アルトリアの花

マリネ

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光 ソウンディック

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レティの悲鳴と共に、彼女から白銀の光がうち放たれた。
放射線状に広がるそれは、触れるものを消し去って行く。
レティを押さえ込んでいた黒装束の男の姿は、
すでに見当たらない。
「アルベルト、クリストフ、光に触れるな。」

「深遠」

呟きと共に一気に黒靄を解放した。
アルベルトとクリストフの周りの光を分散出来れば良い。
二人のいる場所はレティから離れているのが幸いしてか、呑み込まれる程の光量ではない。防げるだろう。

「あとは…。」
黒狼を見上げれば、光に触れたところから姿が消えかかり、苦しそうにもがいている。
「まだ無事だな。」
口元にいるレティの義兄だ。
チャと足元に落としていた剣を蹴り上げ、柄を握る。
何度か光を浴び、身体が保てなくなってバランスを崩し始めた狼は、一瞬、首をもたげた。
ザッ。
跳躍し回転しながら頭を切り落とす。
落ちてくる義兄を抱き込むと、追ってくる光は深遠で何とか防いだ。
全てを飲み込む闇だと、底などないと、散々に恐怖されたが、この光はそれも凌駕してくる。
膝を付いた軍服の裾が、切り取られたように失くなっていることに気が付いた。

「…で、殿下。」
腕にいる義兄がうっすらと目を開け、胸元を押さえた。
「これを…彼女に…。」
胸元のポケットに手を差し入れると、そこには一つの腕輪があった。
金の草が絡む意匠に、細かな文字が刻まれている。
「レティにはめれば良いんだな。」
コクンと頷くと、また瞳を閉じた。

とはいったものの、どう近づいたものか。
「ソウンディック急げ。クリストフが限界だ。」
膝を付いたクリストフの背を守るように、アルベルトが接している。
レティは気を失っても、まだ揺らめく光は消し去るものを求め、方々へ手を伸ばす。
横たわった義兄に害が無いように、深遠で囲み、光を遮断した。

四方から来る光の手を弾くように、深遠を分けつつ、崖を駆け上る。
レティの光で消し飛ぶなら、それも良いかな。と一瞬浮かんだ馬鹿な考えを打ち消しつつ、腕輪を構えた。

誰かが消えてしまったら、君は後悔するだろう?
「もう良いんだよ。レティ。」

そっと白い腕を掴み、腕輪をはめる。
光は吸い込まれるように消えていった。

ガクッと前のめりに倒れ込むレティの身体を抱き締めると、その場に座り込んだ。
こんなに細く小さな体で、よくあれだけの光を放てたものだと感心する。

加護や魔術は魔力や精神力を源に発揮される。
その点、深遠やレティの白光は源とするものがない。敢えてなら自我だろうか。
自我の強さによっては制御も出来るし、溢れ出すのを保つ事も出来る。
「レティがレティのままで良かったよ。」
レティや自分の自我が失くなった時、それは、深遠や白光が全てを飲み込む時だ。
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