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最終回 妄想は終わらない
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私の名前は藤ヶ谷虎夏、16歳ピチピチの女子高生。
日本での友達からはガヤと呼ばれていたが、ハワイに行けば呼び方も変わるかもしれんので、この呼ばれ方も聞き納めになってしまうかもしれない。なぜ、私がこんなことを考えはじめたかと言えば……。
今朝、朝食を食べている最中に深刻な表情の母、夏美が話しかけてきた。
「虎夏、お母さんは行かないわ」
「行かない?」
「虎夏はどうするの?」
虎太郎が隣の奥さんに手を出しているなんてやっぱり恥ずかしいし事だし、夏美としても悲しくてしょうがないのだろう。離婚してもおかしくわないな。
ある程度は予想していたことだから、思いのほかショックを受ける度合いが少なかった。ショックはショックだけどな。
「私は……虎太郎に着いて行く」
「そう、そう言うと思ってたわ」
「……夏美はどうするんだ」
「私は家に残ってボーイフレンドとラブラブな時間を過ごすことにするわ。楽しみ~」
……と言うことは私たちが家を出る方になるのか。虎太郎がどこへ行くかだが、仕事の関係もあるからそんなに遠くに離れることもないだろう、高校はそのまま通えそうだな。
と言うか、夏美にはボーイフレンドが存在していてのだな。私と虎太郎が家を出た後にラブラブ生活を堪能しようとしているとは……父も母も不倫をしていたという事か。
朝食を食べ終え、自分の部屋へ戻って制服に着替えてから少し妄想をしているところへ虎太郎がやって来た。
「虎夏、父さんと一緒に来るそうだな。ハワイだ」
「ハワイ?」
「父さんは身も心も疲れ果てた。ハワイなら養生するにも適しているしな」
「仕事は?」
「心身ともに疲弊しているのに仕事なんて出来るはずないに決まっているじゃないか」
「……」
「ハワイはいいぞ、海、海、海」
ハワイには海しかないのか?
「虎夏が父さんと一緒に来るのであれば、学校の友達にちゃんとお別れしておくんだぞ」
まさか、ハワイ。十佳や湖乃佳らと別れることになるはずなのに寂しさよりもワクワクしてきた。だってハワイだもんな~。
「ハワイではお前の新しいお母さんに会えるぞ」
「新しい母親って、隣の愛人はどうした?」
「何を言っているんだ。ハワイにいる母こそがお前の母になんだ。とにかくハワイを楽しむことだけを考えろ虎夏よ」
なんてことだ、私はハーフだったんだな。父の血が強めなのだろうな、まったくハーフとは思えなかったよ。
私が何か口にしても変わることでもないしな、とにかくハワイ生活を楽しむことにしよう。パイナップル、ココナッツ、泳ぎ放題、アロハ~、ロコモコ~。
私と虎太郎は数秒程度 踊り狂っていた。
ウキウキした気分で学校に行ったため、ハワイでボーイフレンドと楽しく過ごす妄想ばかりしていたので十佳たちに別れの挨拶をするタイミングがないまま放課後を迎えてしまった。
放課後になると早速私は十佳に親が離婚し、虎太郎と共にハワイへ行くことを告げた。
「ま、マジで?」
「今まで妄想で迷惑をかけてきたかもしれないが、明日には出発する」
「な、悲しくないのに涙が……」
なんてことだ、鬼、いやメドゥーサの十佳の瞳から涙が流れる光景を目にする日が訪れるなんて。それだけ私のことを親友として……。今まで一度も経験した事の無かった事、私と十佳は抱き合い泣きあった。親友って良いもんだな。
その後、目を赤くしたまま湖乃佳にも別れを告げに行った。
「離婚ですか? 妄想じゃなくて?」
なんなんだ? この冷めた感じは? 十佳とは正反対の反応に正直少しだけ驚いた。寧ろ十佳よりも湖乃佳の方が泣いたりしてくれそうだっただけに……そうか湖乃佳は寂しさのあまり冷たくしているのかもしれないな。
「随分、急なんですね?」
「あ、ああ」
「明日なんですよね?」
「明日だな」
「今、放課後なんですよ」
「放課後の方が話しやすかったからな」
「放課後ですよ?」
湖乃佳よ、いやに放課後、放課後としつこいな?
「放課後より前に教室で先生から転校する話がありますよね普通は」
「まあ、そうだな」
「藤ヶ谷さんほどの有名人がハワイへ行ってしまうのであれば、もっと教室中や学校中が騒ぎになると思うのですけど」
なんか有名人って言われると恥ずかしいものだな。
「転校の話などは虎太郎に全て任せてあるからな、私はお別れの挨拶をすればいいだけだと思ってたんだ」
「本当に妄想じゃないんですよね?」
「私が妄想と現実を間違えるはずないだろ」
「お父さんやお母さんも妄想ティストって言ってましたもので。現実と妄想が曖昧になっているってことありませんか?」
先ほどの十佳とは打って変わって、湖乃佳は名探偵張りに話してくるな。
だが、湖乃佳が言いたいことは分かる気がする。まさか私が虎太郎や夏美の妄想を見破れずに一人勝手に浮かれているという恐ろしい展開があるのか?
恐る恐る、虎太郎に電話をして確認してみることに。
「おー、どうしたんだ虎夏?」
「ああ、虎太郎。いきなりだが、本当に夏美と離婚するのか? ハワイに行くのか?」
「離婚? ハワイ? ……虎夏よ、父は仕事中なのだよ。妄想は家の中だけにしなさい……おい、まさかお前。くくく」
「……」
「そもそも父は隣の奥さんとのラブラブな展開をよく妄想はするが、母のことが一番好きなんだ。分かっているだろ虎夏よ? ハハハ」
虎太郎の笑い声が聞こえた途端、私は言葉を発することなく電話を切った。
今回の件で妄想が少しばかり他の人へも迷惑になるって事を知ったよ。迷惑な妄想をしやがって。
まさか、この私が現実と妄想の違いを区別できなかったとは……さすがは妄想ティストの先輩、先人たちだ。良い勉強になった。ほっとしたのも束の間、突然ぶるっと震えが走った。怖かった、ただ怖かったんだ。メドゥーサという存在に何をされるか分からないと気付いた途端。
湖乃佳の付き添いで十佳に事の次第を伝えたところ、予想外な反応にビックリした。
「転校しないってことでいいんだよね?」
「すまなかったな。本来妄想と現実の区別がしっかりできているはずの私が見事に虎太郎と夏美の妄想に飲み込まれていた」
「はぁ~よかった」
「???」
「あんたが居なくなったら、つまらないし。いつでもどこでも妄想するあんたの面倒見るのが私の役目なんだし」
目頭の奥が熱く、先程までと違う感情が溢れ止めどなく涙が溢れた。
私と十佳は湖乃佳の目の前で先程と同じように抱き合い大きな声で泣いた。まさに青春だー。
「だけどね、妄想内容が今回みたいに心配をかけるようなものなら、金輪際 妄想するのをやめなさいよ」
「……」
「私を心配させた責任はあんたの命程度では済ませないわよ、ガヤ」
心なしか、十佳の抱きしめ具合が少しずつ強くなっていっている。
骨のきしみ具合が半端ない、骨粗鬆症と診断されていたら折れている頃だろうな……と思ってたら、バキッとへし折られました。
私の妄想は多くの人に迷惑を掛けてしまうことが多々あるけど、妄想はしても妄想に飲み込まれるなを肝に銘じ、許してくれる人がいる限りそれに甘えて妄想し続けるだろう。
「十佳、湖乃佳よ。これからも私は妄想するからよろしく頼むなー」
「嫌だー」
「頼むー」
私と十佳は交互に同じことを繰り返し、それを苦笑いしながら見守る湖乃佳。
目的もなく、雲ひとつない空を見上げながら走る。怒れるメドゥーサの十佳や湖乃佳との追いかけっこ。妄想もいいけど、こいうのも楽しいなと思える。
傍で私を見ていてくれる存在が居るのであれば安心してこれからも妄想できる。
それが親友であれば尚更に。
私の妄想は終わらないのだ。
日本での友達からはガヤと呼ばれていたが、ハワイに行けば呼び方も変わるかもしれんので、この呼ばれ方も聞き納めになってしまうかもしれない。なぜ、私がこんなことを考えはじめたかと言えば……。
今朝、朝食を食べている最中に深刻な表情の母、夏美が話しかけてきた。
「虎夏、お母さんは行かないわ」
「行かない?」
「虎夏はどうするの?」
虎太郎が隣の奥さんに手を出しているなんてやっぱり恥ずかしいし事だし、夏美としても悲しくてしょうがないのだろう。離婚してもおかしくわないな。
ある程度は予想していたことだから、思いのほかショックを受ける度合いが少なかった。ショックはショックだけどな。
「私は……虎太郎に着いて行く」
「そう、そう言うと思ってたわ」
「……夏美はどうするんだ」
「私は家に残ってボーイフレンドとラブラブな時間を過ごすことにするわ。楽しみ~」
……と言うことは私たちが家を出る方になるのか。虎太郎がどこへ行くかだが、仕事の関係もあるからそんなに遠くに離れることもないだろう、高校はそのまま通えそうだな。
と言うか、夏美にはボーイフレンドが存在していてのだな。私と虎太郎が家を出た後にラブラブ生活を堪能しようとしているとは……父も母も不倫をしていたという事か。
朝食を食べ終え、自分の部屋へ戻って制服に着替えてから少し妄想をしているところへ虎太郎がやって来た。
「虎夏、父さんと一緒に来るそうだな。ハワイだ」
「ハワイ?」
「父さんは身も心も疲れ果てた。ハワイなら養生するにも適しているしな」
「仕事は?」
「心身ともに疲弊しているのに仕事なんて出来るはずないに決まっているじゃないか」
「……」
「ハワイはいいぞ、海、海、海」
ハワイには海しかないのか?
「虎夏が父さんと一緒に来るのであれば、学校の友達にちゃんとお別れしておくんだぞ」
まさか、ハワイ。十佳や湖乃佳らと別れることになるはずなのに寂しさよりもワクワクしてきた。だってハワイだもんな~。
「ハワイではお前の新しいお母さんに会えるぞ」
「新しい母親って、隣の愛人はどうした?」
「何を言っているんだ。ハワイにいる母こそがお前の母になんだ。とにかくハワイを楽しむことだけを考えろ虎夏よ」
なんてことだ、私はハーフだったんだな。父の血が強めなのだろうな、まったくハーフとは思えなかったよ。
私が何か口にしても変わることでもないしな、とにかくハワイ生活を楽しむことにしよう。パイナップル、ココナッツ、泳ぎ放題、アロハ~、ロコモコ~。
私と虎太郎は数秒程度 踊り狂っていた。
ウキウキした気分で学校に行ったため、ハワイでボーイフレンドと楽しく過ごす妄想ばかりしていたので十佳たちに別れの挨拶をするタイミングがないまま放課後を迎えてしまった。
放課後になると早速私は十佳に親が離婚し、虎太郎と共にハワイへ行くことを告げた。
「ま、マジで?」
「今まで妄想で迷惑をかけてきたかもしれないが、明日には出発する」
「な、悲しくないのに涙が……」
なんてことだ、鬼、いやメドゥーサの十佳の瞳から涙が流れる光景を目にする日が訪れるなんて。それだけ私のことを親友として……。今まで一度も経験した事の無かった事、私と十佳は抱き合い泣きあった。親友って良いもんだな。
その後、目を赤くしたまま湖乃佳にも別れを告げに行った。
「離婚ですか? 妄想じゃなくて?」
なんなんだ? この冷めた感じは? 十佳とは正反対の反応に正直少しだけ驚いた。寧ろ十佳よりも湖乃佳の方が泣いたりしてくれそうだっただけに……そうか湖乃佳は寂しさのあまり冷たくしているのかもしれないな。
「随分、急なんですね?」
「あ、ああ」
「明日なんですよね?」
「明日だな」
「今、放課後なんですよ」
「放課後の方が話しやすかったからな」
「放課後ですよ?」
湖乃佳よ、いやに放課後、放課後としつこいな?
「放課後より前に教室で先生から転校する話がありますよね普通は」
「まあ、そうだな」
「藤ヶ谷さんほどの有名人がハワイへ行ってしまうのであれば、もっと教室中や学校中が騒ぎになると思うのですけど」
なんか有名人って言われると恥ずかしいものだな。
「転校の話などは虎太郎に全て任せてあるからな、私はお別れの挨拶をすればいいだけだと思ってたんだ」
「本当に妄想じゃないんですよね?」
「私が妄想と現実を間違えるはずないだろ」
「お父さんやお母さんも妄想ティストって言ってましたもので。現実と妄想が曖昧になっているってことありませんか?」
先ほどの十佳とは打って変わって、湖乃佳は名探偵張りに話してくるな。
だが、湖乃佳が言いたいことは分かる気がする。まさか私が虎太郎や夏美の妄想を見破れずに一人勝手に浮かれているという恐ろしい展開があるのか?
恐る恐る、虎太郎に電話をして確認してみることに。
「おー、どうしたんだ虎夏?」
「ああ、虎太郎。いきなりだが、本当に夏美と離婚するのか? ハワイに行くのか?」
「離婚? ハワイ? ……虎夏よ、父は仕事中なのだよ。妄想は家の中だけにしなさい……おい、まさかお前。くくく」
「……」
「そもそも父は隣の奥さんとのラブラブな展開をよく妄想はするが、母のことが一番好きなんだ。分かっているだろ虎夏よ? ハハハ」
虎太郎の笑い声が聞こえた途端、私は言葉を発することなく電話を切った。
今回の件で妄想が少しばかり他の人へも迷惑になるって事を知ったよ。迷惑な妄想をしやがって。
まさか、この私が現実と妄想の違いを区別できなかったとは……さすがは妄想ティストの先輩、先人たちだ。良い勉強になった。ほっとしたのも束の間、突然ぶるっと震えが走った。怖かった、ただ怖かったんだ。メドゥーサという存在に何をされるか分からないと気付いた途端。
湖乃佳の付き添いで十佳に事の次第を伝えたところ、予想外な反応にビックリした。
「転校しないってことでいいんだよね?」
「すまなかったな。本来妄想と現実の区別がしっかりできているはずの私が見事に虎太郎と夏美の妄想に飲み込まれていた」
「はぁ~よかった」
「???」
「あんたが居なくなったら、つまらないし。いつでもどこでも妄想するあんたの面倒見るのが私の役目なんだし」
目頭の奥が熱く、先程までと違う感情が溢れ止めどなく涙が溢れた。
私と十佳は湖乃佳の目の前で先程と同じように抱き合い大きな声で泣いた。まさに青春だー。
「だけどね、妄想内容が今回みたいに心配をかけるようなものなら、金輪際 妄想するのをやめなさいよ」
「……」
「私を心配させた責任はあんたの命程度では済ませないわよ、ガヤ」
心なしか、十佳の抱きしめ具合が少しずつ強くなっていっている。
骨のきしみ具合が半端ない、骨粗鬆症と診断されていたら折れている頃だろうな……と思ってたら、バキッとへし折られました。
私の妄想は多くの人に迷惑を掛けてしまうことが多々あるけど、妄想はしても妄想に飲み込まれるなを肝に銘じ、許してくれる人がいる限りそれに甘えて妄想し続けるだろう。
「十佳、湖乃佳よ。これからも私は妄想するからよろしく頼むなー」
「嫌だー」
「頼むー」
私と十佳は交互に同じことを繰り返し、それを苦笑いしながら見守る湖乃佳。
目的もなく、雲ひとつない空を見上げながら走る。怒れるメドゥーサの十佳や湖乃佳との追いかけっこ。妄想もいいけど、こいうのも楽しいなと思える。
傍で私を見ていてくれる存在が居るのであれば安心してこれからも妄想できる。
それが親友であれば尚更に。
私の妄想は終わらないのだ。
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