トロンボーン吹きの夏物語

樫和 蓮

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花咲く物語

リュウと龍平

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「友だちに、なってほしい、子……?」
何を言われても予想外だと思うけど、なんとも予想外の言葉だった。

「僕たちと話ができる人はそんなにいないんだ。だから、夏さんに声をかけさせてもらったの。」
リュウはいかにも困った、という顔をしている。
「その子も僕たちと話ができるんだけどね、人間の友だちは、どうも少ないみたいなんだ。」
「その子と、友だちになればいいの……?」
「いいの?夏さん!」
ぱあっと明るくなったリュウの顔を見ると、悪い気はしない。
友だちになる、っていう話も、そんなに難しくないだろう。
自分で言うのもなんだけど、これまで友だちは多いほうである。
友だちがいないっていうのは気になるし不安でもあるけど、そんなに困らないんじゃないかな。

「よかったあ。ね、よかったね、夏さんに頼んでよかった。」
リュウはにこにこしている。
まるでもう解決したみたいな喜びようだ。
「夏さんを呼んできたのは!」
「僕たちだよ!」
「リュウ!!」
「褒めて!!」
またクロシロがぴょんぴょんしている。
「ああ、ありがとう、クロ、シロ。」
リュウに褒められたクロシロはぴょんぴょんをやめない。

「そろそろ来ると思うんだけど。」
「その、わたしに友だちになってほしいって子?」
「そうそう。いつも、土曜日のこの時間になったらここに来て、僕らとお喋りをしているんだ。」
……この生き物たちを受け入れられてるってことは、相当心が広いか綺麗かはたまた変な人だな。
わたしは心の中でやや失礼な検討をつける。

「あっ!」
「リュウ!」
「来たよ来たよ!」
「龍平が、来たよ!」
音もしないのに、クロシロが騒ぎ始めた。

しばらくすると、がさごそと音が聞こえてきた。段々こちらに近づいてくる。

そうして現れたのは、眼鏡をかけた背の高い男の子だった。

「リュウ、クロシロ、来たよ…… って、え?」
男の子は目をまん丸くした。

「龍平、紹介するよ、こちら夏さん。夏さん、この子が話してた、龍平だよ。」
リュウが嬉しそうに紹介してくれる。
ただ、わたしも目をまん丸くするしかなかった。
何せこの男の子、同じクラスの甲斐田龍平だったのである。
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