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─ツヴァン村・長老の家
「異なる世界から!?」
長老シアンはアマナから、自分が異世界より転移してきた存在であると聞き、目を丸くした。
「そうなんです。自分でも信じられないけど、思い出したの。それで、長老様は長く生きてきて、今までに私みたいな異世界人のことを見たり聞いたりした事はないのかな……って」
目下の課題であるイマーガワ帝国の侵攻を退けたアマナにとって次なる課題は、この先どうするかだった。まず選択肢の一つに『元の世界へ帰る』がある。が、その為には帰る方法手段を見つけねばならない。
「見たことは無いわね……だけど、こんな古い言い伝えは聞いたことがあるわ」
【この世界は竜の地。創造神ヤンセ・ライマンより生まれた。名をアラパイム】
「あら……ぱいむ?」
「そう。だけど、この世界に住む人々は自分の居る世界に名前があるという事すら忘れてしまったの」
シアンは続ける。
【ヤンセはアラパイムの他に、幾つもの宇宙(ユニヴァース)を生み出した。ヘテロティス、パントドン、オステオグロッサム、ア・ロワーヌ、ノーザンバラムンディ……そして、テラ。
「地球!」
TERRA-ラテン語で地球を表す言葉である。
「言い伝えのテラと、あなたの居た地球が同じかは解らないわ。でも、私が知る限りでは異世界に関する情報はこれだけ」
「その、ヤンセ・ライマンって神様だけが手掛かりかぁ」
雲を掴むような話であった。
「今すぐ元の地球に戻れないなら、私はこのアラパイムでやるべきことをやるまでね!」
アマナが腰掛けていた椅子から立ち上がったその時だった。
「アマナ、王宮からの迎えが来たわよ」
「殿下直々に馬車でお出迎えときたもんだ!」
パンセとポンセが、入室しながら告げる。
「うん、すぐ行く!……それじゃ長老様、行ってきます!」
「行ってらっしゃい、アマナ。あなたがこの世界に居る間は、ここがあなたの家よ」
アマナはシアンに笑顔で手を振り、家を出た。
─オーバーン王宮前広場
広場には、オーバーン王国各地から訪れた大勢の国民達が集結していた。貴族も平民も、只人も亜人も関係なくそこへ並ぶ。
壇上では、国王キャラメ・ル・クリム3世により先日のツヴァン村における防衛戦を戦った戦士達へと勲章が授与されている。兵士であるベイクとドモチョだけでなく、村の戦士であるコレートとマッチャーにも、国王自ら労いの言葉を掛ける。そして、騎士団長であり王子・カスターの番がやって来た。国王が手に取ったのは勲章ではなく頭上の王冠だった。
「……諸君らに告げるべき事がある。私は本来ならば病に倒れ、今ここに居なかったかもし れない人間だ。それが、奇跡の菓子オーバーン焼きにより生きながらえた。そして、素晴らしい兵と国民達の力により国は守られた。その最大の功労者であり指導者たるカスターに王位を譲ることとした!」
国民達の拍手が鳴り響く中、国王はカスターに王冠を手渡す。が、
「……父上、この冠を頭上に戴くべきは私にあらず」
そう言ったカスターは受け取った冠をアマナの頭に乗せる。
「私ことカスター・ド・クリムは王位を継ぐとともに、王政の廃止を宣言する!これより我が国はオーバーン共和国!聖女タロウ・アマナを国の象徴とし、全て国民は法の下に平等!身分や種族に囚われる事は無い!!以上、オーバーン共和国初代……何だっけ?」
隣のアマナに尋ねるカスター。
「首相よ」
「オーバーン共和国初代首相カスター・ド・クリム!!」
国民達は再び拍手を送る。そして、アマナが舞台中央へ。
「皆さん、これからオーバーン共和国には数々の艱難辛苦が訪れるでしょう。しかし、我々が団結すれば、必ず乗り越えられます!」
右手を天高く掲げ、その掌から丸い焼き菓子を生み出し、高らかに言い放つ。
「この丸の下へ集いましょう……ご唱和ください、コレの名を!!」
異世界の恋は大判焼きのように甘く……
一完一|単語
「異なる世界から!?」
長老シアンはアマナから、自分が異世界より転移してきた存在であると聞き、目を丸くした。
「そうなんです。自分でも信じられないけど、思い出したの。それで、長老様は長く生きてきて、今までに私みたいな異世界人のことを見たり聞いたりした事はないのかな……って」
目下の課題であるイマーガワ帝国の侵攻を退けたアマナにとって次なる課題は、この先どうするかだった。まず選択肢の一つに『元の世界へ帰る』がある。が、その為には帰る方法手段を見つけねばならない。
「見たことは無いわね……だけど、こんな古い言い伝えは聞いたことがあるわ」
【この世界は竜の地。創造神ヤンセ・ライマンより生まれた。名をアラパイム】
「あら……ぱいむ?」
「そう。だけど、この世界に住む人々は自分の居る世界に名前があるという事すら忘れてしまったの」
シアンは続ける。
【ヤンセはアラパイムの他に、幾つもの宇宙(ユニヴァース)を生み出した。ヘテロティス、パントドン、オステオグロッサム、ア・ロワーヌ、ノーザンバラムンディ……そして、テラ。
「地球!」
TERRA-ラテン語で地球を表す言葉である。
「言い伝えのテラと、あなたの居た地球が同じかは解らないわ。でも、私が知る限りでは異世界に関する情報はこれだけ」
「その、ヤンセ・ライマンって神様だけが手掛かりかぁ」
雲を掴むような話であった。
「今すぐ元の地球に戻れないなら、私はこのアラパイムでやるべきことをやるまでね!」
アマナが腰掛けていた椅子から立ち上がったその時だった。
「アマナ、王宮からの迎えが来たわよ」
「殿下直々に馬車でお出迎えときたもんだ!」
パンセとポンセが、入室しながら告げる。
「うん、すぐ行く!……それじゃ長老様、行ってきます!」
「行ってらっしゃい、アマナ。あなたがこの世界に居る間は、ここがあなたの家よ」
アマナはシアンに笑顔で手を振り、家を出た。
─オーバーン王宮前広場
広場には、オーバーン王国各地から訪れた大勢の国民達が集結していた。貴族も平民も、只人も亜人も関係なくそこへ並ぶ。
壇上では、国王キャラメ・ル・クリム3世により先日のツヴァン村における防衛戦を戦った戦士達へと勲章が授与されている。兵士であるベイクとドモチョだけでなく、村の戦士であるコレートとマッチャーにも、国王自ら労いの言葉を掛ける。そして、騎士団長であり王子・カスターの番がやって来た。国王が手に取ったのは勲章ではなく頭上の王冠だった。
「……諸君らに告げるべき事がある。私は本来ならば病に倒れ、今ここに居なかったかもし れない人間だ。それが、奇跡の菓子オーバーン焼きにより生きながらえた。そして、素晴らしい兵と国民達の力により国は守られた。その最大の功労者であり指導者たるカスターに王位を譲ることとした!」
国民達の拍手が鳴り響く中、国王はカスターに王冠を手渡す。が、
「……父上、この冠を頭上に戴くべきは私にあらず」
そう言ったカスターは受け取った冠をアマナの頭に乗せる。
「私ことカスター・ド・クリムは王位を継ぐとともに、王政の廃止を宣言する!これより我が国はオーバーン共和国!聖女タロウ・アマナを国の象徴とし、全て国民は法の下に平等!身分や種族に囚われる事は無い!!以上、オーバーン共和国初代……何だっけ?」
隣のアマナに尋ねるカスター。
「首相よ」
「オーバーン共和国初代首相カスター・ド・クリム!!」
国民達は再び拍手を送る。そして、アマナが舞台中央へ。
「皆さん、これからオーバーン共和国には数々の艱難辛苦が訪れるでしょう。しかし、我々が団結すれば、必ず乗り越えられます!」
右手を天高く掲げ、その掌から丸い焼き菓子を生み出し、高らかに言い放つ。
「この丸の下へ集いましょう……ご唱和ください、コレの名を!!」
異世界の恋は大判焼きのように甘く……
一完一|単語
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