妄想&空想 GIRL

圍 杉菜ひ

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第14話 誘 導 妄 想

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 白球を追い掛けて全力でプレーしている姿は素敵だと思います。
 あ、すみませんでした。私の名前は村主 湖乃佳16歳です。

 藤ヶ谷さんと一緒に帰る約束をしていたのですが、先生との禁断の恋がバレるからと言いながらどこかへ妄想しながら歩いていってしまったので……私は一人で甲子園を目標に練習している野球部の姿を眺めつつ藤ヶ谷さんが戻って来るのを待っているところです。

恵介けいすけ、コントロールしっかり」

「今のコース最高じゃん、どこが悪いんだよ康太こうた

 マウンド上で投手の恵介くんと捕手の康太くんが大きな声で言い合いをしています。
 実戦形式の紅白戦なので真剣な表情で話し合っている姿はカッコいい。
 こういった事の積み重ねをしていくことでお互いに信頼関係を築いていくんだよね。

「練習試合中に二人だけで話す場をあえて作ってるだけにも見えなくもないがな」

「……え?」

 背後から突然声がしたので振り返りましたが、後光が凄すぎでした。人がそこにいるというのは分かりましたが誰なのか判断することはできませんでした。

「よく見ろ」

 ……マウンド上で恵介くんはグラブで口元を隠しながら康太くんと話し始めています。確かに二人の距離が近づいた気がするけど。

「グラブで口元隠しながら喋っているのは読唇術で他の奴らに愛のささやきがバレないようにしているんだな」

「……本当に?」

 恵介くんの方は口元をグラブで隠しているから、康太くんの方を注視して見る。
 心なしか、康太くんの顔が紅潮しているように見える。本当に愛の言葉を恵介くんはこの練習中に囁いているの?

「例えば例えば、どんなセリフを言っているのでしょうか。気になって仕方がないです」

「集中すれば自ずと聞こえてくる。集中しろ(妄想しろ)」

 背後からの教えに私はマウンドの二人に集中(妄想)しました。

「康太、俺はいつもお前にストレートな気持ちをぶつけているだろ。コントロールが乱れるのはお前がバッターボックスの奴ばかり気にしているからだ」

「僕は捕手をやっているから、相手のことを嫌々でも見なきゃいけないんだよ。本来なら恵介を真っ直ぐ見続けたいよ」

 ……ボーイズラブが始まっていたんですね。

「それにしてもリスクが高くありませんか? どうせならもっと人のいない場所で密会してた方がいいような」

「マウンドで他の野球部員にバレるかバレないかのスリリングな恋を楽しんでいるんだろうな」

 流石です。若さ全開の大胆行動だったんですね。二人の関係が他の人にバレるんじゃないか私までドキドキしてきました。試合展開よりもドキドキするかもしれませんね。

「見て見ろ。また、捕手がマウンドに向かったぞ。これは何かやる気だぞ」

「何かをやるって? 何をですか」

 先ほどまでとは違い、恵介くんも康太くんもかなり顔を紅潮させながら顔を近づけて話しています。

 ……キス。私の脳裏に現れた言葉。
 練習試合とは言え、野球部みんなの視線はマウンド上の二人に比較的向けられているのに、このタイミングでのキスは絶対に無理。

「康太、これ以上 他の奴を見るな」

「でも捕手の役目だから……」

「なら、俺がお前をメロメロにしてやる。真っ直ぐ俺しか見えない状態にしてやるよ」

「恵介っ」

 恵介くんは康太くんにぐっと顔を近づけ、グラブで隠しつつも康太くんと熱いキスを交わしています。試合展開よりもエキサイティング。

「後方の野球部員の子はもしかしたら見えているけど、何も言わないのかもしれない。二人の関係は実はとっくにバレていてみんなに祝福されているのかもしれないですね」

「優しいな、湖乃佳の妄想は」

「え? 藤ヶ谷さんだったの」

「妄想の展開力は人それぞれだからな。もっと際どい妄想を私なら出来たが、今の湖乃佳ではこのくらいが妥当だろうな」

 やっぱり藤ヶ谷さんは妄想に関してはスゴイんだね。

「さて、湖乃佳よ。もう少し妄想してから帰るか?」

「ガヤ、あんた湖乃佳に変な妄想するように誘導してんじゃないわよー」

「うわー、メドゥーサ」

 いつの間にか、十佳も後ろにいたみたい。鬼のような形相で睨みつけて見事に藤ヶ谷さんを石化しましたとさ。


 ※野球部員である恵介くん、康太くんは決して今回の妄想によるような関係ではありません。そして野球関係者の皆様、申し訳ありません ―― by 湖乃佳
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