生まれ変わりがあるとして

樫和 蓮

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すれ違う春と秋と冬(1)

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「ありがとーおやすみー」
送られてきたメッセージにスタンプで返し、私はスマホを置いた。
ベッドに仰向けに転がる。
絵文字やスタンプのないシンプルな文面。この文面がどんなテンションで紡がれたものなのか、知る術が私にはない。

学校、行きたいな……。
自分で自分にびっくりする。学校に?行きたい?学校と名のつくものに通い始めて10年。高校1年になって、初めての感情だ。
いや、学校自体は嫌いじゃないし、行きたくないと思ったことも真剣にはない。
でも、朝起きるのは嫌だし、テストのときは憂鬱だし、いつも眠たい授業だってある。休みはいくらあっても大歓迎。そう思っていたのに。今年の春までは。

突然猛威を振るいだした新型の感染症
接触感染が経路とされ、日本全国が騒然。学校は休校になった。
私は晴れて桜ケ丘高校に入学したばかり。
クラスメートと友だちになるどころか連絡先もほとんど知らないまま、家に引きこもる生活になった。

最初は、感染症が怖いなあという気持ちもあったけど、郊外のこの町じゃどこか他人事で、のんびりできてラッキー、くらいに思っていた。まあ、課題はたんまり出たけど。
中学の友だちのメッセージを飛ばしながら、勉強して、のんびりする日々。うん、これはこれで悪くない。

でも、不安を煽るテレビ。休まず働いて疲れてくるお父さん。むしろ休みばかりで収入減が気になるお母さん。趣味がもっぱらアウトドアなお兄ちゃん。だんだん家の居心地が悪くなってきた。
いつもは優しい家族が、だんだん疲れや不安でギスギスしてくる。でも外には逃げられない。
軟禁だ。世界に軟禁を強いられている。

でも、慣れは来るもので、オンライン授業が始まったり、高校の人とも連絡先を交換したりして、少しずつクラスメートとも友だちだしくなってきた。
アイコンが写真じゃない人はまだ顔と名前が一致しなかったりするけど、気になる人もできた。
出席番号が一つ前の、桜井くんだ。
出席番号順でペアを組んで課題に取り組むこともあり、自然と桜井くんと話すことが増えた。
授業中のペアワークで顔を見たときから「かっこいいな」と思っていた。
そして何より頭がいい!どんな課題でもすいすいとりかかってしまうし、私の意見だって真剣に聞いてくれる。とてもやりやすいし、会話も弾む。

だんだん、課題だけじゃなくて話したいな、と思うようになった。

「桜井くんは、休みの日は何してるの?」
意を決して送ったメッセージだった。
授業以外のことでメッセージを送った初めての日。返事はすぐに来た。
「んー、サッカーが好きで中学は部活漬けだったけど、今は部活もできないから、暇」
あれ……?気立てのよくて会話の弾む桜井くんの返事、これ?
「サッカー部だったんだ!今は辛いねー(泣)」
泣き顔のスタンプもつける。
あんまり気にされたくなかったのかな…不安。

私の不安とは裏腹に、桜井くんの返信は次も早かった。
「辛いけど今はプロの動画とか充実しててそればっか見てるわ。」
「佐藤さんは?」

聞かれた!!私のこと!聞かれた!!
文面は相変わらずさらっとしてるしスタンプも来ないけど、嫌ではなかったのかな。
「私はもとから本読むのとか好きで、友だちと会えない以外は今までとあんまり変わらないかも~」
可愛いスタンプを付けて、と。
「そっかー」
え、早い、そしてもしかして興味ない?
さすがにここまでで挫けてしまった。
手を振るスタンプを押して、私からやりとりをおしまいにしてしまう。
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