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第12話 藤 ヶ 谷 家
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授業を終え、ようやく家に帰れるぞーと、一日でもっとも元気になれる放課後に湖乃佳が唐突に言い放った。
「藤ヶ谷さんの家にお泊りに行ってもいいですか? 」
「なんだと? お泊り? 急だな湖乃佳」
「私って、お友達の家でお泊り経験がないもので、一度でいいからお泊りしたいんですよ」
「十佳の家で お泊りでもしたらどうだ」
「私と十佳は双子ですよ? 同じ家に住んでいるんですよ」
ボケたつもりだったが、真剣に受け止めてきた。
「なぜ、私の家なんだ」
「私、ものすごく仲が良いお友達は藤ヶ谷さんくらいですから」
断る理由も対して見つからないし問題は無いということで、湖乃佳を私の家にお招きする事にした。
「で? いつ頃 泊りに来るんだ」
「今日ですね」
「きょ、今日、実に急な奴だな」
「明日は休日なので、丁度いいかなと思いまして」
明日、家族でお出掛けだったら迷惑だがな。
一応、家に湖乃佳が泊ることを親に伝えておかなければ。場合によっては忙しいかもしれんし、少しくらい豪華な料理を用意してもらわないといけないしな。
結果は、大丈夫と返答されたので、私はそのまま湖乃佳と一緒に帰った。
湖乃佳は一旦 家に戻ってから親や十佳にお泊りのことを伝えたり、色々準備をしてから来ると思っていただけに一緒に帰ることになるとは思っていなかったよ。
「お邪魔します」
こうして湖乃佳は藤ヶ谷家に踏み入った。
私はすぐに2階にあるマイルームに案内した。
「まぁ、気楽に過ごしてくれ。何もない部屋だがな」
「……本当に何もない部屋なんですね? 」
「基本はベッド、机さえあれば学生生活は出来るだろ? 」
「パソコンとかテレビとか、本とかぬいぐるみとか一切ないんですね? 」
私は常に妄想をしているので何も必要ないんだよ。
「虎夏ー」
大きな叫び声が下の階から聞こえた。
声の主は私の母親である藤ヶ谷 夏美である。年齢、職業等々は秘密にしておく。同じように父親である藤ヶ谷 虎太郎の年齢、職業等々も内緒だ。
「ケーキと飲み物よ。あんたが十佳ちゃん以外にお友達を連れてくるんなんて珍しいのに、お泊りまでするんなんて……ひょっとしてコレ?」
「なんなんだ小指立てて、彼女ではなく友達だ。それに湖乃佳は十佳の双子の妹だからな」
「そうざんすか」
夏美からジュースとケーキがのせられたお盆を受け取ってから部屋へ戻った。
ケーキと言っていたが……シュークリームか。シュークリームならフォークは必要ない気がするが。
「すまなかったな」
「大丈夫ですよ。御構い無く……と、言うか、すみません。手ぶらで来ちゃって、次回は今回の分も含めてつまらない物を持って来ますね」
ご丁寧な挨拶までは良いが、2回分のつまらない物を持って来ますねって言われるのも何か嫌だな。正直、つまらない物ならわざわざ持ってくる必要もないぞ湖乃佳。
それにしても、お泊りに来る人間なんて私は経験したことが無いので、基本的に会話の弾まない時間が経過していく。こういう時に部屋に何もないと暇だな。1人で妄想する訳にもいかないし、困ったもんだ。
結局、夜ご飯になるまで、十佳に対しての不満を私達は語り合ってみたが思いのほか盛り上がった。こんなに心が晴れ晴れするなら定期的に湖乃佳とお泊り会をせねばな。
夜ご飯は虎太郎、夏美を含め、4人で食卓を囲んだ。
「あなた、最近浮気してますわよね?」
「何を言っているんだ? 俺がいつ素敵な女性と……俺は浮気をしてる」
私の友達だが一応は御客人である湖乃佳が居るというのに夫婦問題を食卓で話すとは。
……なんだと、虎太郎は夏美と私という家族がいながら浮気をしているというのか? もしもこのまま離婚という流れになってしまったら私はどっち側に。
「誰なの? 相手の女性は私が知っている御方なの?」
「……隣のナイスバストの奥さんだ」
「ちょっと待ちなさい。隣の奥さんって。何て恥ずかしい真似をしてくれるんですか! いやだ、恥ずかしくて近所に顔向けできない」
なんてことだ、昼ドラマ展開が我が家で起きていたことにショックを隠し切れん。
「もう駄目ね。あなた……離婚です」
「理解してくれんのなら離婚も仕方があるまい」
「虎夏、あなたはお母さんとお父さんのどっちについていくの?」
「私は原因を作った人間を擁護することは出来ん、虎太郎について行く」
「……えー、お、お父さんの方について行くんですか?」
重苦しい家族会話の中に1人静かにしていた藤ヶ谷家とは全く関係ない湖乃佳が大きな声をあげた。
「あ、あのー」
「ど、どうしたんだ湖乃佳」
「す、すみません。でも今、原因を作った人間を擁護 出来ないみたいなこと言っていたのに、お父さんの方について行んですね」
「虎夏……彼女は、ひょっとして妄想ティストじゃないのか?」
戸惑いを見せた表情で虎太郎が私に聞いてきた。それも仕方がないな。私達家族はみんな妄想ティスト。虎太郎は私が連れてきた友達も妄想できるのが普通みたいに思い込んでいたようだ。
「普通の人間だ」
「あら、ごめんなさいね。なんだか少し恥ずかしくなっちゃったわね」
「え? あ、も、妄想だったんですね。大丈夫です。気にせず妄想してください」
「そんなこと言われても、妄想ティストじゃない子がいるのに妄想するなんて申し訳ないわ」
本来なら家族みんなで妄想しながら食べる食事も今日だけは無しということもあり、その後は静まり返った空間の中で茶碗や箸、咀嚼音だけが食卓に響いていた。
食後、お風呂から上がって来た湖乃佳が部屋に入るなり話し掛けてきた。
「お父さんとお母さんは すごく仲が良いんですね。今もラブラブと言うかイチャイチャと言うか、それ以上と言うか」
「何? すまんかった」
「全然気にする必要ないですよ。仲が良くて羨ましいですね」
私の友達が来ているのにも関わらず、イチャイチャするとは……。思春期の娘なんだから友達の手前、恥じらいもあることを明日になったら教えてやらねば。
1つのベッドに私と湖乃佳は一緒に寝る。もともとサイズが大きいベッドなので十分なのだ。
消灯してからも、湖乃佳とは十佳の話をしていた。だが、途中で私は自然と涙が零れ落ちてきた。
「どうしたんですか?」
「虎太郎と夏美が離婚したら私は本当はどっちに着いて行きたいのかってな」
「……妄想なんですよね」
「私はあいつらの娘だからな、妄想か現実かは目や仕草、雰囲気で察知できるんだよ」
「……」
「どうした?」
「誰も止めないと、家での妄想は何時まで続くものなんですか?」
「飽きるまでじゃないのか?」
「……」
翌日、湖乃佳はお昼まで過ごし、帰り際に私に言った。
「お父さんとお母さんはとても素敵な方ですね。こんな幸せな家庭が羨ましいくらいです」
そんなにも私の家族は素敵なのか……まさか、湖乃佳と十佳の家は両親が離婚危機くらい機能していない家庭なのかもしれんな。近いうちに私も村主家にお泊りに行ってみなければ。
「ただ、家族みんな妄想していることには、正直言って引きました」
ひきっ……て? 今サラッと傷つくこと言われた気がするのは気のせいか? こんな時は正直者も困るもんだな。まあ、これが湖乃佳らしいというやつなのかもしれんな。
「藤ヶ谷さんの家にお泊りに行ってもいいですか? 」
「なんだと? お泊り? 急だな湖乃佳」
「私って、お友達の家でお泊り経験がないもので、一度でいいからお泊りしたいんですよ」
「十佳の家で お泊りでもしたらどうだ」
「私と十佳は双子ですよ? 同じ家に住んでいるんですよ」
ボケたつもりだったが、真剣に受け止めてきた。
「なぜ、私の家なんだ」
「私、ものすごく仲が良いお友達は藤ヶ谷さんくらいですから」
断る理由も対して見つからないし問題は無いということで、湖乃佳を私の家にお招きする事にした。
「で? いつ頃 泊りに来るんだ」
「今日ですね」
「きょ、今日、実に急な奴だな」
「明日は休日なので、丁度いいかなと思いまして」
明日、家族でお出掛けだったら迷惑だがな。
一応、家に湖乃佳が泊ることを親に伝えておかなければ。場合によっては忙しいかもしれんし、少しくらい豪華な料理を用意してもらわないといけないしな。
結果は、大丈夫と返答されたので、私はそのまま湖乃佳と一緒に帰った。
湖乃佳は一旦 家に戻ってから親や十佳にお泊りのことを伝えたり、色々準備をしてから来ると思っていただけに一緒に帰ることになるとは思っていなかったよ。
「お邪魔します」
こうして湖乃佳は藤ヶ谷家に踏み入った。
私はすぐに2階にあるマイルームに案内した。
「まぁ、気楽に過ごしてくれ。何もない部屋だがな」
「……本当に何もない部屋なんですね? 」
「基本はベッド、机さえあれば学生生活は出来るだろ? 」
「パソコンとかテレビとか、本とかぬいぐるみとか一切ないんですね? 」
私は常に妄想をしているので何も必要ないんだよ。
「虎夏ー」
大きな叫び声が下の階から聞こえた。
声の主は私の母親である藤ヶ谷 夏美である。年齢、職業等々は秘密にしておく。同じように父親である藤ヶ谷 虎太郎の年齢、職業等々も内緒だ。
「ケーキと飲み物よ。あんたが十佳ちゃん以外にお友達を連れてくるんなんて珍しいのに、お泊りまでするんなんて……ひょっとしてコレ?」
「なんなんだ小指立てて、彼女ではなく友達だ。それに湖乃佳は十佳の双子の妹だからな」
「そうざんすか」
夏美からジュースとケーキがのせられたお盆を受け取ってから部屋へ戻った。
ケーキと言っていたが……シュークリームか。シュークリームならフォークは必要ない気がするが。
「すまなかったな」
「大丈夫ですよ。御構い無く……と、言うか、すみません。手ぶらで来ちゃって、次回は今回の分も含めてつまらない物を持って来ますね」
ご丁寧な挨拶までは良いが、2回分のつまらない物を持って来ますねって言われるのも何か嫌だな。正直、つまらない物ならわざわざ持ってくる必要もないぞ湖乃佳。
それにしても、お泊りに来る人間なんて私は経験したことが無いので、基本的に会話の弾まない時間が経過していく。こういう時に部屋に何もないと暇だな。1人で妄想する訳にもいかないし、困ったもんだ。
結局、夜ご飯になるまで、十佳に対しての不満を私達は語り合ってみたが思いのほか盛り上がった。こんなに心が晴れ晴れするなら定期的に湖乃佳とお泊り会をせねばな。
夜ご飯は虎太郎、夏美を含め、4人で食卓を囲んだ。
「あなた、最近浮気してますわよね?」
「何を言っているんだ? 俺がいつ素敵な女性と……俺は浮気をしてる」
私の友達だが一応は御客人である湖乃佳が居るというのに夫婦問題を食卓で話すとは。
……なんだと、虎太郎は夏美と私という家族がいながら浮気をしているというのか? もしもこのまま離婚という流れになってしまったら私はどっち側に。
「誰なの? 相手の女性は私が知っている御方なの?」
「……隣のナイスバストの奥さんだ」
「ちょっと待ちなさい。隣の奥さんって。何て恥ずかしい真似をしてくれるんですか! いやだ、恥ずかしくて近所に顔向けできない」
なんてことだ、昼ドラマ展開が我が家で起きていたことにショックを隠し切れん。
「もう駄目ね。あなた……離婚です」
「理解してくれんのなら離婚も仕方があるまい」
「虎夏、あなたはお母さんとお父さんのどっちについていくの?」
「私は原因を作った人間を擁護することは出来ん、虎太郎について行く」
「……えー、お、お父さんの方について行くんですか?」
重苦しい家族会話の中に1人静かにしていた藤ヶ谷家とは全く関係ない湖乃佳が大きな声をあげた。
「あ、あのー」
「ど、どうしたんだ湖乃佳」
「す、すみません。でも今、原因を作った人間を擁護 出来ないみたいなこと言っていたのに、お父さんの方について行んですね」
「虎夏……彼女は、ひょっとして妄想ティストじゃないのか?」
戸惑いを見せた表情で虎太郎が私に聞いてきた。それも仕方がないな。私達家族はみんな妄想ティスト。虎太郎は私が連れてきた友達も妄想できるのが普通みたいに思い込んでいたようだ。
「普通の人間だ」
「あら、ごめんなさいね。なんだか少し恥ずかしくなっちゃったわね」
「え? あ、も、妄想だったんですね。大丈夫です。気にせず妄想してください」
「そんなこと言われても、妄想ティストじゃない子がいるのに妄想するなんて申し訳ないわ」
本来なら家族みんなで妄想しながら食べる食事も今日だけは無しということもあり、その後は静まり返った空間の中で茶碗や箸、咀嚼音だけが食卓に響いていた。
食後、お風呂から上がって来た湖乃佳が部屋に入るなり話し掛けてきた。
「お父さんとお母さんは すごく仲が良いんですね。今もラブラブと言うかイチャイチャと言うか、それ以上と言うか」
「何? すまんかった」
「全然気にする必要ないですよ。仲が良くて羨ましいですね」
私の友達が来ているのにも関わらず、イチャイチャするとは……。思春期の娘なんだから友達の手前、恥じらいもあることを明日になったら教えてやらねば。
1つのベッドに私と湖乃佳は一緒に寝る。もともとサイズが大きいベッドなので十分なのだ。
消灯してからも、湖乃佳とは十佳の話をしていた。だが、途中で私は自然と涙が零れ落ちてきた。
「どうしたんですか?」
「虎太郎と夏美が離婚したら私は本当はどっちに着いて行きたいのかってな」
「……妄想なんですよね」
「私はあいつらの娘だからな、妄想か現実かは目や仕草、雰囲気で察知できるんだよ」
「……」
「どうした?」
「誰も止めないと、家での妄想は何時まで続くものなんですか?」
「飽きるまでじゃないのか?」
「……」
翌日、湖乃佳はお昼まで過ごし、帰り際に私に言った。
「お父さんとお母さんはとても素敵な方ですね。こんな幸せな家庭が羨ましいくらいです」
そんなにも私の家族は素敵なのか……まさか、湖乃佳と十佳の家は両親が離婚危機くらい機能していない家庭なのかもしれんな。近いうちに私も村主家にお泊りに行ってみなければ。
「ただ、家族みんな妄想していることには、正直言って引きました」
ひきっ……て? 今サラッと傷つくこと言われた気がするのは気のせいか? こんな時は正直者も困るもんだな。まあ、これが湖乃佳らしいというやつなのかもしれんな。
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