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「4」(終)
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まだ恐怖が胸の中で渦巻いている中学校に行くと、例の女子達が一際大きな声で話していた。あれから毎晩、私が行かなくなってからも学校のトイレに行っているらしい。未だ現れず、業を煮やしているようだった。まさか、私が見たと言うわけにも行かず、そのまま黙って話を聞いていた。少々雰囲気が悪い。
「いつになったら出るの」
「いい加減私たちも我慢の限界なんだけど~」
「毎晩毎晩外出するのも疲れるし…寝れてないんだよね」
「そんなこと言うなら方法考えてよ」
そう言うと誰も思いつかないだろうと思っていたものの、私の予想に反して一人が声をあげた。
「名前とか呼んでみたらー?」
そんな馬鹿な、すぐに却下される…と思ったがそうではなかった。数瞬の沈黙の後、
「それいいかも」
と誰かが呟いた。私は内心、唖然としていた。そんな子供だましみたいな方法で「アレ」が現れるわけがない、と不思議な確信があった。彼女らはまた今晩もこの校舎のトイレで「アレ」を探すのだろう。こんな馬鹿みたいなことに付き合ってはいられない。彼女らのことは忘れて勉強に集中しよう。そう思っていた。
授業が始まると、私は今朝見た「アレ」の姿を想起してしまった。あのイメージがなかなか頭から離れず、おかげで授業に全く集中することが出来なかった。途中、何度か視線を感じて周りに目を向けるが周りには当然誰も――クラスメイトを除いて――いない。校庭にも視線を向けたが人影を捉えることはできなかった。
学校が終わったあと、私は一目散に家へ帰り、自分の部屋に閉じこもって寝てしまった。昨日の夜あんなことがあったせいで寝れていなかったせいもあるが、一番は「アレ」に対する恐怖心だ。起きているとまた「アレ」が襲ってくるんじゃないか。そう思ってしまっていたのだ。だから、日中の授業中に感じた視線の意味に気づくこともなかったのだ。
翌日のことだ。朝学校に行くと、いつもの騒がしさがなかった。その理由はすぐにわかった。例の女子グループがいないのだ。何故だろうと不審に思っていると教室のドアが開き、担任の先生が入ってきた。みんなが席につき、ホームルームが始まる。だが、先生の最初の一言はいつもと違った。
「みなさんに非常に深刻なお話です。今朝から学校に来ていない、雖後□さん、蜉ゥ縺代※さんの二人が行方不明となっているそうです」
…なんだって?いずれも例の女子グループに所属していた二人で、片方はリーダー格、もう一人は昨日馬鹿げた提案をした女子だった。
「今日の授業は急遽取りやめになりました。みなさんはこれから下校することになります」
ごく一部の生徒は喜んでいるようだが、大半が行方不明という言葉に恐怖を抱いていた。私も勿論恐怖を抱いていたが、彼らよりも確信に近いものがあった。あの二人は、「アレ」に殺されたのだ。何故だろう…刑事さん、そしてこの二人に共通する点とは…?
私は帰る前に何か情報を得るためにこっそり職員室に立ち寄ることにした。扉の陰に隠れ、先生たちの話を聞いていた。
「…ですから、あの二人は例の『くまのぬいぐるみ事件』の被害者となったのでしょう」
担任の先生だ。やはり私の予想は当たっていたらしい。先生はどんな表情をしているのだろうか、教え子が死んで。そう思い、職員室の中を覗いた瞬間――心臓が凍りつくかと思うほどの恐怖を覚えた。理由は明白だ。先生の後ろに「アレ」が立っていたからだ。私は恐怖で足がもつれそうになりながら急いで学校を出た。ついさっきまでいなかったのに…なんで?少しだけ冷静になった私の頭の中で、唐突に一つの考えが纏まり始めた。そういえば刑事さんも、あの二人も「アレ」に名前をつけたり呼んだ次の日にいなくなっている…名前だ。「アレ」は自分に名前をつけようとしたりそれを呼んだ人間を殺しているんだ。思い返してみれば、昨日の授業中何度か視線を感じていたけれどおそらく「アレ」があの二人に取り憑いていたからなのだ。視られているのは私ではなくあの二人だった。ということはあの先生も…
ここに至って私は恐ろしい事実に気づき、急いで学校に戻る。今までの被害者は全員浴室で死んでいた…ということは浴室に行かなければ殺されないはず。そう思って担任の先生を探すが、どこにもいない。他の先生に聞いてみると、もう帰ってしまったらしい。私は絶望し、その場で崩れ落ちた。そこから先は覚えていない。ゆっくりとした足取りで家に帰り、気づいたら寝ていた。
翌日、ホームルームの時にやってきた先生は、やはり違う先生だった。
「皆さんに大事なお知らせです。このクラスの担任の譚・繧九↑先生は昨日から行方不明となっています。昨日に引き続きとなりますが、今日の授業はなし、皆さんは下校となります」
昨日とほとんど同じようなことを告げられた。違うところといえば行方不明になったのが先生か生徒という違いだけだ。私は昨日のように情報を集める気も起きず、放心状態のまま家に帰った。
その夜のことだ。私は眠れず、何か温かいものでも飲もうかと自分の部屋を出た。リビングの方から声が聞こえる。母親が誰かと電話で行方不明事件について話し合っているようだ。
「…最近なんか怖い事件も起こってるじゃない?」
「『くまのぬいぐるみ事件』、だったかしら?」
とまあ、こんな話だ。このあとこの女の子がどうなったかは知らない。そもそも、俺にこの話を教えてくれた人も誰から聞いたかはわからない。もしかするとその怪異は実際にいて、そいつ自身が広めたのかもしれないな。理由はわからんがこの話を教えてくれた人もここしばらく音信不通なんだ。…え?なんだと?まさか…お、おい嘘だろ?縺翫>縲√d繧√m縲∵擂繧九↑?
「いつになったら出るの」
「いい加減私たちも我慢の限界なんだけど~」
「毎晩毎晩外出するのも疲れるし…寝れてないんだよね」
「そんなこと言うなら方法考えてよ」
そう言うと誰も思いつかないだろうと思っていたものの、私の予想に反して一人が声をあげた。
「名前とか呼んでみたらー?」
そんな馬鹿な、すぐに却下される…と思ったがそうではなかった。数瞬の沈黙の後、
「それいいかも」
と誰かが呟いた。私は内心、唖然としていた。そんな子供だましみたいな方法で「アレ」が現れるわけがない、と不思議な確信があった。彼女らはまた今晩もこの校舎のトイレで「アレ」を探すのだろう。こんな馬鹿みたいなことに付き合ってはいられない。彼女らのことは忘れて勉強に集中しよう。そう思っていた。
授業が始まると、私は今朝見た「アレ」の姿を想起してしまった。あのイメージがなかなか頭から離れず、おかげで授業に全く集中することが出来なかった。途中、何度か視線を感じて周りに目を向けるが周りには当然誰も――クラスメイトを除いて――いない。校庭にも視線を向けたが人影を捉えることはできなかった。
学校が終わったあと、私は一目散に家へ帰り、自分の部屋に閉じこもって寝てしまった。昨日の夜あんなことがあったせいで寝れていなかったせいもあるが、一番は「アレ」に対する恐怖心だ。起きているとまた「アレ」が襲ってくるんじゃないか。そう思ってしまっていたのだ。だから、日中の授業中に感じた視線の意味に気づくこともなかったのだ。
翌日のことだ。朝学校に行くと、いつもの騒がしさがなかった。その理由はすぐにわかった。例の女子グループがいないのだ。何故だろうと不審に思っていると教室のドアが開き、担任の先生が入ってきた。みんなが席につき、ホームルームが始まる。だが、先生の最初の一言はいつもと違った。
「みなさんに非常に深刻なお話です。今朝から学校に来ていない、雖後□さん、蜉ゥ縺代※さんの二人が行方不明となっているそうです」
…なんだって?いずれも例の女子グループに所属していた二人で、片方はリーダー格、もう一人は昨日馬鹿げた提案をした女子だった。
「今日の授業は急遽取りやめになりました。みなさんはこれから下校することになります」
ごく一部の生徒は喜んでいるようだが、大半が行方不明という言葉に恐怖を抱いていた。私も勿論恐怖を抱いていたが、彼らよりも確信に近いものがあった。あの二人は、「アレ」に殺されたのだ。何故だろう…刑事さん、そしてこの二人に共通する点とは…?
私は帰る前に何か情報を得るためにこっそり職員室に立ち寄ることにした。扉の陰に隠れ、先生たちの話を聞いていた。
「…ですから、あの二人は例の『くまのぬいぐるみ事件』の被害者となったのでしょう」
担任の先生だ。やはり私の予想は当たっていたらしい。先生はどんな表情をしているのだろうか、教え子が死んで。そう思い、職員室の中を覗いた瞬間――心臓が凍りつくかと思うほどの恐怖を覚えた。理由は明白だ。先生の後ろに「アレ」が立っていたからだ。私は恐怖で足がもつれそうになりながら急いで学校を出た。ついさっきまでいなかったのに…なんで?少しだけ冷静になった私の頭の中で、唐突に一つの考えが纏まり始めた。そういえば刑事さんも、あの二人も「アレ」に名前をつけたり呼んだ次の日にいなくなっている…名前だ。「アレ」は自分に名前をつけようとしたりそれを呼んだ人間を殺しているんだ。思い返してみれば、昨日の授業中何度か視線を感じていたけれどおそらく「アレ」があの二人に取り憑いていたからなのだ。視られているのは私ではなくあの二人だった。ということはあの先生も…
ここに至って私は恐ろしい事実に気づき、急いで学校に戻る。今までの被害者は全員浴室で死んでいた…ということは浴室に行かなければ殺されないはず。そう思って担任の先生を探すが、どこにもいない。他の先生に聞いてみると、もう帰ってしまったらしい。私は絶望し、その場で崩れ落ちた。そこから先は覚えていない。ゆっくりとした足取りで家に帰り、気づいたら寝ていた。
翌日、ホームルームの時にやってきた先生は、やはり違う先生だった。
「皆さんに大事なお知らせです。このクラスの担任の譚・繧九↑先生は昨日から行方不明となっています。昨日に引き続きとなりますが、今日の授業はなし、皆さんは下校となります」
昨日とほとんど同じようなことを告げられた。違うところといえば行方不明になったのが先生か生徒という違いだけだ。私は昨日のように情報を集める気も起きず、放心状態のまま家に帰った。
その夜のことだ。私は眠れず、何か温かいものでも飲もうかと自分の部屋を出た。リビングの方から声が聞こえる。母親が誰かと電話で行方不明事件について話し合っているようだ。
「…最近なんか怖い事件も起こってるじゃない?」
「『くまのぬいぐるみ事件』、だったかしら?」
とまあ、こんな話だ。このあとこの女の子がどうなったかは知らない。そもそも、俺にこの話を教えてくれた人も誰から聞いたかはわからない。もしかするとその怪異は実際にいて、そいつ自身が広めたのかもしれないな。理由はわからんがこの話を教えてくれた人もここしばらく音信不通なんだ。…え?なんだと?まさか…お、おい嘘だろ?縺翫>縲√d繧√m縲∵擂繧九↑?
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