5 / 20
5
しおりを挟む
オーバーン王国。
多楼亜麻奈が転移してきたこの世界において、大陸の西側を治める国々のうち一つがこのオーバーン王国である。
かつて地上の人々と魔界の住人“魔族”による戦いが地上人の勝利で終わったのも束の間、人類同士に よる戦乱から只人らが各地に国を興すこととなった。そして多くの国々では亜人は被差別種族として扱われ、只人の文化・習慣を強いられる事となる。
オーバーン王国当代国王キャラメ・ル・クリム3世は亜人達への同化政策を撤廃し、国有地各所を亜人達の集落として開放、自治権を認めた。只人による過度な干渉を行わず、各種族の文化・習慣を尊重する政策を執った事により平和を愛する名君と謡われている。
―ツヴァン村
アマナが村に来てから数日後。一頭の馬がその背に人を乗せ、村の入り口へと差し掛かる。
「むっ」
竜人の番人コレートは、その姿を視認すると、槍を構えるが、すぐにそれを下ろす。
「ご苦労様、コレート」
馬から下り、被っていたマントのフード部分を脱いだ男は端正な顔立ちをした青年であ った。
「殿下!ご足労、お疲れ様です!」
殿下と呼ばれたこの青年こそ、オーバーン王国王子カスター・ド・クリム。村人達が信頼する 数少ない只人の一人である。彼は領地であるツヴァン村を定期的に視察するのだが、村人達の意向を汲み、いつも従者を伴わず単独で訪れる。
「コレート、いつもより鱗のツヤがいいな」
「解りますか。これも聖女様からもらった“奇跡の菓子”の賜物ですよ」
聖女と奇跡の菓子……カスターが此度ツヴァン村を訪れた目的は、その噂を確かめる為 でもあった。
「成る程、私もその聖女とやらの元へ案内してくれまいか」
「いいですとも。聖女様も只人の様ですし、同族の方に会いたいとお思いでしょう」
東方からやって来たと思しき“聖女”と呼ばれる只人がツヴァン村の亜人達に“奇跡の菓子”なるものをばらまいている…王都に聞こえた噂話はそのような内容だった。聞けば何とも胡散臭い話ではないか。
(もし、その聖女だかが邪悪な宗教や薬物の類いを我が領土に持ち込んだとすれば、私は王族の名に於いて、この国と民を守らねばなるまい……)
カスターの腰には儀礼用の細剣が差してあるのみだが、いざとなればこの剣を前から抜く事になるやもしれぬ……そう思いながらコレートの後をついて行く。
多楼亜麻奈が転移してきたこの世界において、大陸の西側を治める国々のうち一つがこのオーバーン王国である。
かつて地上の人々と魔界の住人“魔族”による戦いが地上人の勝利で終わったのも束の間、人類同士に よる戦乱から只人らが各地に国を興すこととなった。そして多くの国々では亜人は被差別種族として扱われ、只人の文化・習慣を強いられる事となる。
オーバーン王国当代国王キャラメ・ル・クリム3世は亜人達への同化政策を撤廃し、国有地各所を亜人達の集落として開放、自治権を認めた。只人による過度な干渉を行わず、各種族の文化・習慣を尊重する政策を執った事により平和を愛する名君と謡われている。
―ツヴァン村
アマナが村に来てから数日後。一頭の馬がその背に人を乗せ、村の入り口へと差し掛かる。
「むっ」
竜人の番人コレートは、その姿を視認すると、槍を構えるが、すぐにそれを下ろす。
「ご苦労様、コレート」
馬から下り、被っていたマントのフード部分を脱いだ男は端正な顔立ちをした青年であ った。
「殿下!ご足労、お疲れ様です!」
殿下と呼ばれたこの青年こそ、オーバーン王国王子カスター・ド・クリム。村人達が信頼する 数少ない只人の一人である。彼は領地であるツヴァン村を定期的に視察するのだが、村人達の意向を汲み、いつも従者を伴わず単独で訪れる。
「コレート、いつもより鱗のツヤがいいな」
「解りますか。これも聖女様からもらった“奇跡の菓子”の賜物ですよ」
聖女と奇跡の菓子……カスターが此度ツヴァン村を訪れた目的は、その噂を確かめる為 でもあった。
「成る程、私もその聖女とやらの元へ案内してくれまいか」
「いいですとも。聖女様も只人の様ですし、同族の方に会いたいとお思いでしょう」
東方からやって来たと思しき“聖女”と呼ばれる只人がツヴァン村の亜人達に“奇跡の菓子”なるものをばらまいている…王都に聞こえた噂話はそのような内容だった。聞けば何とも胡散臭い話ではないか。
(もし、その聖女だかが邪悪な宗教や薬物の類いを我が領土に持ち込んだとすれば、私は王族の名に於いて、この国と民を守らねばなるまい……)
カスターの腰には儀礼用の細剣が差してあるのみだが、いざとなればこの剣を前から抜く事になるやもしれぬ……そう思いながらコレートの後をついて行く。
10
あなたにおすすめの小説
両隣の幼馴染が交代で家に来る
みらいつりびと
恋愛
両親がタイへ行く。
父親が3月上旬に上司から命じられた。4月1日からバンコクで勤務する。
うちの父と母はいわゆるおしどり夫婦というやつで、離れては生きていけない……。
ひとり暮らしの高校2年生森川冬樹の世話をするため、両隣の美しい幼馴染浅香空と天乃灯が1日交代で通ってくる。
冬樹は夢のような春休み期間を過ごし、空と灯は火花を散らす。
幼馴染三角関係ラブストーリー。全47回。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)その後
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合つまた。
その後、大学を卒業した祐輔(ユウスケ)の新たなストーリーが始まった。
全15話を予定
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる