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第二章

第76話 前作主人公おじさん、さすがに死ぬ②

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 ――サブロウ! サブロウ! くそッ……! ブリッツ! このままじゃ、サブロウが……!――

 ――わかってる! ったく、馬鹿弟子が! 手間かけさせやがって……!――

 ――……どうだ? 助かりそうか?――

 ――チッ……思ったより淵源中毒の進行が酷い……。強制シャットダウンが始まってる……――

 ――じゃあ、サブロウは……⁉――

  ――死なせはしない……! 魔天籠へ運ぶぞ! 話はそれからだ!――

 ――あ……ああ!――



 サブロウ……サブロウ……

「ん……うぅ……N……?」

 起きろ、サブロウ……もう充分、寝たはずだ……

「うぅ……ここは……?」

 やっとこさ開眼へと至るサブロウ。
 視界には見覚えのない木造の天井が広がり、自分がベッドに寝ていたことに気付くと、次いで花の香りが鼻腔をくすぐる。

「知らない天上だ……」

 おめでとう、サブロウ。新世紀へようこそ。

「僕は……いったい……」

 そう言いながらサブロウは、辺りを見回す。

 室内は木造で、間取りもサブロウの家によく似ている。せいぜい違うところがあるとすれば、ワンルームかつ家具が少々変わっている事と、生けてある【昇華サブリメーション】の数が少ないことくらいだ。

 小綺麗でどこか女子を感じさせる室内に、違和感を覚え始めるサブロウ。
 ふと眠気眼のまま隣へ視線を移すと――

「スゥ……スゥ……スゥ……」

 そこには可愛らしい寝息を立てている一号くんの姿があった。
 布団から露わになる華奢な肩、そこから伸びる白く細い手が、サブロウの胸元に置かれている。

「え? 何? なんなの、この状況? なんで一号くんが横に……」

 ゆうべはお楽しみでしたね。

「いや……僕、お姫様を宿屋に連れ込んだ憶えないんだけど……。っていうか、大丈夫だよね? 何もされてないよね?」

 ……いや、わからん。

「な、なんだよ……わからないって……」

 一応、邪魔しちゃ悪いかと思って……見てない。

「何、変な気回してんだよ、気持ち悪い! と、取りあえず起きないと……!」

 サブロウは己が手を動かし、一号くんの手を退かそうと試みる……が、何故か妙に重いことに気付く。

 寝すぎていたため、身体が鈍っていた……勿論それも間違いではないだろう。
 だが、それよりも確たる違和感が、サブロウの目には映っていた。

「あれ……なんで僕の手……こんなにんだ……?」

 徐々に緊迫してくる鼓動。
 サブロウはすぐさま両手を使い、一号くんの手を退かす。

「――うわっ⁉」

 しかし、退かした反動からか、サブロウは勢いよく顔面からベッド横に落ちてしまう。

「イテテテテ……って、ん? な、なんだコレ……?」

 起き上がりつつ痛みの走る顔を摩っていると、更なる違和感が妙な感触として手の平に伝ってくる。

「なんで僕の顔……こんなプニプニなんだ……?」

 さすがにサブロウも四十手前。ようやく美容の一つにでも目覚めたか……と言えばそうでもない。信じられるのは素肌だけではないのだ。例えばそう……そこにある姿見とか。

 サブロウはドタドタと視界の隅に入った姿見へ走り出す。
 その時点で恐らく気付いていたことだろう。……自分の背が明らかにことに。

 だが、サブロウはその足を止めなかった。
 せめて自分の目で見るまでは信じない……いや、信じられないと言った方が正しいか。

 さあ、といったところで、そろそろご対面の時間。
 サブロウは姿見の前に立つと、己が姿を漸く確認する。

「な……なんで僕……七歳に戻ってるの……?」

 おめでとう、サブロウ。ニューヒーローの誕生だ。
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