アルトリアの花

マリネ

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腕一本で押さえられたのに、さすがに騎士団なだけあって、がっしりとして微動だにしない。
細身でしなやかな身体つきに見えていたのに、意外と筋肉質だ。
「不用意に近づいたら危険だよ。」
「ですが…。大丈夫?」
少女は口からは涎を足らし、肩で息をしている。
キッとこちらを睨み付けてくるので、意識はしっかりしてそうだ。
「このまま続けて。」
遮られた腕は、外して貰えそうにない。
駆け寄ると思われてるに違いない。
「はい。えっと、兄を見かけたのですか?」
彼女は喋るのが苦痛なのか、眉間には深い皺がよる。
何度か口を無言で動かしたあと、うめき声混じりに漏れる。
「う…別動隊の…捕虜…。」
たった二言話しただけで、かくんと少女の頸が項垂れたまま動かなくなった。

「意識を失ったか。」
少女の側に立つクリストフは、素早く、再度猿轡を着けた。
それでも彼女の意識は戻りそうにない。
「別動隊か。カルテットなら偵察時に加護で対策してそうだな。連絡はとれるか?」
「ばっちり準備済み。」
アルベルトは耳に付けていた飾りを手に取ると、ひらひらと左右に揺らした。
細かな金細工の中心に、大降りな半円の緑石がはめ込まれている。
「カルテット、森に別動隊がいるようだ。場所はわかるか?」
ソウンディックが石に向かって話しかけると、中心が鈍く光だした。
あまりにも綺麗な装飾品だったから一見しても分からなかったが、加護や魔術を持たない者でもその力を借りれる精霊石のようだ。
精霊の加護持ちが特殊な石に力を分け与える事で、一時少量だけども、万人が同じように加護の力を発揮出来るのだ。
「風の精霊を配置してありますから、分かりますよ。というか、皆さんのすぐ近くです。西に10分も行けば当たります。」
「よくやった。別動隊を叩いてから戻る。捕虜と討伐済みの魔物がいるから、アルメニア騎士団をここに派遣してくれ。」
石からカルテットの声が響く。
街中で言葉を吹き込んでおく石は見たことがあったが、双方向で会話が出来るほどの精霊石は初めて見た。
「早く戻って下さいよ。俺じゃあ、これ以上マリアを押さえるの辛いです。おっと、マリアこっちに鞭打つなよ。魔物も投げるな。当たるだろ。」
声の後ろから、マリアの怒声と衝撃音が聞こえる。
普段なら森の入り口までやって来る魔物はそうそういない。
何が起きてるのだろう。
「もう少し、頑張れ。」
「お前にしか止められない。」
「森を壊すなよ。」
三人はそれぞれに諦めたように呟く。
「無理ですってー。」
カルテットの悲鳴。
それを合図に通信は切れた。
静かに輝きを失くした石を確認すると、アルベルトは耳に付け直した。
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