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◆第37話 舌戦?
しおりを挟む「まさかとは思うが、僕と握手をするつもりだったのか? 身の程を知りたまえ」
「な…………」
思いもしない言葉。
あまりにもはっきりとした挑発。
俺は呆気に取られ、握手の手を出したまま固まってしまった。
声の通りやすい構造の闘技場に響いたプレシオーネ氏の言葉に、瞬時に会場の空気が凍りつくのを感じる。
彼の言動を見ていた進行役の男性も、まさかそんな言葉が出てくるとは思ってもいなかったのだろう、口をぽかんと開けてしまっている。
「何だね、その顔は。出番が終わったのなら、さっさと下がるがいい」
芝居がかったような口調で続けるプレシオーネは、まるで悪びれる素振りなど見せることなく顎を突き出した。
俺の記憶が確かなら、この決勝戦前の時間は互いを挑発するために設けられたものではない。
普通であれば『正々堂々戦おう』と声を掛け合い、尊厳を認め合うことで試合を盛り上げるためにある催しのはずなのだが……。
客席からもざわめきが起こる。
「おい、あの口の悪い訓練士って、もしかして『ロガンツァ家』のお坊ちゃんか……?」
「あぁ、間違いねえ……あいつの襟、見てみろよ。嫌味ったらしい金ピカの家紋の刺繍が入ってるぜ」
「貨幣にモノ言わせて訓練士になったって言われてる、貴族家のボンボンだろ……? あちゃあ……そうか、今回は優勝候補だった獅子獣人族のラーナと、熊獣人族のリダがピノラちゃんに負けちゃったから、あんなやつが決勝に来ちまったんだな…………」
「元々の性格が悪いんだろうよ、ありゃあ悪役の演技って訳でも無さそうだぞ。胸糞悪い奴が勝ち進んじまったもんだぜ」
客席からは、無用な挑発を批難する声が聞こえてきた。
そんな周囲の言葉などまるで意に介さないかのように、相手訓練士……プレシオーネは自身の顔に掛かっていた前髪を振り払うようにして更に顎をしゃくり出した。
「フン! 小煩い連中だ! さて、自己紹介をしよう。僕の名前はプレシオーネ=ロガンツァ。はるか100年前より爵位を継ぐ貴族家の名門、『あの』ロガンツァ家の出身だ!」
「は、はぁ…………」
「……おい、お前。何だその腑抜けた反応は? ロガンツァ家だぞ!? 北方大陸プロスティリア領のリンベルタ港との貿易契約最大手を誇る、海運商家のロガンツァ家だぞ!? まさか知らないなんて言うんじゃないだろうなっ!?」
「えっ!? いや、その……す、すまない。俺はあまりサンティカやヴェセット以外の街のことを知らなくて……」
俺は謝罪しつつ、正直に答えた。
先ほどからプレシオーネの口から出てくる単語は、このサンティカで認定訓練士として生活している俺にとってはまるで関わりのないものばかりだ。
そもそも貴族家に関して知識の乏しい俺にとっては、家名を提示されたところでそれがどれほど価値のあるものなのかがサッパリ解らない。
そんな俺の反応に業を煮やしたのか、プレシオーネは見るからに不機嫌な顔になりわなわなと震え始めてしまった。
「こ、この下民めッ……! 由緒正しき歴史あるロガンツァ家を知らぬなどと、よく恥ずかしげもなく言えたものだな! 良いか!? そもそも我がロガンツァ家の始まりは────────」
自己紹介にしては長すぎる文言を、プレシオーネはかなりの早口で喋り出した。
ふんぞり返るプレシオーネの言動に、進行役の男性も何と声をかけるべきか逡巡しているような有様だ。
ふと隣に目をやると、ピノラが困ったような顔で俺を見上げていた。
「ふぇぇ……ねぇトレーナー、この人のおはなし、ピノラも聞かなきゃダメ……?」
「いや、俺が聞いておくからいいよ、ピノラ……」
鼻の穴が見える程に顎をしゃくり上げながら話すプレシオーネに、ピノラは心底退屈そうな表情を浮かべている。
そんなピノラのふわふわな耳を塞いでやりながら、俺も戸惑いを隠せずにいた。
どうやらこのプレシオーネは、見るからに自身の出自を誇示したいようではあるのだが……申し訳ない事に、俺自身あまり貴族家の名前に明るくない。
貴族という制度があった事は、幼少の頃に見た歴史関連の図書で知ってはいたが、獣人医や訓練士を目指し勉学に励むようになってからは触れる機会さえ無かった。
このサンティカは古い時代においては貴族制度により統治されていたのだが、物流や医療などの生活水準が向上してからは、貴族家の存在はいわば形骸化してしまっている。
今では一部の組合や組織が『老舗』であることを宣伝する目的で、貴族家の家名を名乗ることはあるものの……そういった昨今の世間からすれば、このプレシオーネがやっているような『お高くとまる』行為というのは、時代遅れも甚だしいものである。
ともすれば、演劇でもやってるのではないかと間違われてしまうような立ち振る舞いだが、本人は至って真剣なのだろう。
『ロガンツァ家』をやたらと強調しながら語り続けていたプレシオーネは、なおも反応の薄い俺の顔を見て不満げに睨んでいる。
「……うぉおいッ! まるで興味がなさそう顔をしているな!? 全く、教養の無いヤツめ! あぁそうそう、先に言っておくが、下民であるキミの名前を覚えるつもりなど毛頭ないので、『お前ら』と呼ばせて貰うからなっ!」
「あ、あぁ、そうですか…………」
あまりに不遜な態度をとるプレシオーネに、俺は正直、圧倒されていた。
気圧されている訳では無いのだが、こうまで尊大な言動をされると何と言い返したらいいのかも思い浮かばない。
言われたい放題の俺の様子を見て、客席にいる人たちからは不憫そうな視線のほか、『黙ってないでガツンと言ってやれ!』とでも言いたげな表情が広がっている。
あぁ……なるほど。
闘技会的には、ここは俺がプレシオーネに反撃すべき場面なのだろう。
栄えある闘技会の決勝戦の催しで、このような態度をとるプレシオーネに一泡吹かせてやれという観客たちの念のようなものが伝わってくるほどだ。
だが今日まで生きてきた俺の20年間で、相手を蔑むような言葉を意図的に練習した事など無い。
そういった世界とは無縁の生活をしてきた身であるし、それに売り言葉に買い言葉のような様相を呈してしまえば、『挑発慣れ』をしていそうなプレシオーネ相手では思う壺になってしまうような気がする。
うぅむ、どうしたものか…………
などと逡巡していると、後方から突然声が響いた。
「おいおーい、何だぁ? あの暑苦しそうな服とカツラの坊ちゃんはよぉ? あの若さで頭の毛が無えのか? いやいやそれより、貴族の坊ちゃんは決勝戦のセレモニーは初めてなのかねぇ? ここは貴族様が大好きなイヤミ合戦をする舞踏会場じゃねえですよー! 若ハゲの坊ちゃあん!!」
「ぶふっっっ!?」
「な……………………!?」
客席のどこかから聞こえてきた声に、俺は思わず吹き出してしまった。
これでもかと言わんばかりに貴族振る舞いをするプレシオーネをこき下ろす、痛烈な野次。
鮮やか過ぎるほどの内容に、客席からはどっと大きな笑い声が沸き起きる。
対戦相手である俺は笑っちゃまずいのだろうが……ダメだ、今のは耐えられない。
「な、なぁぁ…………っ!? だ、誰だぁぁっ!? 僕のことをバカにしたのはあああっ!?」
怒りのあまりに目を剥いたプレシオーネは、殺意の篭った目つきで周囲を見回している。
カツラが半回転してずれてしまうほど頭を振り乱しながら客席を睨みつけ、顔を真っ赤にして叫んだ。
「こっ、このカツラは古来より貴族が公共の場で着用する習慣のある、せ、せっ……正装用のものだっ! そんな事も知らんのか、この下民どもめッ! そ、それにッ! だだッ断じて僕はハゲではなぁぁいっ!!」
驚くほどの早口で反論を捲し立てるプレシオーネだったが……あまりに滑稽なその姿を見た観客たちは、一際大きな笑い声を上げた。
そ、そんな反論の仕方では、笑いを誘うだけじゃなかろうか。
だがプレシオーネは至って真面目なようだ。
「え、えぇいっ! 下民どもぉぉっ! 笑うなぁぁっ! 不敬罪で憲兵に突き出すぞぉぉっ!!」
すぐそばで聞いている進行役の男性も、顔を俯けて笑い声を上げないよう懸命に耐えている。
よく見れば、プレシオーネの後ろにいる彼の獣闘士さえもにやにやと笑ってるじゃないか。
彼の目の前にいる俺も、笑いを堪えられずに必死に顔を背ける。
客席から野次られるのがあまりに予想外だったのか、プレシオーネの叫び声は時折裏返るように高くなる。
そのあたりがより一層の笑いを誘っているのだが、これも本人は気付きそうにない。
それにしても、『不敬罪』とは、また時代錯誤な単語を聞いたものだ。
もちろん今のサンティカに、そんなものは存在しない。
それにしても、とてつもない破壊力の野次だった……。
俺は必死で笑いを堪えながらも自然な動作でプレシオーネに背を向けると、声を出した人物を目で探した。
「トレーナーっ! さっきの声って……」
「ああ、聞いた声だとは思ったけど、やっぱりシュトルさんだな。まったく、なんて野次を飛ばしてくれるんだ……」
声がしたであろう方向……俺が見つめる先に居たのは、がっしりとした体型の紳士、シュトルさんだった。
しらばっくれたような表情であさっての方向を見ながら、杖を前に立てて両手を乗せた状態で笑みを浮かべている。
そのすぐ後ろにいるキャドリーさんは、シュトルさんの顔を見上げながら驚いたような表情をしている。
そりゃあ、あれほどきっちりとした正装に身を包んだ人が、いきなり目の前で辛辣な野次を飛ばしたらあんな顔にだってなるだろう。
俺の視線に気付いたシュトルさんは、「お前の代わりに言ってやったぜ」と告げているような顔で俺にウインクをしてみせた。
俺は苦笑しながらも手で合図を返す。
プレシオーネにあからさまな挑発を受けても、ろくに言い返せずに返事をすることしかできない有様だったのだが……先ほどのシュトルさんの発してくれた野次のおかげで、今ではすっかり気持ちを入れ替える事ができたのだ。
言われっぱなしだった俺を援護してくれたのは、本当にありがたい。
これが終わったら、しっかりとお礼を伝えなければ。
「ふぎぎぎぎィィ……! 下賤極まりない連中めえええええっ! もういいッ!」
地団駄を踏むように全身で不満を露わにしたプレシオーネは、恨みの籠った視線を俺に投げると、俺を指さしてきた。
歴史ある闘技場を背景に、ふんぞり返るような姿勢で指を突きつけてくるプレシオーネの姿は、彼の着ているごてごてとした装飾のある服装と相俟って演劇の決闘シーンのように見える。
「そこのお前ぇ! お前のその貧弱そうな獣闘士を完膚なきまでに叩きのめして、観客どもに僕の訓練士としての能力の高さを見せつけてやる! お前は僕の初優勝への礎にしてやるから、せいぜい喜べぇ!」
そう言ってプレシオーネは、妙に裾の長い長衣を翻すように振り返ると、自身の後ろにいた彼の獣闘士に怒鳴りつけるように指示を出す。
「マナロ、闘技場へ降りるんだ! あの無知な訓練士の獣闘士を八つ裂きにしてこい!」
プレシオーネはそのまま俺たちを一瞥すらせずに、自身の専用席に戻って行ってしまった。
決勝前のセレモニーがこんな形で終わってしまったのを見た客席からは、溜息や苦笑が漏れ聞こえてくる。
そんなこともお構いなしに遠ざかっていくプレシオーネを横目で見送ると、『マナロ』と呼ばれた獣闘士はふんと鼻を鳴らして向き直った。
「…………あたしはマナロ。狼獣人族の獣闘士だ」
銀色に輝く体毛を靡かせ、マナロは一歩前へ歩み出ながら口を開く。
荒々しい口調が目立つ女性の狼獣人族だが、先ほどまでプレシオーネの暴言を聞いていた耳にはとても丁寧な自己紹介に聞こえてくる。
むしろこれから戦いに向けて戦意をあらわにするその表情は、獣闘士として正しい姿だろう。
マナロは落ち着き払った声で、ピノラに向けて言い放つ。
「先に言っておくが、あたしのような狼獣人族は戦いを好む種族だからな、一度戦いが始まると自分でも抑えが効かなくなる。大怪我をしても知らねえぞ」
犬歯を見せつけるかのように剥き出しにして笑うマナロは、自身の顔の前で右手の爪を弾いて見せた。
見たところ、彼女も武器を携帯していない。
その代わり、マナロの両手には手首から爪の先にかけて覆われた金属製の武具がはめられている。
恐らくあれは自身の爪を武器として使うために、その補強として装備しているものなのだろう。
協会の規定に則り刃は付いておらず、爪の先端もある程度は丸めてあるようだが……それでも他種族の獣人族と比較しても頑丈そうに見える爪は、攻撃力が高そうだ。
威嚇する意思を全面に出しているマナロを見て、俺は静かに唾を飲み込む。
彼女は強敵だ。
バランスのとれた四肢の筋肉や、それを覆う肌、毛並を見て、如実に感じる。
まだまだ筋力の鍛える余地のあるピノラと比べても、体格差は一目瞭然。
プレシオーネの有り余る財力で、日々理想的なトレーニングをこなし、最適な食事を摂っているのだろうか。
こんな迫力ある彼女を前に、ピノラは萎縮してしまわないだろうか。
などと思い、俺はピノラの顔を覗き込もうとしたのだが……
何と、ピノラはにっこりと笑みを浮かべたまま一歩踏み出したかと思うと、そのままマナロの眼前まで進み出た。
「お、おい、ピノラっ!?」
俺は慌てて叫ぶが、既にピノラはマナロの正面に立ってしまっていた。
その様子を見た会場からも、大きなどよめきが沸き起こる。
もっともな話だ。
戦う前の獣闘士は、直後に始まる死闘を目前にして興奮状態にある事が多い。
そんな状態の獣闘士同士が、戦う前に手の触れる距離まで近付いてしまえば、どんな事が起きるかなど想像することは容易いはずだ。
一瞬後に、客席のごく間近で戦いが始まってしまってもおかしくないような状況なのだ。
ましてや、今日は闘技会の決勝戦。
爪を構えた相手に近付くなど、挑発以外の何物でもない。
尚も笑みを浮かべるピノラに、マナロは頬を引き攣らせながら口を開いた。
「おい……どういうつもりだ、兎獣人……?」
まるで自身を侮っているかのような余裕を見せて眼前に立つピノラに、マナロは目を見開いている。
マナロの銀色の体毛が逆立つ。
ピノラのものよりもはるかに長い尻尾が、倍以上の太さに見えるほど膨らんでいる。
これは……相当怒ってるぞ。
非常にまずい。
「いい度胸してるじゃねえか……草ばかり食ってる兎獣人なんて、どいつもこいつも貧弱な奴らだとばかり思っていたが、こんな根性の据わったやつが居たとはなあっ…………!」
「ピ、ピノラ! やめろ! 離れるんだあっ!!」
怒りを露わにするマナロ。
その表情を見た俺は 慌てて間に入ろうと駆け出した。
その時……
「マナロさんっ!」
「────────────────っ!!」
笑みを浮かべたままマナロの名を呼んだピノラは、そのままマナロが構えている右手を取ると両手で包み込むように握った。
客席からも小さな悲鳴のような声が上がる。
何が始まるのかと身を強張らせたマナロだったのだが……
ピノラはそのまま満面の笑みを返した。
「今日はよろしくねっ!」
「………………………………は?」
「ピノラ、闘技会の決勝戦って初めてなの! いつも1回戦で負けちゃうから、こういうご挨拶もしたこと無くって……うぅぅ、マナロさんは、決勝戦って出たことある?」
客席の緊張、マナロの怒髪、俺の真っ青になった顔をよそに……ピノラはのんびりとした口調でマナロに語りかけた。
同時に、両手で持ったマナロの右手をにぎにぎしながら上下に振っている。
まさかとは思うが
握手してるのか……?
「は!? い、いや……決勝戦まで来たのは、あ……あたしもこれが、初めて、だけど…………」
「そうなのっ!? わぁ~! じゃあピノラといっしょだね! 良かった~!」
「わ、わぁ~…………って、そうじゃねえだろおおっ!? おい兎獣人! 何を勝手に和んでやがる!?」
「ふわぁぁ……! マナロさんの毛って、キラキラしてて綺麗っ! でもすべすべしてて、気持ち良い~っ!」
困惑するマナロに構わず、ピノラはマナロの腕に生えた銀毛を優しく撫で回した。
不意に体毛を撫でつけられたことで、マナロはびくりと身を跳ねさせる。
「ういっ!? や、やめろおおおッ! 勝手に触ってんじゃねぇーーーーっ!!」
「ふぁっ!? ご、ごめんなさぁいっ!?」
大慌てで手を振り払ったマナロは、すかさず後退りして距離を取る。
彼女の顔が真っ赤なのは、怒りによるものか、または羞恥なのかは解らない。
吹き出した汗を拭いながら、マナロは歯を剥き出しにして叫んだ。
「て、てめぇふざけてんのか!? これからブン殴りあうってのに、身体をまさぐるやつがどこにいるってんだ!?」
「あ、あぅぅ……ご、ごめんねマナロさんっ! で、でも……決勝戦前の時間では、握手をするってトレーナーが言ってたから…………」
大声を出されたことで身を小さくしてしまったピノラが、俺の顔をちらりと覗き込む。
正面にいるマナロも、撫でられた腕を握りながら『お前が言ったのか』とでも言いたげな強烈な視線を送ってくる。
マナロの殺気を受けて、全身から汗が噴き出る。
いや、そんな事は…………確か、言った気がする。
決勝戦開始前のセレモニーで、慣例に倣って訓練士同士で握手する、と。
だがそれは健闘を誓った訓練士の間で行うものであって、ピノラに握手を指示したつもりではなかったのだが。
どうやらピノラは、俺が握手をすれば当然自分も相手の獣闘士と握手をするものだと思っていたらしい。
客席からは『あの訓練士、正気か』といった視線が降り注ぎ、当のマナロからは『コケにしやがったな』と言わんばかりの殺意の篭った眼光が注がれている。
「おい、兎獣人の訓練士よお……てめえ、そんな舐めくさった指示を出すとは、良い度胸してるじゃねえかオイ…………」
「い、いや、これは違うんだ。俺は決してピノラに挑発的なことをさせようとしたのでは無く、い、いや、そもそもそういった指示は……」
「こんな大恥をかかされたのは、生まれて初めてだああああっ……! お望み通り、『よろしく』戦ってやるからなぁぁ!!」
全身の毛を逆立てたマナロは、怒りのせいかわなわなと全身を震わせながら振り返る。
そしてそのままプレシオーネの待機している入場門へと大股で歩いて行った。
残された俺は、ざわめく客席からの視線に耐えねばならなかった。
「どっ、どうしよう、トレーナーっ!? マナロさん、何だかすっごい怒ってるよっ!?」
「あ、あぁうん…………そうだね…………その、ごめんな、ピノラ…………」
「ふえっ!? な、なんでトレーナーが謝ってるのー!?」
明らかに攻撃力が上がったように思うマナロが闘技場へ降りていく姿を見て、俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらピノラの頭を撫でてやるのだった。
応援ありがとうございます!
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