かねたのか、ネムちゃんは優しい声で語りかけてきた。
「仕方ねぇなあ。ピルタ、俺が探してやるよ」
「ほぇっ!?」
絶望に打ちひしがれていた私の耳に、ネムちゃんのイケボが響く。
い、いま何て?
『探してやる』って言った!?
「ネ、ネムちゃんっ、もしかしてクエリちゃんのお母さんを探す方法があるの!?」
「ああ。俺は人間が見ている夢を探し出す事ができる。それこそこの世界だけじゃなく、ピルタの居たような遠い世界のものも含めてな。つまり今夜ノルトアイルの付近で、このお姫様が出てくるような夢を見ている人間がいれば、それがお姫様の母親の可能性が高いって訳だ」
「えぇぇぇぇっ!? そ、そんなことできるのぉぉ!?」
私が驚愕の声を上げると、ネムちゃんはちょっとだけドヤ顔になってみせた。
走りながらも、長い鼻を高々と上げてみせる。
「俺は夢を司どる幻獣だぞ。今夜、お姫様の母親がお姫様の事を夢に見ていればの話だが、そうなれば見つけ出すのは簡単だぜ」
「や、やったーーーー! う、うわーーーーん! ありがとう、ネムちゃぁぁぁんっ!」
私は嬉しさのあまり、ネムチャンの背中の毛にほっぺたをスリスリした。
んもーーーー!
ネムちゃんったら人が悪いんだから! 人じゃないけど!
そんなコトができるなら、最初から言ってよぉぉ!
もーホントにこの相棒ったら、最高だわっ!
「そ、それにしても凄いね。 ネムちゃんってそんなに凄い子だったんだね!?」
「当たり前よぉ。俺を何だと思ってたンだぁ?」
「ワシントン条約で保護されてる絶滅危惧種」
「誰がマレーバクだ! あんなシロクロアニマルと一緒にすんな!」
「いでっ!?」
王城の窓を破壊できるほどの威力が出せるネムちゃんの尻尾が、冗談を言った私の後頭部をどついてきた。
もうっ! 女子に手を出すなんてダメでしょ!? 手じゃないけど!
そんな私たちのやりとりを見ていたクエリちゃんは、ぽかんとした顔で聞いてきた。
「ま、まれーばく、ってなんですか?」
私は異世界からやってきたコトを全力で隠しながら、マレーバクの説明をするハメになるのだった。
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