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第三章

第101話 そりゃヤることヤったら、まあ……そうなるわな?②

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 頭を冷やすという意味では、井戸に飛び込む行動は最善と言えよう。何せ近くの小川から引いてきたこともあってか水温はキンキン……ありがたくもあり、犯罪的でもあったからだ。

 しかし、それは私視点だから言えること。愛する妻と娘からしたら身投げ同然の行為であり、当然引き上げられた後、こってり――

「大丈夫⁉ あなた⁉」
「パパっ! しんじゃやだよぉ! えぇぇええぇぇん!」

 怒られるかと思ったが……普通に心配された。

 リリスは決して咎めることをせず、サブロウの身体をタオルで拭き、リリンは自分が濡れることも厭わず、泣きながら父へと抱きついていた。

 身体は冷え切っていたが心は温かい……。そんな温度差のある状況にサブロウは――

「この状況、明らかにおかしい……。仮にドッキリだとしても意図が分からない。主人公としての自覚を持たせる為……? その線も考えれられるが、子供まで用意できるとは到底思えない。となると、もしや……」

 頭も冷え切っていた。
 さすがはサブロウ。幾つもの修羅場を潜り抜けてきたとあってか、己を律することなどお手の物だった

 サブロウは暫しの思索ののち、当てがついたのか突然立ち上がると、そのまま畑の間を抜けるように歩き始める。

「ちょっと、あなた⁉ どこ行くの? 朝ご飯は?」
「パパ……」

 サブロウは又もや妻子の制止を振り切り、何やらブツブツ呟きながら森の中へと消えていった。



 おい、サブロウ。

「やはり、カオスコードが……」

 おい……!

「だとしたら、あの人以外……」

 聞いてるのか、サブロウ⁉

「え? あ、あぁ……どうした、『N』?」

 私の声が届き、漸く立ち止まるサブロウ。

 いきなり飛び出して、どうしたはないだろう? 一体、どこへ行くつもりだ?

「兄貴のところさ」

 兄貴……? 何故、ブリッツのところへ?

「これがドッキリ……もしくはドッキリでないにしても、かなりの力が働いていることは間違いない。それこそ世界改変級の力がね。そんなことできるのは、世界広しと言えど兄貴しかいないだろう?」

 世界改変って……流石にぶっ飛びすぎじゃないか? まだ、幻惑魔術を疑った方が自然だぞ。

「だから、その幻惑魔術が世界級なのさ。……兄貴は」

 まあ、カオスコードを用いれば、それも可能かもしれんが……。だからって、それだけで決めつけるのはなぁ……

「理由はそれだけじゃない。君は気付かなかったか? ……家の中にあった違和感を」

 そんなもん違和感だらけだっただろ? あのリリスが嫁になってるし、子供まで出来てたんだ。それ以外あるか?

「実はもう一つあったんだ。いや、厳密には無かった。違和感はあったけど、有ったはずの物が無かったんだ。玄関横に備えられていた【昇華サブリメーション】……そのModel-Tが」

 Model-T……? Model-Tって確か別のと連結して、その場所に転移するヤツだったよな? 繋がってた場所はソフィアとブリッツの……あ!

「そう。何故か三種あるうちのModel-Tだけが、そこには無かったんだ。これは明らかにおかしい。寧ろヒントと言って差し支えない。恐らく僕が気付いても、すぐに来れないように排除しといただんだろうね」

 なるほど……。となると、ブリッツのところまで行く道中、まだ何か仕込んでる可能性はあるな。

「ああ。油断はできない。気を引き締めていこう」

 こうして我々は世界の中心である魔天籠、そのエリアを根城にするブリッツの下へと向かうのだが……結論から言おう。

 この推測は外れることになると……
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