アルトリアの花

マリネ

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「明日にでも先行隊を編成しよう。」

時間が惜しそうにギルデガンドが席を立つ。

「エデル殿。森の道に関しては、こちらでも早急に調査する。エデル殿は、この後はいかがするおつもりだっただろうか。その…このままオディールへ向かうのは、状況が見えない以上、お勧め出来ないのだが…。良かったら、アルトリアへ切り替えしてはいかがだろうか。」
「いえ、このままオディールへ向かってみようと思います。離れた年月があるとはいえ、オディールは生まれ育った領地。土地勘のある者が」


ソウンディックの場を占める声が飛ぶ。

「カルテットは情報整理、アルベルトは編成をギルデガンドと相談してくれ。」
「はっ。」

二人が指示を受けて部屋を後にすると、ソウンディックは手まねきでレティシアを呼び寄せた。

「まだ繋がったままだ。話したいこともあるだろう。」
「良いのですか?」

皆が明日からの準備に慌ただしくする中、エデルと個別に話すのは憚れたのだ。
そんな思いを扶植するように、ソウンディックは微笑む。

「兄さん…。」

そっと通信機に身を乗り出すように語りかけると、すでに懐かしく感じてしまう声が返ってくる。

「…レティシア?」
「うん。そうよ。大丈夫?無理してない?」

顔を見れないもどかしさと、声だけが聞こえる恥ずかしさが胸のあたりを熱くする。

「大丈夫。心配ないよ。レティシアは皆様に迷惑をかけたりしてないかな。」
「子供じゃないんだし、大丈夫よ。」

今までと変わらないやり取りに、思わず笑みがこぼれる。

「あ、兄さん。私、ギルデガンド様の養子になる事になったわ。許可も得ずにごめんなさい。」
「そうか。辺境伯の…。いや、最善かもしれないな。」
「え?」

後半は呟くような囁きで、聞き取れない。

「いや、良くして頂いてるようで安心したよ。」
「うん。皆様、すごく優しくして下さるのよ。」
「そうか。ああ、しばらくはソウンディック様達も忙しくなさるだろうから、お邪魔はしないようになさい。」
「分かってるわ。」

それじゃあね。と、エデルが呟くと、通信の精霊石は色合いを無くして静まってしまった。
話す事はないはずなのに、もう少し、もっと声を聞いていたい気持ちがもどかしく残ってしまう。

「レティ。」

そっと肩に置かれた手に、今にも泣き出しそうな事に気がついた。
泣いてる場合じゃない。
皆がすでに明日からの先行隊の準備にかかっている。
自分に出来ることがあるのか、しっかり考えなきゃ。
すっと顔を上げて、レティシアはソウンディックに笑顔を見せた。
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