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終わりだけど、始まりだね!
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食は人を幸せにする部、美食謳歌部は共に廃部。
その後、私たちは特に新たな部へ入部することはなかった。
短い期間だったけど、充実した時間を過したので良い思い出も作れたかなって思える。
この部活に入らなければ出会うことが無かった人たちと出会えたことにも感謝です。
学校での部活動をしなくなった代わりに、土曜日や日曜日など一月に二回くらいは御堂先輩、鈴木先輩、幸羅ちゃん、米野さんと一緒にグルメ巡りをしたり、料理を作ったりして充実した日々を過ごしていった。その日々は先輩たちが卒業した後、更には私と米野さんが高校を卒業した後も続いていった。
そして、月日は流れ――
多くの人が行き交う街の中、決して目立つとは言えないような地味で小さな洋食店が私の視界に入る。洋食店とは思えない暗くて地味な外見だけど、店名に洋食レストランと書かれている看板のおかげで洋食店と判断できるらしい。
「はぁ~人通りはいいのにまったく流行っていないね、このお店は」
仕方がないと頷けるのは、以前はラーメン屋さんが入っていた貸店舗だけど老朽化していることもあり家賃が安いだけで飛びつき、改装代もケチっているため洋食店らしさゼロ。一部メニューを入り口付近の窓に貼っているけど、洋食とは思えないメニューも結構あり、結局はなに料理がメインの店なんだろうって思う。
お店の雰囲気やパンケーキとかお洒落なカフェとかじゃないから若い女性には興味を惹かれないのも分からないことも無い。だけど、サラリーマンとか好きじゃない、古き良き洋食屋って? 愚痴を心の中で吐き出しながらお店のドアを開けていた。
カランカランと美しいドアベルの音が狭い店内に鳴り響く。
ベルの音の響きは一級品だけど、窓ガラスがくすんでいるのも痛いし、入口から奥へ細長い店内。ラーメン屋の後を改装せずにそのまま使用しているため店内はカウンター席のみでファミリー層にはあまり向きそうにない。それに八人しか座れないのもね。
万が一、体格の良い人が椅子に座れば出入りするのに壁に背中をくっつけながら歩かねばならないほどの狭さ。
店内にはすでに三人のお客さんがいて楽しそうに会話をしている。小さいお店は新参者には入りにくい雰囲気があるから私も苦手なんだよね・・・・・・原因はこれか?
「おかえり」
顔馴染みである三人のお客さんは笑顔で私を迎え入れてくれた。
「墨名ちゃん、のんびりしてる暇ないよ。お客さんいるし」
日々のお客さまは決して多くはないので、お客さまが店内に居ること自体が珍しすぎて気付かなかった。一番奥で俯いて座る若い女性。
私は慌ててエプロンを付けて若い女性に笑顔で声を掛けた。
「お食事にします? それともご相談にのりましょうか?」
「本当に相談にのってくれるんだ・・・・・・いえ、メニューをお願いします」
「ごめんなさい。出すの忘れてたね」
女性のお客さまにお水、おしぼり、メニューを渡して一旦その場を離れ、楽しく会話を続ける三人組の方へ移動する。
「樹季、人を幸せにって言っていますけど、そろそろあなたの恋の方はどうなの?」
「いやいや、雲英先輩。私にその話は時期尚早ですよ」
今はまだ、恋をするより食べること、人を幸せにすることが生き甲斐なのです。恋にうつつを抜かすなんてとんでもないことです。
「ところでみんな、お店に来た以上はなにか食べていってくれるよね? みたらし団子どう?」
「みたらし団子・・・・・・どうせ無料じゃないし、いらない。でも無料なら食べるし?」
「米野さん、なんで無料であなたにみたらし団子を提供しなきゃならないの」
「墨名ちゃん、相変わらずケチ」
私はケチじゃない。無料であげることが出来ない訳じゃない、でも言葉に腹が立つことってあるよね。
「まあまあ、落ち着きなさい二人とも。全員、最後の晩餐ランチをいただきますわ」
最後の晩餐ランチは、おにぎり、クリームコロッケ、お味噌汁、ポテトサラダが付いて・・・・・・なんとお得なんでしょう。ワンコイン価格の五百円。
食べもので人を幸せにしたいと思った日・・・・・・あれから九年が経ち、家族や固い絆で結ばれた仲間たちに支えてもらいながら頑張ってお店を出すことまで出来た。
たった数ヶ月しか活動しなかった部活だったけど、その部活が切っ掛けで私の人生は大きく動いたんだ。本当に世の中って不思議だね。
今、私のお店に食べに来てくれる人が、私の作った料理で幸せになってくれることや成すべきことを見つけてくれることは私にとっての幸せ。
今の私の握るおにぎりは――
「相変わらず成長のない、ぼっそぼそなおにぎり」
余計なお世話だよ百々良。
「いい加減、最後の晩餐ランチのおにぎりは止めて普通にご飯を付ければいいと思いますけど」
雲英先輩、それでは私たちの思い出が・・・・・・。
「逆にこれでお金を取る方がどうかと思いますよね」
幸那先輩、その心無い言葉は将来ひねくれた発言が出来るようにするための胎児教育ですか?
未だにまともな三角形のおにぎりが握れないという不思議な出来事が私には起きていますが、おにぎりが上手に握れるようになるよりも先に私たちの絆は固く結ばれていたので結果的にはめでたしめでたし展開でした~。
「・・・・・・」
「お客さま、随分と長い間考え込んでメニューを選んでいますね。もしよかったらあなたのお話を聞かせてもらえませんか? 楽しい事、悲しい事、或いは悩み事。そうすればあなたを幸せにするための料理を作る参考になるかもしれませんから」
「本当に、本当に私なんかでも幸せになれるのでしょうか?」
「もちろんですよ、幸せになりたいから来たんですよね」
人気は無いお店だけど、悩みを抱えた人が自然と訪れる。
料理を食べた人は入った時と帰る時とで表情が全然違う。
いつの間にか常連さんとして訪れる人も少なくはないそうです・・・・・・自分で言うのも何ですけど。
もし、あなたがお困りなら食べに来てみませんか?
食で人を幸せにする洋食レストランへ。
その後、私たちは特に新たな部へ入部することはなかった。
短い期間だったけど、充実した時間を過したので良い思い出も作れたかなって思える。
この部活に入らなければ出会うことが無かった人たちと出会えたことにも感謝です。
学校での部活動をしなくなった代わりに、土曜日や日曜日など一月に二回くらいは御堂先輩、鈴木先輩、幸羅ちゃん、米野さんと一緒にグルメ巡りをしたり、料理を作ったりして充実した日々を過ごしていった。その日々は先輩たちが卒業した後、更には私と米野さんが高校を卒業した後も続いていった。
そして、月日は流れ――
多くの人が行き交う街の中、決して目立つとは言えないような地味で小さな洋食店が私の視界に入る。洋食店とは思えない暗くて地味な外見だけど、店名に洋食レストランと書かれている看板のおかげで洋食店と判断できるらしい。
「はぁ~人通りはいいのにまったく流行っていないね、このお店は」
仕方がないと頷けるのは、以前はラーメン屋さんが入っていた貸店舗だけど老朽化していることもあり家賃が安いだけで飛びつき、改装代もケチっているため洋食店らしさゼロ。一部メニューを入り口付近の窓に貼っているけど、洋食とは思えないメニューも結構あり、結局はなに料理がメインの店なんだろうって思う。
お店の雰囲気やパンケーキとかお洒落なカフェとかじゃないから若い女性には興味を惹かれないのも分からないことも無い。だけど、サラリーマンとか好きじゃない、古き良き洋食屋って? 愚痴を心の中で吐き出しながらお店のドアを開けていた。
カランカランと美しいドアベルの音が狭い店内に鳴り響く。
ベルの音の響きは一級品だけど、窓ガラスがくすんでいるのも痛いし、入口から奥へ細長い店内。ラーメン屋の後を改装せずにそのまま使用しているため店内はカウンター席のみでファミリー層にはあまり向きそうにない。それに八人しか座れないのもね。
万が一、体格の良い人が椅子に座れば出入りするのに壁に背中をくっつけながら歩かねばならないほどの狭さ。
店内にはすでに三人のお客さんがいて楽しそうに会話をしている。小さいお店は新参者には入りにくい雰囲気があるから私も苦手なんだよね・・・・・・原因はこれか?
「おかえり」
顔馴染みである三人のお客さんは笑顔で私を迎え入れてくれた。
「墨名ちゃん、のんびりしてる暇ないよ。お客さんいるし」
日々のお客さまは決して多くはないので、お客さまが店内に居ること自体が珍しすぎて気付かなかった。一番奥で俯いて座る若い女性。
私は慌ててエプロンを付けて若い女性に笑顔で声を掛けた。
「お食事にします? それともご相談にのりましょうか?」
「本当に相談にのってくれるんだ・・・・・・いえ、メニューをお願いします」
「ごめんなさい。出すの忘れてたね」
女性のお客さまにお水、おしぼり、メニューを渡して一旦その場を離れ、楽しく会話を続ける三人組の方へ移動する。
「樹季、人を幸せにって言っていますけど、そろそろあなたの恋の方はどうなの?」
「いやいや、雲英先輩。私にその話は時期尚早ですよ」
今はまだ、恋をするより食べること、人を幸せにすることが生き甲斐なのです。恋にうつつを抜かすなんてとんでもないことです。
「ところでみんな、お店に来た以上はなにか食べていってくれるよね? みたらし団子どう?」
「みたらし団子・・・・・・どうせ無料じゃないし、いらない。でも無料なら食べるし?」
「米野さん、なんで無料であなたにみたらし団子を提供しなきゃならないの」
「墨名ちゃん、相変わらずケチ」
私はケチじゃない。無料であげることが出来ない訳じゃない、でも言葉に腹が立つことってあるよね。
「まあまあ、落ち着きなさい二人とも。全員、最後の晩餐ランチをいただきますわ」
最後の晩餐ランチは、おにぎり、クリームコロッケ、お味噌汁、ポテトサラダが付いて・・・・・・なんとお得なんでしょう。ワンコイン価格の五百円。
食べもので人を幸せにしたいと思った日・・・・・・あれから九年が経ち、家族や固い絆で結ばれた仲間たちに支えてもらいながら頑張ってお店を出すことまで出来た。
たった数ヶ月しか活動しなかった部活だったけど、その部活が切っ掛けで私の人生は大きく動いたんだ。本当に世の中って不思議だね。
今、私のお店に食べに来てくれる人が、私の作った料理で幸せになってくれることや成すべきことを見つけてくれることは私にとっての幸せ。
今の私の握るおにぎりは――
「相変わらず成長のない、ぼっそぼそなおにぎり」
余計なお世話だよ百々良。
「いい加減、最後の晩餐ランチのおにぎりは止めて普通にご飯を付ければいいと思いますけど」
雲英先輩、それでは私たちの思い出が・・・・・・。
「逆にこれでお金を取る方がどうかと思いますよね」
幸那先輩、その心無い言葉は将来ひねくれた発言が出来るようにするための胎児教育ですか?
未だにまともな三角形のおにぎりが握れないという不思議な出来事が私には起きていますが、おにぎりが上手に握れるようになるよりも先に私たちの絆は固く結ばれていたので結果的にはめでたしめでたし展開でした~。
「・・・・・・」
「お客さま、随分と長い間考え込んでメニューを選んでいますね。もしよかったらあなたのお話を聞かせてもらえませんか? 楽しい事、悲しい事、或いは悩み事。そうすればあなたを幸せにするための料理を作る参考になるかもしれませんから」
「本当に、本当に私なんかでも幸せになれるのでしょうか?」
「もちろんですよ、幸せになりたいから来たんですよね」
人気は無いお店だけど、悩みを抱えた人が自然と訪れる。
料理を食べた人は入った時と帰る時とで表情が全然違う。
いつの間にか常連さんとして訪れる人も少なくはないそうです・・・・・・自分で言うのも何ですけど。
もし、あなたがお困りなら食べに来てみませんか?
食で人を幸せにする洋食レストランへ。
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