21 / 42
第8-2話 かなしい過去っ!
しおりを挟む
「……許せる訳、ないでしょ。王様は自分の都合で二人を遠くに追放したのに、今度はいきなりクエリちゃんだけをよこせって言ったんだよ。そんなの……許されるワケ無いじゃんっ!!」
喉の奥で渦巻いていた熱を吐き出すように、私は答える。
ああ、ダメだダメだ。こんどは私が熱くなりかけちゃった。
「じゃあ、この後どうするんだ? お姫様を連れて来ちまった以上、もう城下町には戻れねえぞ」
「うん、それなんだけどさ…………まずはクエリちゃんをお母さんのところに連れて行ってあげようよ。ずっと離れ離れにされちゃってたんだから、会わせてあげたいじゃん!?」
私はお腹に力を入れて、はっきりとネムちゃんに提案した。
実は、最初からそのつもりだったんだよね。
だってクエリちゃんは毎晩のようにお母さんの夢を見て、会えないコトを涙してたんだもん。
王城から逃げる時、リスクを犯してまでクエリちゃんを連れ出したのはそのためだ。
このかわいいクエリちゃんが、お母さんと感動の再会をするところを見てみたーーいっ!
だが、そんなウッキウキな私にネムちゃんは冷静に言い放った。
「ピルタよぉ、お前そんな事言ってるが、お姫様の母親が今どこにいるのか、見当はついてるのか?」
「うぐっ……」
ぐさりと突き刺さるツッコミ。
ネムちゃんの指摘ももっともだ。
あの王様のところからクエリちゃんを連れ出さなきゃ……とは思っていたけど、ハッキリ言ってその先はノープラン。
なんとかなるでしょの精神だけでクエリちゃんを連れ出しました、とは言えない。
「え、えと、あの……ノ、ノルトアイルってところに居るんだよね、クエリちゃんっ!?」
「は、はい、たぶん。でももう1年も会えてないから、今もそこにいるかどうかは……」
「う、うぐぐ……で、でもとりあえずそのノルトアイルに行ってみようよ!?」
ダメもとで提案してみた私だったが、ネムちゃんは走りながらため息を吐いた。
「はぁ……あのなピルタ」
「は、はい。なんでしょか、ネムちゃん様?」
「ノルトアイルってのはこのレアリーダ王国領の北にある土地の名前で、この世界の言葉で『北に続く道』って意味だ。その名の通り、領土の最北端にある山脈まで続いてる渓谷全部をさす名前だぞ。その広さは、王城の城下町と比べてざっと20倍だ」
「え……えぇぇぇええぇえ!? あの広い城下町の、さらに20倍もあるのぉ!?」
「そうだ。そしてその土地の殆どが切り立った崖や深い森で覆われていて、冬になれば一面雪に覆われる寒冷地だ。そんな所にいるであろうたった一人の人間を探すなんて、お前なにかアテがあんのか?」
ネムちゃんの口から次々に語られる現実を聞き、私は頭がずっしりと重くなってしまった。
『ノルトアイル』とやらは、たぶんだけど……だいたい東京都と同じくらいかな。
そんな広大な面積から、たった一人の人間を探し出す……。
うん……ムリだよ、そんなの。
砂漠の砂のなかから、一本の針を探せって言ってるのと同じだ。
むしろ人間と違って針のほうが、動かずにいるから見つかるかもしれないってレベルだね。
うぅぅ……クエリちゃんをお母さんに会わせてあげたいと思って連れてきたものの、見通しが甘かったと言わざるを得ない。
あわよくばクエリちゃんの記憶を辿って行ったり、なんなら近くに街があるならそこで聞き込みでもすればいいやと思っていたけど……ダメそうだ。
自分の甘さと計画性の無さに恥ずかしくなり、ネムちゃんの背中の毛に顔を埋める。
「せ、聖女さま……?」
「……何も考えてなかったのか?」
「……はい」
「やれやれ、そんなこったろうと思ったぜ」
「うぅぅ…………」
ふがいない自分が、ホントいや。
そんな私を見かねたのか、ネムちゃんは優しい声で語りかけてきた。
「仕方ねぇなあ。ピルタ、俺が探してやるよ」
「ほぇっ!?」
絶望に打ちひしがれていた私の耳に、ネムちゃんのイケボが響く。
い、いま何て?
『探してやる』って言った!?
「ネ、ネムちゃんっ、もしかしてクエリちゃんのお母さんを探す方法があるの!?」
「ああ。俺は人間が見ている夢を探し出す事ができる。それこそこの世界だけじゃなく、ピルタの居たような遠い世界のものも含めてな。つまり今夜ノルトアイルの付近で、このお姫様が出てくるような夢を見ている人間がいれば、それがお姫様の母親の可能性が高いって訳だ」
「えぇぇぇぇっ!? そ、そんなことできるのぉぉ!?」
私が驚愕の声を上げると、ネムちゃんはちょっとだけドヤ顔になってみせた。
走りながらも、長い鼻を高々と上げてみせる。
「俺は夢を司どる幻獣だぞ。今夜、お姫様の母親がお姫様の事を夢に見ていればの話だが、そうなれば見つけ出すのは簡単だぜ」
「や、やったーーーー! う、うわーーーーん! ありがとう、ネムちゃぁぁぁんっ!」
私は嬉しさのあまり、ネムチャンの背中の毛にほっぺたをスリスリした。
んもーーーー!
ネムちゃんったら人が悪いんだから! 人じゃないけど!
そんなコトができるなら、最初から言ってよぉぉ!
もーホントにこの相棒ったら、最高だわっ!
「そ、それにしても凄いね。 ネムちゃんってそんなに凄い子だったんだね!?」
「当たり前よぉ。俺を何だと思ってたンだぁ?」
「ワシントン条約で保護されてる絶滅危惧種」
「誰がマレーバクだ! あんなシロクロアニマルと一緒にすんな!」
「いでっ!?」
王城の窓を破壊できるほどの威力が出せるネムちゃんの尻尾が、冗談を言った私の後頭部をどついてきた。
もうっ! 女子に手を出すなんてダメでしょ!? 手じゃないけど!
そんな私たちのやりとりを見ていたクエリちゃんは、ぽかんとした顔で聞いてきた。
「ま、まれーばく、ってなんですか?」
私は異世界からやってきたコトを全力で隠しながら、マレーバクの説明をするハメになるのだった。
喉の奥で渦巻いていた熱を吐き出すように、私は答える。
ああ、ダメだダメだ。こんどは私が熱くなりかけちゃった。
「じゃあ、この後どうするんだ? お姫様を連れて来ちまった以上、もう城下町には戻れねえぞ」
「うん、それなんだけどさ…………まずはクエリちゃんをお母さんのところに連れて行ってあげようよ。ずっと離れ離れにされちゃってたんだから、会わせてあげたいじゃん!?」
私はお腹に力を入れて、はっきりとネムちゃんに提案した。
実は、最初からそのつもりだったんだよね。
だってクエリちゃんは毎晩のようにお母さんの夢を見て、会えないコトを涙してたんだもん。
王城から逃げる時、リスクを犯してまでクエリちゃんを連れ出したのはそのためだ。
このかわいいクエリちゃんが、お母さんと感動の再会をするところを見てみたーーいっ!
だが、そんなウッキウキな私にネムちゃんは冷静に言い放った。
「ピルタよぉ、お前そんな事言ってるが、お姫様の母親が今どこにいるのか、見当はついてるのか?」
「うぐっ……」
ぐさりと突き刺さるツッコミ。
ネムちゃんの指摘ももっともだ。
あの王様のところからクエリちゃんを連れ出さなきゃ……とは思っていたけど、ハッキリ言ってその先はノープラン。
なんとかなるでしょの精神だけでクエリちゃんを連れ出しました、とは言えない。
「え、えと、あの……ノ、ノルトアイルってところに居るんだよね、クエリちゃんっ!?」
「は、はい、たぶん。でももう1年も会えてないから、今もそこにいるかどうかは……」
「う、うぐぐ……で、でもとりあえずそのノルトアイルに行ってみようよ!?」
ダメもとで提案してみた私だったが、ネムちゃんは走りながらため息を吐いた。
「はぁ……あのなピルタ」
「は、はい。なんでしょか、ネムちゃん様?」
「ノルトアイルってのはこのレアリーダ王国領の北にある土地の名前で、この世界の言葉で『北に続く道』って意味だ。その名の通り、領土の最北端にある山脈まで続いてる渓谷全部をさす名前だぞ。その広さは、王城の城下町と比べてざっと20倍だ」
「え……えぇぇぇええぇえ!? あの広い城下町の、さらに20倍もあるのぉ!?」
「そうだ。そしてその土地の殆どが切り立った崖や深い森で覆われていて、冬になれば一面雪に覆われる寒冷地だ。そんな所にいるであろうたった一人の人間を探すなんて、お前なにかアテがあんのか?」
ネムちゃんの口から次々に語られる現実を聞き、私は頭がずっしりと重くなってしまった。
『ノルトアイル』とやらは、たぶんだけど……だいたい東京都と同じくらいかな。
そんな広大な面積から、たった一人の人間を探し出す……。
うん……ムリだよ、そんなの。
砂漠の砂のなかから、一本の針を探せって言ってるのと同じだ。
むしろ人間と違って針のほうが、動かずにいるから見つかるかもしれないってレベルだね。
うぅぅ……クエリちゃんをお母さんに会わせてあげたいと思って連れてきたものの、見通しが甘かったと言わざるを得ない。
あわよくばクエリちゃんの記憶を辿って行ったり、なんなら近くに街があるならそこで聞き込みでもすればいいやと思っていたけど……ダメそうだ。
自分の甘さと計画性の無さに恥ずかしくなり、ネムちゃんの背中の毛に顔を埋める。
「せ、聖女さま……?」
「……何も考えてなかったのか?」
「……はい」
「やれやれ、そんなこったろうと思ったぜ」
「うぅぅ…………」
ふがいない自分が、ホントいや。
そんな私を見かねたのか、ネムちゃんは優しい声で語りかけてきた。
「仕方ねぇなあ。ピルタ、俺が探してやるよ」
「ほぇっ!?」
絶望に打ちひしがれていた私の耳に、ネムちゃんのイケボが響く。
い、いま何て?
『探してやる』って言った!?
「ネ、ネムちゃんっ、もしかしてクエリちゃんのお母さんを探す方法があるの!?」
「ああ。俺は人間が見ている夢を探し出す事ができる。それこそこの世界だけじゃなく、ピルタの居たような遠い世界のものも含めてな。つまり今夜ノルトアイルの付近で、このお姫様が出てくるような夢を見ている人間がいれば、それがお姫様の母親の可能性が高いって訳だ」
「えぇぇぇぇっ!? そ、そんなことできるのぉぉ!?」
私が驚愕の声を上げると、ネムちゃんはちょっとだけドヤ顔になってみせた。
走りながらも、長い鼻を高々と上げてみせる。
「俺は夢を司どる幻獣だぞ。今夜、お姫様の母親がお姫様の事を夢に見ていればの話だが、そうなれば見つけ出すのは簡単だぜ」
「や、やったーーーー! う、うわーーーーん! ありがとう、ネムちゃぁぁぁんっ!」
私は嬉しさのあまり、ネムチャンの背中の毛にほっぺたをスリスリした。
んもーーーー!
ネムちゃんったら人が悪いんだから! 人じゃないけど!
そんなコトができるなら、最初から言ってよぉぉ!
もーホントにこの相棒ったら、最高だわっ!
「そ、それにしても凄いね。 ネムちゃんってそんなに凄い子だったんだね!?」
「当たり前よぉ。俺を何だと思ってたンだぁ?」
「ワシントン条約で保護されてる絶滅危惧種」
「誰がマレーバクだ! あんなシロクロアニマルと一緒にすんな!」
「いでっ!?」
王城の窓を破壊できるほどの威力が出せるネムちゃんの尻尾が、冗談を言った私の後頭部をどついてきた。
もうっ! 女子に手を出すなんてダメでしょ!? 手じゃないけど!
そんな私たちのやりとりを見ていたクエリちゃんは、ぽかんとした顔で聞いてきた。
「ま、まれーばく、ってなんですか?」
私は異世界からやってきたコトを全力で隠しながら、マレーバクの説明をするハメになるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる