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甘い香り恋香る(前)
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「墨名ちゃん、今日は部活があるから集合してね、であります」
米野さんは当たり前のような感じで言ってるけど、今日は金曜日じゃないからね。
金曜日だけの活動と言っていたのに別の日でも活動するようになってきているんです、最近。
放課後、渋々と部室へ向かいました。
いつものように出迎えてくれる帆並ちゃんでしたが、素早く部室の隅に移動して私に手招きをしています。誰もいないんだからわざわざ隅に行く必要ないのに。
「どうしたんですか?」
「あのね、墨名ちゃんにやってもらいたいことがあるのよ」
「やってもらいたいこと?」
「美食謳歌部の鈴木さんの恋を叶えるのよ」
「は?」
「だから、鈴木さんの恋を叶えるの」
なぜ、私が鈴木先輩の恋を叶えなければいけないのかが分かりませんけど・・・・・・。
「いい、これも食は人を幸せにする部の活動の一環なのよ」
「あなたに部費を渡します。これで人を幸せにしてきなさい」
手に握らされたのは五百円玉。これで幸せを運べというのですね。それも今から。明日とかじゃなくて、今から。考えたり迷っていると黄昏時を過ぎ、暗くなって帰りが危なくなるというのに今からそんな大変そうな活動をしなければいけないんですね。
大体、美食謳歌部とはどちらが廃部するかしないかで対決しているはずのライバル関係のはずなのに全然ライバルらしくないよね。毎回のように同じことを愚痴ってしまってゴメンねの一言に尽きる。一緒にお泊りしたり、楽しく会話したり、遂には恋の手助けをして幸せにしてあげるという。これはVIP待遇だね。
「分かりました。取りあえず叶えてきます」
帆並ちゃんや米野さんに対しては、もう抵抗するだけ無駄なので素直に言うことを聞くのが一番いいんですよ。
「墨名ちゃん、条件があるからよく聞いて。絶対に食べ物で人を幸せにするんですよ」
「・・・・・・」
私は告白の流れ、タイミング等、そして使用する食べ物をイメージし、そこから最短で購入できる店を脳内で検索。スマホを操作するよりも早く、この一連の作業時間は見事十秒ジャスト。さらにそこから行動予定表を作り準備完了。急がねば。
私は百小鉢高校の規則を破らない。生徒であれば規則正しく生きる。
私は廊下を走らない。だけどタイムロスはしたくない。なんでそんなに時間に拘るのかと言えば暗くなるからじゃなくて、リアルタイムで見たい番組があるからに決まっているからじゃないですか。この理由は定番中の定番だからね。
廊下を走らずに駆け抜ける方法は、規則なんて関係ないと言って走っている人物に頼んでおんぶに抱っこだ。
学校から出てしまえば、猛ダッシュで最寄りのケーキ屋さんへ向かうだけ。
ふぅ、近くの洋菓子店ミルティーユで苺のショートケーキを購入するまでは予定通り。
それにしても、なんて美味しそうな香りを放っているんだろう。たった一個しかないのに箱からこれでもかこれでもかと香りを放出しまくりじゃないですか。
それにしても一個か、普通は六号サイズを一人で食べるものだから物足りないかもしれない・・・・・・だけど予算が無いから仕方ないよね。
ミルティーユの苺のショートケーキは生クリームの甘さが控えめで、ミルク感が濃い。ふわふわのスポンジ、三層仕立てで間にはたっぷりの生クリームがサンドされちゃっています。また、桃やパインもゴロゴロとサンドされているので食べ応えも十分。大粒な苺も食べる者へ存在感を示している。
いけない、いけない。これ以上は苺のショートケーキのことを考えていると涎の洪水に飲み込まれてしまう。
後は鈴木先輩が告白するための・・・・・・。
あれ、誰が、誰に? 鈴木先輩の恋を叶えるためにとは聞いていたけど、そもそも鈴木先輩が告白するのか、されるのか、どっちなんだろう?
「墨名ちゃん」
迷っていた私の元へ満身創痍の米野さんが最後の力を振り絞りながら人差し指を屋上へ指しました。
なぜ満身創痍なのか・・・・・・触れちゃいけ無い気がするので触れないことにしよう。
「屋上だね」
「幸運を祈ります・・・・・・パタリンコ」
どうやら死んだふりをしていますので、それなりの言葉を置いて屋上へ向かうことにします。
「米野さん、あなたの死を無駄にはしないからね」
「最後に下の名前で読んで欲しい」
「百々良さん」
「帆並ちゃんみたいに、ちゃん付けして欲しい」
面倒です。かなり面倒です。無駄な時間が経過していく。
「百々良ちゃん」
「ちが、最初から初めて欲しい」
「はいはい、百々良ちゃん、あなたの死を無駄にはしないからね」
「はいはいって最初言っちゃだダメ。リテイク、プリーズ」
「・・・・・・」
一向に眠りについてくれない米野さんに足止めを食らい、私はどんどん疲弊していくよ。
なぜこんなに執拗いのか?
そうか、本当の狙いは私の手に持っている苺のショートケーキ? 香りにつられて来たんだ。これは茶番劇なんかじゃない、一歩間違えば本当にケーキを食べられてしまうかもしれない状況でピンチ的な展開だったよ。
その後、ゾンビ化した米野さんに対して犠牲を払う結果になりましたがなんとか退けた。
ゾンビ化した米野さんとの死闘は予想以上に深いダメージを負いました。疲弊した私の足取りは重く、階段を一段一段と進むだけでも大変。もう、明日でいいんじゃないかな?
折れそうな心になりながらも気合で辿り着いた屋上の扉を開けると、そこには美食謳歌部の鈴木先輩、そして知らない男子生徒がいました。
鈴木先輩は普段と違う印象がした。それは夕陽がそうさせているのか私には分からなかったけど、恋する女の子として私の瞳の中に映りました。
甘~い香りは恋の香り。
もしも、好きになった人がいたらあなたは告白する?
それとも告白されるのを待つ?
これってまるで苺のショートケーキみたいだよね。
最初に苺を食べちゃう派?
それとも最後に残しちゃう派?
米野さんは当たり前のような感じで言ってるけど、今日は金曜日じゃないからね。
金曜日だけの活動と言っていたのに別の日でも活動するようになってきているんです、最近。
放課後、渋々と部室へ向かいました。
いつものように出迎えてくれる帆並ちゃんでしたが、素早く部室の隅に移動して私に手招きをしています。誰もいないんだからわざわざ隅に行く必要ないのに。
「どうしたんですか?」
「あのね、墨名ちゃんにやってもらいたいことがあるのよ」
「やってもらいたいこと?」
「美食謳歌部の鈴木さんの恋を叶えるのよ」
「は?」
「だから、鈴木さんの恋を叶えるの」
なぜ、私が鈴木先輩の恋を叶えなければいけないのかが分かりませんけど・・・・・・。
「いい、これも食は人を幸せにする部の活動の一環なのよ」
「あなたに部費を渡します。これで人を幸せにしてきなさい」
手に握らされたのは五百円玉。これで幸せを運べというのですね。それも今から。明日とかじゃなくて、今から。考えたり迷っていると黄昏時を過ぎ、暗くなって帰りが危なくなるというのに今からそんな大変そうな活動をしなければいけないんですね。
大体、美食謳歌部とはどちらが廃部するかしないかで対決しているはずのライバル関係のはずなのに全然ライバルらしくないよね。毎回のように同じことを愚痴ってしまってゴメンねの一言に尽きる。一緒にお泊りしたり、楽しく会話したり、遂には恋の手助けをして幸せにしてあげるという。これはVIP待遇だね。
「分かりました。取りあえず叶えてきます」
帆並ちゃんや米野さんに対しては、もう抵抗するだけ無駄なので素直に言うことを聞くのが一番いいんですよ。
「墨名ちゃん、条件があるからよく聞いて。絶対に食べ物で人を幸せにするんですよ」
「・・・・・・」
私は告白の流れ、タイミング等、そして使用する食べ物をイメージし、そこから最短で購入できる店を脳内で検索。スマホを操作するよりも早く、この一連の作業時間は見事十秒ジャスト。さらにそこから行動予定表を作り準備完了。急がねば。
私は百小鉢高校の規則を破らない。生徒であれば規則正しく生きる。
私は廊下を走らない。だけどタイムロスはしたくない。なんでそんなに時間に拘るのかと言えば暗くなるからじゃなくて、リアルタイムで見たい番組があるからに決まっているからじゃないですか。この理由は定番中の定番だからね。
廊下を走らずに駆け抜ける方法は、規則なんて関係ないと言って走っている人物に頼んでおんぶに抱っこだ。
学校から出てしまえば、猛ダッシュで最寄りのケーキ屋さんへ向かうだけ。
ふぅ、近くの洋菓子店ミルティーユで苺のショートケーキを購入するまでは予定通り。
それにしても、なんて美味しそうな香りを放っているんだろう。たった一個しかないのに箱からこれでもかこれでもかと香りを放出しまくりじゃないですか。
それにしても一個か、普通は六号サイズを一人で食べるものだから物足りないかもしれない・・・・・・だけど予算が無いから仕方ないよね。
ミルティーユの苺のショートケーキは生クリームの甘さが控えめで、ミルク感が濃い。ふわふわのスポンジ、三層仕立てで間にはたっぷりの生クリームがサンドされちゃっています。また、桃やパインもゴロゴロとサンドされているので食べ応えも十分。大粒な苺も食べる者へ存在感を示している。
いけない、いけない。これ以上は苺のショートケーキのことを考えていると涎の洪水に飲み込まれてしまう。
後は鈴木先輩が告白するための・・・・・・。
あれ、誰が、誰に? 鈴木先輩の恋を叶えるためにとは聞いていたけど、そもそも鈴木先輩が告白するのか、されるのか、どっちなんだろう?
「墨名ちゃん」
迷っていた私の元へ満身創痍の米野さんが最後の力を振り絞りながら人差し指を屋上へ指しました。
なぜ満身創痍なのか・・・・・・触れちゃいけ無い気がするので触れないことにしよう。
「屋上だね」
「幸運を祈ります・・・・・・パタリンコ」
どうやら死んだふりをしていますので、それなりの言葉を置いて屋上へ向かうことにします。
「米野さん、あなたの死を無駄にはしないからね」
「最後に下の名前で読んで欲しい」
「百々良さん」
「帆並ちゃんみたいに、ちゃん付けして欲しい」
面倒です。かなり面倒です。無駄な時間が経過していく。
「百々良ちゃん」
「ちが、最初から初めて欲しい」
「はいはい、百々良ちゃん、あなたの死を無駄にはしないからね」
「はいはいって最初言っちゃだダメ。リテイク、プリーズ」
「・・・・・・」
一向に眠りについてくれない米野さんに足止めを食らい、私はどんどん疲弊していくよ。
なぜこんなに執拗いのか?
そうか、本当の狙いは私の手に持っている苺のショートケーキ? 香りにつられて来たんだ。これは茶番劇なんかじゃない、一歩間違えば本当にケーキを食べられてしまうかもしれない状況でピンチ的な展開だったよ。
その後、ゾンビ化した米野さんに対して犠牲を払う結果になりましたがなんとか退けた。
ゾンビ化した米野さんとの死闘は予想以上に深いダメージを負いました。疲弊した私の足取りは重く、階段を一段一段と進むだけでも大変。もう、明日でいいんじゃないかな?
折れそうな心になりながらも気合で辿り着いた屋上の扉を開けると、そこには美食謳歌部の鈴木先輩、そして知らない男子生徒がいました。
鈴木先輩は普段と違う印象がした。それは夕陽がそうさせているのか私には分からなかったけど、恋する女の子として私の瞳の中に映りました。
甘~い香りは恋の香り。
もしも、好きになった人がいたらあなたは告白する?
それとも告白されるのを待つ?
これってまるで苺のショートケーキみたいだよね。
最初に苺を食べちゃう派?
それとも最後に残しちゃう派?
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