始まらないラブストーリー

樫和 蓮

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バイト先での恋

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「夏休みはバイトとかしてみたいなー」
「どうしたん?なんか買いたいものでもあるん?」
「いや、出会いがほしい」
「そっち?」
「どこの人なんー?えー、バイト先の人♡ってやりとりしたいねん」
千紗の一人芝居に亜依は思わず笑ってしまう。

「またすぐ恋が始まる!とか言うんやろ」
「始まりたーい!だって夏やで?高二の、夏休みやで??」
千紗は亜依ににじり寄る。

「わかったわかった。どんなプランなん?」
「それは……」

◆◆◆

千紗がバイト先に選んだのは近所のパン屋さん。
主に仕事内容は販売だ。
「いらっしゃいませ!」
教えてもらったマニュアル通りに元気に挨拶を繰り返す。

「千紗ちゃん、そろそろ休憩どうぞー」
裏から職人さん(イケメン、二十代くらい)が千紗に休憩を促してくれる。
「はーい!」

裏の従業員スペースに入ると、パンがいくつか置いてある。
「あれ、これは?」
「こっちは俺の試作。千紗ちゃんに食べてみてほしくってさ」
普段店長さんから厳しく指導を受けている職人さんは、裏では屈託なく笑う素敵なお兄さんだ。
「え、いいんですか!いただきます!」
千紗は喜んでぱくぱくと食べる。
「おいしい~!こんなおいしいパン作れるなんて天才ですね!」
「いやいや、まだまだだよ。でもそう言ってもらえてよかった」
「商品になるの期待して待ってますね!」
「ありがとう」
職人さんはにかっと笑って作業に戻っていく。
「あ、おいしいもの食べてるときの千紗ちゃんめっちゃかわいいな」

◆◆◆

「去り際のセリフできゅんとして恋に落ちるねん!!!」
「イケメン二十代の設定説明から頭に入ってこんかったわ」
「ひど!でもめっちゃよくない?普段関わらない年上の人を好きになっちゃうパターン」
千紗はうっとりとした表情を浮かべる。
「まあ、年上には憧れるよねえ」
「やろやろ!」

「でも同世代パターンも捨てがたいねんな」
千紗は続けて喋り出す。

◆◆◆

「おう、お疲れ」
夏休みの短期バイトで一緒に入った高二生。隣の市の私立高校に通っているらしい。
「お疲れさまーシフト終わり?」
「おう、今日は終わり。お前めっちゃ入ってるな」
「この夏で稼ぎたいもん!」
「何すんの?」
「まあそれは…ぱあっと遊んだり?旅行行ったり!」
口が裂けても恋したいからとは言えない。
「いいなあ旅行。お前と行く旅行楽しそうだよな」
「え……?」
「じゃあお先!」
ちょっと慌てたように、先に帰ってしまった――

◆◆◆

「みたいな!!!」
「ちょっと待ってそれは向こうが実は千紗を好きになってましたみたいなやつ?」
「そうそう!憧れるわ~~」
亜依は小さくため息をつく。

「バイトの許可学校から下りるといいね」
「あー忘れてた!」
二人が通う高校は、家庭の事情がある場合のみ、バイトは許可される。
「そっちのが難関だー」
千紗はがっくりと肩を落とした。
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