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序章

第20話 奴隷商人が来てるらしいけど、毎回可愛い女の子とは限らない②

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「え、そうなの⁉」

 サブロウから告げられた隠すほどでもない真実。
 それに対するリリスのリアクションは中々に良い。いいタレントになれそうだ。

「そうさ。言葉ってのは増えることはあっても減ることはない。だから僕は年々、陰ながら更新し続けているのさ。君たちのような後続の為にね?」
「へー……だから、そんなに自慢気なのね。じゃあ、結構お金稼いでたりするんだ?」

 リリスの言う通り、サブロウは誇らしげだった。
 しかし最後の言葉が、その鼻っ柱を直ぐにへし折ってしまう。

「いや、それがそうでもなくってね……。後続の為とは言ったものの、この世界に来たのって君と新人勇者ちゃんくらいなのよ。そのおかげで昨今お金が入ったとはいえ、三十年間の努力に見合っているかって言うと、正直微妙で……ハハ……」

 その乾いた笑いと死んだような眼には、三十年間の哀愁が込められていて……なんだか居た堪れない。

「なんかごめんなさい……。じゃあ、その頑張った御褒美にさ! 行こうぜ、奴隷売買!」

 リリスは煌めくサムズアップを用い、サブロウを元気づけるようとする。

「いや、そんな『行こうぜ、全国!』みたいな感じで言われても……。そういうの嫌いだって言ったでしょ?」
「も~う、頑固ねえ、サブロウくんは。でも安心なさい! サブロウくんがダメダメでも、私が何処へだって連れ出してあげるから! あ、堕天使流柔術秘奥~義~」
「ちょ、ちょっと待っ――」

 歌舞伎の見得が如きリリスのポーズに、サブロウは面倒ごとを察知して止めに入る――

「あ、【場面転換】~!」

 が、時すでに遅し。

 サブロウは輝かしい光を受け、敢え無く転送されてしまった。



「さあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 右に左により取り見取りの娘を取り揃えているよ! 従順娘から反抗的な娘まで圧巻のラインナップ! お兄さんの探してるあの子がきっと見つかるはず! さあ、そんな娘たちが今ならたったの三十万カネー! お買い得だよー!」

 ここは寂れた奴隷市場……そう例えてしまうのも止む無しか、見るからに繫盛はしてなさそう。
 だが、こういうところに限って、旨いラーメンが食えたりするのも、また然り。この時点でなしと決めつけるには時期尚早であろう。

 一本道の左右には所狭しと檻が設置してあり、中には当然奴隷の娘たちが囚われていた。
 その中央では奴隷商人が盛り上げようと必死に売り込みをかけており、こういう例え方はどうかと思うが非常に人柄が良さげに見えた。

「あーあ、飛ばされちゃったよ……」

 そんな光景を前に愚痴をこぼすサブロウ。
 敢え無く御用となった悲しき男は、隣にいた諸悪の根源へと視線を移す。

「………………」

 当然、リリスも同行しているのだが……その姿は元天使の片鱗すら見えない、どこに出しても恥ずかしい、アヘ顔ダブルピースであった。

 さすがにツッコまないのは可哀想と、サブロウはその悲しきモンスターに接触を試みる。

「君はその……何でいつもそんな風になるのかな?」
「ん? あぁ、これ? 【場面転換】っていうのは呪われし力なの。だから、天使の中でタブーとされるアヘ顔を披露することで行使できるってわけ。ちなみにダブルピースを付け加えることで、その発動確立を八十%まで引き上げることができるわ!」
「百パーじゃないという哀しみ……」

 もはや勝手に飛ばされた怒りは何処かへやら。
 寧ろサブロウは手を合わせ、同情の念すら送っていた。

「そこまで感謝を露わにするなんて……! フフッ、サブロウくんも漸く私の有難みに気付いたみたいね! よーし! それじゃあ早速、その勢いのまま新たなヒロインを確保しにいっちゃいましょーう!」

 リリスはサブロウの腕に手を回し、柔らかな胸を押し付けながら、奴隷市場へと引っ張っていく。

 場所が違えばデートっぽく見えなくもないが……この二人に限って、それは無いのである。
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