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あっと言う間に、エデルとの通話の時間はやってきた。
机上に置かれた通信具が、チカチカと赤いランブを灯している。
「エデル殿と繋げます。」
カルテットが軽く触れると、灯りは青へと変化した。
「…殿下。」
数日前に別れたばかりなのに、聞こえて来る声が懐かしい。
「連絡ありがとう、エデル殿。この場にはレティシアと側近のみにしてある。気遣い無用だ。」
「お心遣い痛み入ります。早速ですが、現状の報告を。私は現在、アルトリアとの国境を越えたオディール領の端におります。」
卓上に置かれた地図の上を、すっとアルベルトの指先が走る。
図面上は森で覆われたそこが、国の境い目なのだろう。
「私の記憶では森を迂回するか、魔物との遭遇を危惧しながら道無き道を辿るかしかない場所だったはずなのですが。」
「今もそのはずです。」
「やはり…。現在は森の中盤からオディールまで、道が出来ております。しかも馬車も通れる広さのものが。」
「まさか。」
ガタッと大きな音を立てて、ギルデガンドが席をたつ。
「エデル殿はその道を通り、この速さでオディールまでついたのか?」
「そうです。この道を通れば、人だけでなく荷馬車までもが、今までの数倍の速さでアルトリアとの行き来を可能にするでしょう。」
「…貴殿は…通るものが友好的ではない可能性があると?」
アルベルトが確信をつく。
誰がこの道を作ったのか。
なぜ今まで気づかれなかったのか。
なぜそんなにもアルトリアに速くたどり着く必要があるのか。
「そう思い、ご報告させて頂きました。」
しばしの静寂が、長く感じる。
アルトリアの脅威が今までの魔物だけだと思えていたのは、たしかに森が隣国との交通を遮断していたからに過ぎない。
その防衛線が無くなれば、どうなるのか。
特に我が国に好戦的な隣国が、指を咥えて見ているはずはなかった。
「確かめようか。」
ポツリと呟くようなソウンディックの声で、皆が我にかえる。
「そうですね。今のこちらには主力部隊が揃ってるわけですし。」
「先日の騒動の後なので、魔物の気配も大人しいから、好機かもしれません。」
ソウンディックが地図を覗き込むと、さっと、アルベルトがひと無でする。
「エデル殿。道はオディールまで続いているのだろうか。」
「森を抜ける所までですね。ただその後は近隣の集落へと続く街道があるので、ほぼオディールまでと言っても良いかと。」
「だとすると…。ここからここまでって事ですね。」
アルベルトが撫でた道筋は、アルトリアからほぼ真っすぐにオディール近隣まで続いていた。
机上に置かれた通信具が、チカチカと赤いランブを灯している。
「エデル殿と繋げます。」
カルテットが軽く触れると、灯りは青へと変化した。
「…殿下。」
数日前に別れたばかりなのに、聞こえて来る声が懐かしい。
「連絡ありがとう、エデル殿。この場にはレティシアと側近のみにしてある。気遣い無用だ。」
「お心遣い痛み入ります。早速ですが、現状の報告を。私は現在、アルトリアとの国境を越えたオディール領の端におります。」
卓上に置かれた地図の上を、すっとアルベルトの指先が走る。
図面上は森で覆われたそこが、国の境い目なのだろう。
「私の記憶では森を迂回するか、魔物との遭遇を危惧しながら道無き道を辿るかしかない場所だったはずなのですが。」
「今もそのはずです。」
「やはり…。現在は森の中盤からオディールまで、道が出来ております。しかも馬車も通れる広さのものが。」
「まさか。」
ガタッと大きな音を立てて、ギルデガンドが席をたつ。
「エデル殿はその道を通り、この速さでオディールまでついたのか?」
「そうです。この道を通れば、人だけでなく荷馬車までもが、今までの数倍の速さでアルトリアとの行き来を可能にするでしょう。」
「…貴殿は…通るものが友好的ではない可能性があると?」
アルベルトが確信をつく。
誰がこの道を作ったのか。
なぜ今まで気づかれなかったのか。
なぜそんなにもアルトリアに速くたどり着く必要があるのか。
「そう思い、ご報告させて頂きました。」
しばしの静寂が、長く感じる。
アルトリアの脅威が今までの魔物だけだと思えていたのは、たしかに森が隣国との交通を遮断していたからに過ぎない。
その防衛線が無くなれば、どうなるのか。
特に我が国に好戦的な隣国が、指を咥えて見ているはずはなかった。
「確かめようか。」
ポツリと呟くようなソウンディックの声で、皆が我にかえる。
「そうですね。今のこちらには主力部隊が揃ってるわけですし。」
「先日の騒動の後なので、魔物の気配も大人しいから、好機かもしれません。」
ソウンディックが地図を覗き込むと、さっと、アルベルトがひと無でする。
「エデル殿。道はオディールまで続いているのだろうか。」
「森を抜ける所までですね。ただその後は近隣の集落へと続く街道があるので、ほぼオディールまでと言っても良いかと。」
「だとすると…。ここからここまでって事ですね。」
アルベルトが撫でた道筋は、アルトリアからほぼ真っすぐにオディール近隣まで続いていた。
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