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決勝編
スパルタンX
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幼少の頃、十二支にまつわる話を聞いた事のある者は多いだろう。
ある日、神様が獣たちに言った。
「12年周期で各年の象徴となる生き物を決めるから、1月1日に私の家をゴールとして競争をしなさい。先着順に12匹の獣たちを十二支に任命しよう」
獣達は競争に向けて準備を始める。そんな中、神様の発表を聞き逃した猫に、鼠はこう告げた。
「猫さん、神様が十二支を決めるレースを開催するよ。1月2日に神様の家をゴールにして始めるんだ」
鼠に騙された猫はレースに参加すらせず負けてしまい、十二支の座を逃した。以来、猫は鼠を怨み、猫は鼠を見ると追い掛けるようになった……
「という話をな」
猫耳と尻尾を生やしたヒナコ…の体に乗り移ったヤンセはテルに言う。
「確かに俺も爺さんから聞いたことがあるな」
テルが答えると、ヤンセは再び口を開く。
「そして、この話には続きがあってな」
鼠の策略に嵌まった猫を可哀想に思った神様は、猫を自らの半身の様に可愛がり、零番目の干支にしまた。それ以来、猫は神の使いとして十二支達による戦いを見届ける側になったのだ……
「つまり、十二支を決めるレースは俺っちがパントドンを造った後で獣達による縄張り争いを鎮める為に開催したんだ。そして、先着した12匹の獣が12国の祖となる獣人の王となり、100年周期で干支乱勢を呼び出し戦わせるトーナメントを開始した!」
「……俺たちの知る干支…十二支の起源がこの世界の成り立ちだったってのか?」
「その通り。そして、お前たちの世界に干支の概念を持ち込んだのは最初に大武繪を制し現世に復活した干支乱勢……名を“天乙”。殷なる国を建国した者だ!!」
殷。またの名を商……歴史上に於いて最も古く、現在の中国に当たる地に築かれた王朝とされ、ちょうど「干支」が誕生したのはこの王朝とされている。
「日本人がやっと米や土器を作ってた時代にも既にこのトーナメントは開催されてたってわけか。随分とスケールのデカい話になってきたな」
異世界に転生し、モンスターと戦ったり獣人達と交流した辺りでテルは大抵の事には驚かなくなっていたが、干支の誕生に干支乱勢が関わっていたと知り、ほんの少しだけ驚く。フランス語で異邦人を意味するétrangerの語源も、干支乱勢に由来すると言われれば信じてしまうであろう程度には。
「地球人の格闘技術が発達してゆくに従って、大武繪も面白くなっていった。そんな長い歴史の中で、神たる俺っちに仕合を挑んだのはお前が初めてだぞ。輝臣」
「そうかい。じゃあ俺は、史上初の子国を優勝させた干支乱勢であり、神を倒した人間になってやろうじゃねえか!」
テルは構える。
「やっぱり面白い存在だよ、お前は。全力で闘ってもらう為にも、お前の体力や負傷は治してやろう!」
ヤンセが右手の親指と中指をパチンと鳴らす。すると、テルの体から激闘の末に負った傷は癒え、筋肉・関節・臓器の疲労すら消えたではないか。
「そんな手品じゃ今更ビビらねえぞ。お前が触れる体になった時点で俺が勝つ!」
猛るテルに対し、ヤンセは左手の指も同様に鳴らす。
「手品ついでに、俺っちも仕合に適した服装をしないとな」
ヒナコの体をしたヤンセが一瞬のうちに変化した姿は、白の体操服に紺色のブルマー、バレーシューズ(上履き)という出で立ちであった。
ある日、神様が獣たちに言った。
「12年周期で各年の象徴となる生き物を決めるから、1月1日に私の家をゴールとして競争をしなさい。先着順に12匹の獣たちを十二支に任命しよう」
獣達は競争に向けて準備を始める。そんな中、神様の発表を聞き逃した猫に、鼠はこう告げた。
「猫さん、神様が十二支を決めるレースを開催するよ。1月2日に神様の家をゴールにして始めるんだ」
鼠に騙された猫はレースに参加すらせず負けてしまい、十二支の座を逃した。以来、猫は鼠を怨み、猫は鼠を見ると追い掛けるようになった……
「という話をな」
猫耳と尻尾を生やしたヒナコ…の体に乗り移ったヤンセはテルに言う。
「確かに俺も爺さんから聞いたことがあるな」
テルが答えると、ヤンセは再び口を開く。
「そして、この話には続きがあってな」
鼠の策略に嵌まった猫を可哀想に思った神様は、猫を自らの半身の様に可愛がり、零番目の干支にしまた。それ以来、猫は神の使いとして十二支達による戦いを見届ける側になったのだ……
「つまり、十二支を決めるレースは俺っちがパントドンを造った後で獣達による縄張り争いを鎮める為に開催したんだ。そして、先着した12匹の獣が12国の祖となる獣人の王となり、100年周期で干支乱勢を呼び出し戦わせるトーナメントを開始した!」
「……俺たちの知る干支…十二支の起源がこの世界の成り立ちだったってのか?」
「その通り。そして、お前たちの世界に干支の概念を持ち込んだのは最初に大武繪を制し現世に復活した干支乱勢……名を“天乙”。殷なる国を建国した者だ!!」
殷。またの名を商……歴史上に於いて最も古く、現在の中国に当たる地に築かれた王朝とされ、ちょうど「干支」が誕生したのはこの王朝とされている。
「日本人がやっと米や土器を作ってた時代にも既にこのトーナメントは開催されてたってわけか。随分とスケールのデカい話になってきたな」
異世界に転生し、モンスターと戦ったり獣人達と交流した辺りでテルは大抵の事には驚かなくなっていたが、干支の誕生に干支乱勢が関わっていたと知り、ほんの少しだけ驚く。フランス語で異邦人を意味するétrangerの語源も、干支乱勢に由来すると言われれば信じてしまうであろう程度には。
「地球人の格闘技術が発達してゆくに従って、大武繪も面白くなっていった。そんな長い歴史の中で、神たる俺っちに仕合を挑んだのはお前が初めてだぞ。輝臣」
「そうかい。じゃあ俺は、史上初の子国を優勝させた干支乱勢であり、神を倒した人間になってやろうじゃねえか!」
テルは構える。
「やっぱり面白い存在だよ、お前は。全力で闘ってもらう為にも、お前の体力や負傷は治してやろう!」
ヤンセが右手の親指と中指をパチンと鳴らす。すると、テルの体から激闘の末に負った傷は癒え、筋肉・関節・臓器の疲労すら消えたではないか。
「そんな手品じゃ今更ビビらねえぞ。お前が触れる体になった時点で俺が勝つ!」
猛るテルに対し、ヤンセは左手の指も同様に鳴らす。
「手品ついでに、俺っちも仕合に適した服装をしないとな」
ヒナコの体をしたヤンセが一瞬のうちに変化した姿は、白の体操服に紺色のブルマー、バレーシューズ(上履き)という出で立ちであった。
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