アルトリアの花

マリネ

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「私を?」
「そうだね。レティは素敵だから。」
ソウンディックが満面の笑みで頷く。
そんな横では、アルベルトが顔をしかめている。
意味合いが違うのは、私でも分かります。

「レティ。君にとっては不本意かもしれない事だと思うけど、言っておく。」
コホンと前置きして、アルベルトが説明を始める。

「精霊に厭われし者である廃嫡の危機にある第一王子が、長年探していた光を見つけた。もしくはスタンピードから国を救った英雄が、長年焦がれていた者を見つけ出した。これが今の貴族を中心とした世間の見方だ。王宮に至っては、国どころか世界崩壊を止められる唯一の存在であるリュクスの生まれ変わりを、とうとうソウンディックが見つけ出したと捉えている。君自身が否定しても、それは覆らない。」
ごめんねと、ソウンディックが肩をすくめている。

それはとても誇張されていて、別の人の話では?
世界崩壊って何?聞いたことのない事が出てきてるんだけれど。
あれ?そういえば、前に時間がないとか。深淵は全てを飲み込むとか…聞いた気もする。

「今後はレティの意思とは関係なく、世間の見方に振り回される事もあると思う。出来る限りそうならないように、手は打つつもりなんだが…不愉快に思う事もあるだろう。すまない。」

いつも飄々としているアルベルトに謝られるのは、少し落ち着かない。

「あの、一体どんな風に報告されたんですか?」
そもそもの王宮への報告書は。
定期的に報告しているとは聞いていたが、自分の行いを振り返ってみると、とても王宮に話せる内容ではない。
不敬罪と取られてもおかしくない。
そもそも、隣国との関係や世情の報告ではなかったのか。

「簡単に。英雄、光を見出し。とだけ。」
ええ…?それだけ?
「いや、関係者はそれだけで十分分かるから。」
うんうん。それくらい長年、切実に探してたんだよ。と、当のソウンディックも頷く。

「そんなので騒ぎになったり、王子様までお越しになるなんて。」
「ソウンディックの光が見つかるのは、それくらい大層な事なんだよ。」
肩をすくめる。

そういえば、幼い頃からリュクスを探していたと言っていた気がする。
大騒ぎさせて探させた結果が自分では、なんだか申し訳なくなってきた。
リュクスだとは言われ慣れてきたけれど、自覚がない分、がっかりしたとか言われたらショックだわ。

「まぁ、王子の方は姑みたいなものかな。兄ちゃん子だからな。覚悟してくれ。」
「大丈夫。シュタインもすぐに打ち解けるよ。」

ソウンディックの満面の笑みは不安でしかなかったが、お兄ちゃん子の王子というのは興味が出てきた。
自分の事をどんな風にとらえられているのか、確認するのは怖いけれど、しっかり向き合おう。
前もって知れただけでも心構えが出来るもの。
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