アルトリアの花

マリネ

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そうか。ソウンディックはそんな事は望んでないから、困った顔をしたのね。

「シュタイン殿下が邸に滞在中は、会議や報告は全てソウンディック様の側で行う事になります。一定の距離を取れば加護の範囲を抜けるのですが、はっきり分からない時には気をつけて下さい。」

コクンと頷く。

「さて、ここからが本題です。10分後にはエディル様と精霊石での連絡が繋がります。事前に頂いた話だと、現在はエステザニアに入国し、オディール家の直轄地の手前だそうです。」

すっとテーブルに地図が広げられる。
アルベルトが指をトンと置いた先には、オディールの名前が記されている。

「アルトリアからこのオディールまで行くには、本来なら森を迂回するしかありません。日数としては5日から一週間はかかります。そこから先、オディール直轄地までは、さらに5日。最短でも8日はかかるのです。」
「エディル殿が出立してから、まだ5日しか経ってないな。」
「可能性としては…ここ。」

すっと動く指先は、エステザニアからアルトリアまで直線を描いた。

「森を突っ切ったか。」
「あの森をか?魔物も多いぞ?」
「ですが、最短のルートです。その点の話をされたいと打診もありました。」

説明を続けていたカルテットが、ソウンディックの指示を待つかのように頷いた。

「では、ほぼ間違いないだろうな。考えられるのは先日の広くなっていた道幅だ。エディル殿を救出に向かった際、小道だったはずの場所が、馬車まで通れるくらいに拡大していた。アルトリアで何度も魔物狩りに参加し、森へも立ち入っているが、エステザニアとの国境までは人が通るので精一杯の道だったと記憶している。」
「数ヶ月前には遠征訓練をしているが、異変は見られんかった。」
「では、道が出来たのは数ヶ月の間…という事になりますね。」

皆が無言になる。
エステザニアと国自体の関係は悪いものではないが、国境を無視した形で道が出来上がってしまっていれば、検問も行えない。
どんな形でアルトリアに不利益が降り掛かっても、可笑しくない状況なのだ。

「ギルデガンド。ここ数ヶ月、アルトリアで異変は無かったのか?」
「ありません。あっても領民同士の小競り合い位で、傭兵の数もいつもと大差はない。」
「今のところは常時と変わらないのだな。細かい点は、エディル殿の連絡の後で対策を練るとするか。」

それぞれが唸りながら地図を見つめた。
先程、アルベルトが指し示した、森を割く架空の道が、しっかりと脳裏には刻まれていた。
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