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第1話 初めてのホラー体験!
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「隣に居るのは津賀子さんですよね?」
隣の個室から突然声をかけられ、私は心臓が止まりそうなほどに驚いた。
「お久しぶりです津賀子さん」
一方的に話しかけてくる人物。
人違いであってほしいけど、明らかに私の名前を言っている。知り合いなのかもしれないけど、声だけでは誰なのか見当がつかない。
「ど、どちら様?」
「久しぶりですものね。七歳の時、離れ離れ、夜の公園、どうです?」
七歳って、九年前か、記憶にない。
「ごめんなさい、名前を教えてもらっても」
「いいえ、津賀子さん。ご自分で思い出してください」
こぇー、おびただしい量の汗が噴き出してきた。心臓をバクバクさせ、誰なのかを記憶の中から懸命に探し出そうと頑張るけど……なぜに私はトイレでこんな怖い思いをしなければいけないのか。
「忘れてしまったんですね。私はそなたです」
誰だ、ソナタ? 名前を聞いても私の記憶の中からは、どんな顔だった人なのかも思い浮かばない……小学一年生の時に同じクラスで仲が良かったとかかな? 記憶に残らない程度の同級生なんて大勢いるんで、そのうちの一人なのだろう。
「津賀子さん、思い出せないようですね」
「ご、ごめん」
「仕方ありません、九年はあまりにも長いですものね。それにしてもビックリしましたよ、トイレに入りましたらお隣に津賀子さんが居たものですから。偶然ではなく、必然的な再会かもしれませんけどね」
「個室トイレに居るのに、なんで私って分かったの?」
「音に決まってるじゃないですか。津賀子さんがう○ちしてる時の音、昔と変わっていませんものね」
「う○ち言うな!」
そもそもう○ちする時の音で誰なのかが分かるってどうよ。
ここのトイレ 擬音装置の音消しは優秀で、そういった音は分かりづらいはずなのに……それよりも小学校時代のう○ちをしてる時の音を未だに覚えていることが恐怖でしかないんだけど。
「それでは津賀子さん、また今度」
「また会う機会があれば顔を見ながら話そうね」
ソナタさんがトイレから出て行くのを待とうとしたけど、待てど待てどもドアを開ける音も足音も聞こえない。私は恐怖に怯えながらそっと扉を開けて周囲を確認すると、すべてのトイレが使用されておらず誰もいなかった。まさか、幽霊。
ショッピングセンターへ買い物に来て、急な便意に襲われ猛ダッシュで駆け込んだトイレ。幽霊に遭遇するという怖い思いをし、早くこの場から立ち去りたい気持ちはある。だけど、私は手を洗わずにこの場を立ち去るというのは嫌だ。
「津賀子さん」
「わぁぁん」
警戒心を少しも緩めずに手を洗っていたけど、背後から名前を呼ばれただけで足ガクガクだ。
震えながら私は振り返った……そこには私と同じくらいの身長の女の人が笑顔で立っていた。見た目の雰囲気から年齢を予想しても高校生くらいであり、先程まで話していた声と同じなのでソナタさんで間違いないだろう。
「津賀子さん、どこの高校に通っているのかしら?」
「宇由高校」
「あら私も宇由高校なんです。同じ高校に通っていてもクラスが違うだけで気付かないことってありますものね。でも、明日からは安心してください。私は津賀子さんの教室に必ず顔を置きますので」
「顔を、置く、とは」
「津賀子さん、私の顔をよ~く見て思い出してください」
怯えながらも私は彼女の顔をよく見たけど、残念ながら顔を見ても記憶が蘇るようなことはなかった。ただ、小学一年生の夏休み直前に誰かと離れ離れになったような覚えがあるような無いような……。
「ごめん、顔見ても思い出せない」
「津賀子さん、本当に憎たらしいですわね」
「ご、ごめん」
「お構いなく」
会話のキャッチボールが続かないため、無言でお互い見つめ合う……なんて嫌な時間。ここのトイレは現在、私とソナタさん専用なのかというほどに誰もトイレを利用しに来ない。冷静さを装いながらも頭の中で泣き喚く私に対して、彼女は人差し指を口元に付け、優しく微笑みながら言った。
「津賀子さん、不思議ことなんですけど私の人差し指ってちょっと香るのです?」
「は?」
彼女はゆっくり人差し指を私の鼻先に近づけてきた。
「……て、くさ! 明らかにあんたの指はう〇ちに触れてますやん。手を洗った方が」
「そんなことより津賀子さん。秘密の方法を教えてあげましょうか」
「手を洗え」
次の瞬間、彼女の方から私に向かってぶわっと風が吹き、髪が乱される。
それは、驚いたり、心に響いたり、変化が起きそうな時になると突然と駆け抜けていく風。彼女との再会、良くも悪くもなにかが始まるのかもしれない。
「津賀子さん。怒ってますよね」
「だね、目の前でそんなことを急にされたら怒るわ」
ドライヤーの風量を強にして私に向け、髪を乱しにかかる目の前の女。定期的にカチカチと温冷操作を繰り返しながら、奴は私に話しかけている。
「そんな無駄なことやっている暇があるなら手を洗え、それと気になり出したから秘密の方法も教えなさい」
「いいえ、津賀子さん。秘密の方法は明日、学校で教えます」
結局、彼女は秘密の方法を教えてくれないどころか、手も洗わずにトイレから去って行った。
秘密の方法も気になったけど、彼女がいなくなってくれたことに安堵した。だけど、あの感じからすると明日から学校で……考えるだけで悪寒がする。
隣の個室から突然声をかけられ、私は心臓が止まりそうなほどに驚いた。
「お久しぶりです津賀子さん」
一方的に話しかけてくる人物。
人違いであってほしいけど、明らかに私の名前を言っている。知り合いなのかもしれないけど、声だけでは誰なのか見当がつかない。
「ど、どちら様?」
「久しぶりですものね。七歳の時、離れ離れ、夜の公園、どうです?」
七歳って、九年前か、記憶にない。
「ごめんなさい、名前を教えてもらっても」
「いいえ、津賀子さん。ご自分で思い出してください」
こぇー、おびただしい量の汗が噴き出してきた。心臓をバクバクさせ、誰なのかを記憶の中から懸命に探し出そうと頑張るけど……なぜに私はトイレでこんな怖い思いをしなければいけないのか。
「忘れてしまったんですね。私はそなたです」
誰だ、ソナタ? 名前を聞いても私の記憶の中からは、どんな顔だった人なのかも思い浮かばない……小学一年生の時に同じクラスで仲が良かったとかかな? 記憶に残らない程度の同級生なんて大勢いるんで、そのうちの一人なのだろう。
「津賀子さん、思い出せないようですね」
「ご、ごめん」
「仕方ありません、九年はあまりにも長いですものね。それにしてもビックリしましたよ、トイレに入りましたらお隣に津賀子さんが居たものですから。偶然ではなく、必然的な再会かもしれませんけどね」
「個室トイレに居るのに、なんで私って分かったの?」
「音に決まってるじゃないですか。津賀子さんがう○ちしてる時の音、昔と変わっていませんものね」
「う○ち言うな!」
そもそもう○ちする時の音で誰なのかが分かるってどうよ。
ここのトイレ 擬音装置の音消しは優秀で、そういった音は分かりづらいはずなのに……それよりも小学校時代のう○ちをしてる時の音を未だに覚えていることが恐怖でしかないんだけど。
「それでは津賀子さん、また今度」
「また会う機会があれば顔を見ながら話そうね」
ソナタさんがトイレから出て行くのを待とうとしたけど、待てど待てどもドアを開ける音も足音も聞こえない。私は恐怖に怯えながらそっと扉を開けて周囲を確認すると、すべてのトイレが使用されておらず誰もいなかった。まさか、幽霊。
ショッピングセンターへ買い物に来て、急な便意に襲われ猛ダッシュで駆け込んだトイレ。幽霊に遭遇するという怖い思いをし、早くこの場から立ち去りたい気持ちはある。だけど、私は手を洗わずにこの場を立ち去るというのは嫌だ。
「津賀子さん」
「わぁぁん」
警戒心を少しも緩めずに手を洗っていたけど、背後から名前を呼ばれただけで足ガクガクだ。
震えながら私は振り返った……そこには私と同じくらいの身長の女の人が笑顔で立っていた。見た目の雰囲気から年齢を予想しても高校生くらいであり、先程まで話していた声と同じなのでソナタさんで間違いないだろう。
「津賀子さん、どこの高校に通っているのかしら?」
「宇由高校」
「あら私も宇由高校なんです。同じ高校に通っていてもクラスが違うだけで気付かないことってありますものね。でも、明日からは安心してください。私は津賀子さんの教室に必ず顔を置きますので」
「顔を、置く、とは」
「津賀子さん、私の顔をよ~く見て思い出してください」
怯えながらも私は彼女の顔をよく見たけど、残念ながら顔を見ても記憶が蘇るようなことはなかった。ただ、小学一年生の夏休み直前に誰かと離れ離れになったような覚えがあるような無いような……。
「ごめん、顔見ても思い出せない」
「津賀子さん、本当に憎たらしいですわね」
「ご、ごめん」
「お構いなく」
会話のキャッチボールが続かないため、無言でお互い見つめ合う……なんて嫌な時間。ここのトイレは現在、私とソナタさん専用なのかというほどに誰もトイレを利用しに来ない。冷静さを装いながらも頭の中で泣き喚く私に対して、彼女は人差し指を口元に付け、優しく微笑みながら言った。
「津賀子さん、不思議ことなんですけど私の人差し指ってちょっと香るのです?」
「は?」
彼女はゆっくり人差し指を私の鼻先に近づけてきた。
「……て、くさ! 明らかにあんたの指はう〇ちに触れてますやん。手を洗った方が」
「そんなことより津賀子さん。秘密の方法を教えてあげましょうか」
「手を洗え」
次の瞬間、彼女の方から私に向かってぶわっと風が吹き、髪が乱される。
それは、驚いたり、心に響いたり、変化が起きそうな時になると突然と駆け抜けていく風。彼女との再会、良くも悪くもなにかが始まるのかもしれない。
「津賀子さん。怒ってますよね」
「だね、目の前でそんなことを急にされたら怒るわ」
ドライヤーの風量を強にして私に向け、髪を乱しにかかる目の前の女。定期的にカチカチと温冷操作を繰り返しながら、奴は私に話しかけている。
「そんな無駄なことやっている暇があるなら手を洗え、それと気になり出したから秘密の方法も教えなさい」
「いいえ、津賀子さん。秘密の方法は明日、学校で教えます」
結局、彼女は秘密の方法を教えてくれないどころか、手も洗わずにトイレから去って行った。
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