僕らが吐いた息がいつか世界の風になるように

綾瀬雲母

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明日より世界は

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まだ外は薄暗い
陽の光が地表に届かないこの時間は寒さが一層増す気がした。夜明け前町はまだ眠りについていて誰もが眠りという孤独な幸福を享受している。私は八畳あまりのこの部屋で今も一人眠れずにいる。何かするでもなくただ冴えてしまった目で何を映すでもなく、わずかに明るくなりだした世界の変化を見ていた。
考え事は時間を忘れさせてくれたが悩みが増えるほど心に余裕が無くなっていくちっぽけで小心な自分が虚しかった。そして考えることに疲れて眠り、目覚めた時、自分が考えることに浪費していた時間が無駄なものだと思い知る。また今日も私は昨日の自分と一年前の自分と何一つ変わらない怠惰で惰性的な馬鹿な生き方をしてしまっていると自嘲したりする。
いつからだろう
自分が空っぽに見えるようになったのは
いつからだろう
生きて行くのが面倒になったのは
いつからだろう
私が死に場所を探していると自覚したのは
朝起きて顔を洗う、鏡に映る無表情の顔はいつだって歪な形に思えた。地下鉄に乗って大学までの車内で断線してしまったイヤフォンコードを強く握りしめていた。なんだか虚しい毎日が私の世界では連続している気がした。私が変われば、世界が変わるのか。世界が変わる時私が変わるのか。どちらでもいいから私は変わりたいと思った。閉鎖された町で何かを強制させられているわけでもない。生き方を強制させられている訳でもない。歩き方も間違い方も自由なはずだった。なのに私は足が竦んだ。何かに見られている気がして後ろ指指される自分を頭の中で反芻していると何かに手を出す直前でその気は失せてしまっていた。
生きにくさは多分ここに在るんだろう。卑屈で臆病だから私は前を直視できない、しようとしない。わざわざ鏡越しに反射させながらしか見ようとしない世界にはどこか間違ったものが映し出される。見えなくていい他人の心を感じ、見たかった世界を隠してしまう。
広すぎるはずの世界に窮屈さを感じてしまう。顔を上げるだけで目を前に上げるだけで世界は変わっていくのだろうか。私は変わっていけるだろうか。
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