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しおりを挟む「では、しっかりとお迎えの準備をしなければなりませんね。」
ギルデガンドの養子となって、初めて迎える賓客だ。
粗相があって辺境伯の迷惑になってはならない。
賓客へのもてなしの仕方は、ここに来てからの貴族へのマナー講座でしっかり勉強した。
実践は初めてだけど。
「その必要はないよ。」
「はじめまして、レティシア嬢。お久しぶりです、兄様。」
アルベルトの背面に出来ていた影が、すぅと伸び、人形が浮かびあがる。
眼の前に現れた塊は、一瞬で輝くような金髪の少年へと変貌を遂げた。
「シュタイン·ビルヘイム·フォン·カルストリアと申します。」
にっこりと微笑んだ。
くるくるときれいな巻き毛の金髪に、ソウンディックよりも薄めの青い瞳。
色白ながらも、半ズボンのよく似合う活発そうな少年だ。
「シュタイン。人の影を移動に使うなと、何度言ったら分かるんだ。」
「僕だってアルベルトの影なんて嫌だけど、一番濃かったんだから仕方ないだろう。」
ぷんっと頬を膨らませ、そっぽを向く姿は人形のよう。
「ソウンディックのを使えば良いだろう。」
「兄様の影だなんて恐れ多い。それに、靄に飲まれちゃうよ。」
チラリと見上げるのにつられて、思わずソウンディックの顔を見ると、いつにも増して目尻が下がっている。
「そうだね。人だろうと何だろうと、何でも飲み込むからね。」
試さないで。と付け加える。
そんなに物騒なモノに、素手で触ってたのですね。
やけに皆さんが驚いてるなぁとは思っていたけれど。
「兄様、紹介してくださいよ。会いたくて早めに来ちゃったんだから。」
「ああ。」
ソウンディックとアルベルト、二人の側からひょこと顔をのぞかせながら、微笑む姿は愛らしい。
「こちらがレティシア·フォン·ギルデガンド嬢だ。」
「御目文字叶いまして、光栄に存じます。」
このところ、さらに磨きがかかったと評判のカーテシーを披露する。
「そんなにかしこまらないで。僕の事はシュタインって呼んで下さい。僕もレティ嬢と呼んでもかまいませんか?」
「光栄です。シュタイン殿下。」
「もう、違いますよ、シュタインです。」
「失礼致しました。シュタイン様。」
表情がころころと変わり、思わず笑みを浮かべてしまう。
ソウンディックが「カワイイ」と言っていたのも、分かる気がする。
「シュタイン、護衛も置いて来てしまったのかい?」
「だって普通に陸路で来たら何日もかかるじゃないですか。置き手紙はしてきましたよ。」
「護衛やメイドはこちらで合流予定です。後でフィン様に怒られて下さい。」
「え、嫌だよ。姉様怒ると怖いもの。アルベルト、一緒にいて。」
「俺だって嫌ですよ。ソウンディック様、頼みます。」
「え、遠慮するよ。」
3人が顔をしかめながら、段々と小声になっていく。
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