始まらないラブストーリー

樫和 蓮

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続々・幼馴染との始まりそうな恋

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「まさかまた忘れてない?」
千紗は亜依ににじり寄る。
「え?」
亜依はきょとんと千紗を見上げる。
「いやいや私もうっかりしてたけどさ?」
「え、何を?宿題はもう終わってるけど」
「いやいやいや!パンケーキ!!!」
亜依がピアノ教室が同じの幼馴染と行くと言っていたパンケーキの話である。
「あ」
「あって!ほらーまた忘れてた!」
千紗が大げさにため息をつく。
「ごめんごめん、あまりにも何もなくて忘れてたわ」
「何もないってそんなことある?」
「いやほんとに何もなかってん」
「佑人くんそれはよくないわー」
「たぶん秒で説明できる」
「詳しく」

◆◆◆

「ここ新しいとこやんなー、楽しみ!」
佑人は満面の笑みを向けてくる。
「うん、ここ、ちょっと気になっててん。あ、ほら、あの分厚いやつ」
お店の前の看板には、分厚い三段重ねのパンケーキ。
「おいしそー!入ろ入ろ」

お店に入り、それぞれ看板メニューであるパンケーキと、佑人は紅茶、亜依はカフェオレを注文する。
「最近学校どうなん?」
「んー、部活も行ってへんからなー。いっつも友だちと放課後喋ってるんは楽しいかなー」
「そうなんや、俺は部活ばっかりやわ」
「大変なん?部活。もう三年生引退してるんやっけ」
佑人は小学校のときからバスケ一筋である。
「そうやねん、聞いてや、俺キャプテンやねん」
「え、すごいやん」
佑人はへへへ、と頭をかく。
「でも佑人ならぽいかも」
「え、ほんま?亜依に言われるん嬉しいなー」

◆◆◆

「……そんな感じのテンションで話して終わった」
「……ん?」
「あ、パンケーキはおいしかったで、写真見る?」
「いや、えっと、うん、写真は見る」
千紗は亜依が見せてくれた写真を見ながら、首をかしげる。
「なんかやっぱりいい雰囲気なんはいい雰囲気なんやと思うねんけど」
「そうかなあ~ほんまにここくらいやで。あとは小中学校のときの話とか、テレビの話とか、そんなん。食べて一息ついた、ほんとにそれだけ」
「うーん、長期戦かなあ」
「終わりも家の近くまで普通に一緒に帰って、じゃあまたって」
「お互いなかなか恋が始まらんもんやねえ」
「お互いって一緒にせんといてくれる?千紗最近妄想しか喋ってないやん」
「うっ」
千紗は撃たれた真似をして、二人は顔を見合わせて笑った。
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