夢見るピルタの昏睡魔法っ!

来我 春天(らいが しゅんてん)

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第9-2話 再会は、ノルトアイルでっ!

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 おねむモードから一気に覚醒したクエリちゃんは、ノルトアイルの風景を見て嬉しそうに叫んだ。
 今まで見たこともないくらい、心の底から嬉しそうな笑顔だね!
 きっと、ずっとずっとここに帰ってきたかったんだろうなぁ~……お母さんに会うためにさ。
 王様の命令でムリヤリ王城に連れて行かれちゃったあとも、ここの風景を夢に見るくらいだもの。

「月明りだからよく見えないけど……もしかして、まわりの森の葉っぱが紅葉してるのかな?? それに、やっぱりちょっと空気が肌寒いかもっ……!」

 クエリちゃんと一緒に美しい景色に見とれてしまっていたけど……今更気付いた。
 ここ、寒ーい! 想像以上に寒すぎる!
 うぅぅ、ネムちゃんの背中にべったりくっ付いて寝てた時は気が付かなかったけど、空気がヒンヤリしてる!
 王都から3時間くらいって言ってたけど、こんなに気温が変わっちゃうものなの!?

「ふはぁぁぁ……ク、クエリちゃん、だいじょうぶ?」

 私はともかく、クエリちゃんが心配だ。
 王城から一緒に逃げてきたときに着てたのが、ふんわりしたワンピースのパジャマだけだもん。
 私は自分がつけていたケープを取り外すと、そっとクエリちゃんの背中にかけてあげた。
 あ~~、私いますっごいお姉ちゃんっぽい事してるー!
 なんてひとり舞い上がってたけど、当のクエリちゃんはけろりとした表情で振り返った。

「あっ、だいじょうぶです。わたし、ずっとここでおかあさんと暮らしてましたから、慣れてます。このくらいなら、全然寒くないですっ」
「ふえぇぇぇえぇ……す、すごいね……! 私は今すぐ温かいお茶が飲みたいよぉ……ぶるぶる」
「やれやれ、情けねえなぁピルタ。これくらいで寒いとか言ってんなよぉ」
「だ、だって仕方ないでしょおぉお!? ネムちゃんはこんなふっかふかの毛皮があるからいいだろうけど、私はろくに準備せずに来ちゃったんだから……はぅぅぅぅ! そう思うと余計に寒くなってきたっ。ど、どこか上着が買えるような町は無い!? も、もしくは、暖かいココアが飲みたいよぅ……」
「こ、ここあってなんですか?」

 ぷるぷる震える私のことをきょとんと見上げながら、クエリちゃんが聞いてきた。

「えっとね……ココアっていうのは、私が生まれた国で飲まれていた、甘くてあったかーい飲み物のコトで……」
「諦めろピルタ、この世界にココアは無えよ」
「んもーーーーっ! 説明してる最中に存在否定しないでよっ!! うわーん! 身体が暖かくなるものが飲みたいよー! ネムちゃん、どうにかしてよー!?」

 段々と冷えてくる身体に耐えかねて、つい大声で叫んじゃった。
 すぐ横にいるクエリちゃんが、私を見て心配そうにしちゃってる。
 あぁぁ、いかんいかん。これじゃ全然お姉ちゃんっぽくないじゃない!!
 こんなに早くお姉ちゃんらしさが消滅してしまうとは、我ながら情けない……。
 なるべく風が当たらないよう、身を小さくしてネムちゃんの毛皮に埋もれようとしていると……

「しょうがねぇなぁ……あそこに見える家で、お茶を飲ませて貰えるかお願いしてみるか?」
「ふぇっ?」

 ネムちゃんが、ぐいっと顔を突き出す。
 顎で指示した先……私たちが今立っている高台のはるか下の方に目をやると、そこには一軒の家が建っていた。
 こんな山しかない場所に、家があるなんて。

「あっ……!」

 それを見たクエリちゃんが、声を上げる。
 あぁっ!? あの家って、もしかして……

「ネムちゃんっ! あ、あそこが、クエリちゃんの本当の家!? あそこにお母さんが居るのっ!?」
「ああ、恐らくそうだ。俺の鼻が反応してる。お姫様の夢を見ている人間が、あそこにいるのは間違いないぜ。まさかこんなに早く見つかるなんて、ラッキーだったな」

 大くて長い鼻をすんすんと動かして、ネムちゃんは匂いを探っているような動作をした。
 私に抱っこされるような姿勢でいたクエリちゃんは、思わず声を大きくした。

「あ、あの家ですっ! あそこが、わたしとお母さんが一緒に住んでいた家でっ……!」
「おーっ! じゃあ、間違いないねっ!」
「よし、あそこまで降りるぞ。しっかり掴まってな」

 ネムちゃんは立っていた場所から下を見ると、軽くジャンプをしながら斜面を駆け下りた。
 人間だったら足を踏み外したら下まで落ちちゃいそうな急斜面だったが、ネムちゃんは生えている木さえも避けながら器用に降りていく。
 王城脱出時のトラウマ、ふたたび。
 黙ってたけど、またもや私はビビってました。
 だって本当に怖すぎるんだよ……掴まれるものといったらネムちゃんの背中に生えてる短い毛しかなくて、当然ながらシートベルトなんてものは無い。
 なのにネムちゃんはほとんどノンストップで崖を駆け降りていく……。
 これはさすがにクエリちゃんも怖がってるんじゃないかなー、と思い横を見てみると、やっぱりクエリちゃんはもう余裕しゃくしゃくの表情で前だけ見てました。
 たぶん1年ぶりにお母さんに会えるから、こんな急斜面なんて気にもなってないんだろうけど……ううむ、クエリちゃんは見た目の可愛さに反してホントに度胸が据わってる。
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