トロンボーン吹きの夏物語

樫和 蓮

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花咲く物語

お友だち

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「え、土田さん?なんで?」
甲斐田くんはわかりやすく目を泳がせている。
無理もない。
わたしもきっと目が泳いでいる。
ちなみに、なんでかと聞かれても、それはわたしが一番聞きたいところである。

リュウがクロシロよりも先に、わたしたちの異変に気がついた。
「龍平?夏さん?どうかしたの?もしかして、知り合い?」
「リュウ、僕と土田さんはクラスメートなんだ。」
甲斐田くんが動揺を抑えきれない様子で説明する。
「ええええ!」
「なんだって?」
甲斐田くんの説明に先に反応したのはそれまできょとんとしていたクロシロだった。

「夏さんと!」
「龍平が!」
「友だち!」
「もう友だち!」
クロシロはくるくる跳ね回っている。

クロシロの「友だち」という言葉に、わたしと甲斐田くんは、気まずい顔をするしかなかった。
こういう機微にはリュウのほうがよく気づく。
「え、ごめんなさい。龍平、夏さん、クロシロが気に障ること言ってるかな。」
不安そうな顔でリュウが聞いてくる。
「いや、気に障るというか……。」
わたしはどう言葉を続けようか迷って甲斐田くんの方をうかがう。
わたしの視線を受けて、甲斐田くんが続けてくれた。
「僕ら、クラスメートだけど、友だちとは言えないというか……。」
本人を目の前に、「友だちじゃない」とか、本当にそうであっても流石に言いづらい。

わたしたちが気まずい雰囲気を出していると、クロシロも気づいたようだ。
「あれっ」
「龍平と夏さん」
「友だちじゃないの?」
「違うの?」
くるくる回っていたのに急にしょぼんと肩を落としている。肩があるのかはよくわからない。

「ごめんね、龍平、夏さん。もしかしたら気まずいかもしれないんだけど、せっかくだし、ここで、二人は友だちになるっていうのはどうかな?」
リュウがこちらをうかがいながら聞いてきた。目の奥が少し輝いている気がする。
「最近何か企んでいると思ったらこれだったんだね、リュウ。」
甲斐田くんはさっきまでより優しい顔をしている。
「僕のことを考えてくれたんだよね、ありがとう、リュウ。土田さんさえよければ、友だちに、なってくれませんか?」
途中で甲斐田くんはわたしの方に向き直った。
リュウも期待を込めたようにわたしを見ている。

こんなに期待されて、断る理由なんてない。
「うん!喜んで!」
わたしは甲斐田くんとリュウに笑顔を向けた。
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