真・黒歴史転生~異世界転生先は、かつて俺が書いた“黒歴史ノート”の中!?あまりにも恥ずかしすぎるので、大魔王としてこの世界を滅ぼしてやる!~

たかはた睦

文字の大きさ
9 / 14

魔の産声(エビルバース・クライ)

しおりを挟む
─宿屋『なかうみ亭」



 チュートリアルとも言えるべきイベントを終えて、次の町へ行くまでにゲームオーバー的挫折を味わった俺は、一旦マーツェにある宿屋に泊まり、作戦を練ることにした。1000ゴーラムの所持金から宿代600ゴーラムが引かれ、早くもジリ貧である。



「まず盗賊達に俺が負けてしまった原因だが……」



 分析の末に出てきたのは、勇者パーティーのマナフレアが言ってたアレに辿り着く。



「レベルとステータス数値」



 ……正直、考えるのも恥ずかしい。この世界自体が小説だか漫画原作だか脚本だか解らないどっち付かずな創作物なのだが、ひとつ言えることは“ゲームではない”ということだ。なのに、中学生の浅はかな知能は、ファンタジーというものにドラクエやFFというゲームを参考にしたがる。



「……この世界に転生したばかりの俺は、たぶんレベルとかステータス数値とかがメチャクチャ低いんだろうな」



 だから人間の盗賊に手も足も出なかったと考えるのが妥当な線だろう。チートアイテムたる漆黒の聖典を手にしたところで、所有する本体たる俺が雑魚ではどうしようもないではないか。



「………」



 俺はペンを右手に執り、ノートを開く。ここに『大魔王佐丹信雄、HP9999、MP9999、攻撃力999、防御力999……』とか書けば、最強キャラクターと化した俺の出来上がり!なのだが……



「出来るかそんなもん!!」



 俺はノートをぴしゃりと畳んだ。ガキの頃の俺ならともかく、大人になった俺が恥ずかしい設定に、更に恥ずかしいことを書き込むなんざ、まさに恥の上塗りというものだ。



「でも、何とかしないと先に進めないぞ……」



 この俺に与えられた唯一の力である漆黒の聖典を活用した打開策……思案と妥協の末に、俺は二つの策を思いついた。



「俺自身のレベルだのステータスだのを、いらわずに強さを得る方法……」



 ノートのページにペンを走らせる。大人になっても相変わらず絵はヘタクソだ。因みに “いらう”とは俺の故郷・島根県の方言で弄くるとかそういうニュアンスの言葉だ。



「出来たぞ!大魔王の装備が!!」



 すると、目の前にノートに描いた絵をプロのイラストレーターやデザイナーが手直ししたかの様な物体が具現化したではないか。



「まずは武器!」



 黒地に紫色の差し色が入る、昆虫の脚を馬鹿でかくしたような刺々しく禍々しい棒状の物体……大魔王の杖だ。装備すれば、全ての魔法がMP的なものを消費せずに使いこなせるという効果を絵の横に書いておく。中学生の俺がこいつに名前を付けるとすれば、『冥神の暴虐』ハデス・アウトレイジといったところか。



「お次は防具!」



 小豆色……もといワインレッドのマント。魔法や炎・吹雪など、あらゆる攻撃を防ぐというありきたりな設定。名付けて『虚無織の外套』ヴォイドウィーヴ・クローク



「俺は勇者達に顔も知られているから隠した方がいいだろう」



 角の生えたの髑髏の兜、『魔刻の封面』カースド・エクリシス。精神への攻撃を無効化し、相手の弱点をも見抜く便利な仮面だ。

 俺は早速これらの大魔王装備を身に付け、宿の部屋に備え付けられた姿見鏡に映してみる……

 …

 ……

 ………

 ダサい!絶望的にダサい!!

 よくよく考えてみれば、RPGのラスボスはみんなデカい。身長167cmの俺が仮面を被りマントを羽織って杖を持ったところで、完成度の低いコスプレおじさんでしかなかった。



「着た後の事まで考えてから描けば良かった……」



 数エピソード前にヤンセも言ってたが、ノートに書いた事は取り消せない。出来てれば、まず勇者も世界もとっくに消している。故に俺は、これらの大魔王コスチュームを常に持ち歩き続けなければならない。



「まあいいや、次だ次!」



 仮面とマントを外し、杖をペンに持ち替えた俺は再びノートに絵と文字を書き込む。



「冒険には仲間が必要だもんな……」



 さっき戦った盗賊達は3人だった。いくら強い装備に身を固めても、一人で複数を相手に勝てる自信は無い。なので、めちゃんこ強い仲間キャラクターを作り出し、戦闘の補助をしてもらおう。いや、戦闘をほぼ全て任せてしまおう。



「……確か、エターナルサーガにはこんなキャラクターも考えていたはず」



 ペンを走らせる。

 黒ずくめの戦闘服と、顔をすっぽり覆う頭巾に身を包み、左右の手には、拳銃のグリップから下がサバイバルナイフの様になった武器を持つ、一見して忍者のようなキャラクター。 



『名前:ショウ、種族:人間、職業:暗殺者、ジークハルトの生き別れの弟で本名をナイトハルト。幼い頃に暗殺者ギルドに引き取られ凄腕のアサシンとなる……』



 等の設定を“思い出し”ながら書き込む。そう、このショウというキャラクター、当初は勇者達の仲間キャラクターでありシーフ的なポジションとして考えてはいたものの、ロボ娘ペトルーシュカのアイデアが浮かび、そちらに仲間キャラクターの座と枠を奪われてしまった、 所謂“没キャラ”なのだ。そしてショウの設定の最後に、俺はこう書いて締め括る。



 “大魔王の忠実なしもべである”



 すると、ノートは淡い光を放ち、先ほどの大魔王セットと同じく一人の少年が具現化した。



「お呼びでしょうか。大魔王様」



 黒ずくめの忍び装束に身を包み、端正かつ女の子と見紛う顔をした美少年忍者・ショウは、没設定を流用した後、俺の配下としてこの世界に生を受けた……

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...