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ハッピーエンド
しおりを挟む「ぼ、僕は男子ですーーーっ!!!」
はぁ、これだから文化祭は嫌いだ。漫画に書いてあるようなナンパ野郎が声をかけてくるから……。もーーーしかもその上今年は看板娘とか言ってクラスで男女逆転カフェをやってるし……。なんで宣伝に行かないといけないんだよ、1人で!!途中だけどいーや!クラス戻ろー!
さっさと帰りたくてダッシュした。階段を上りきった時だった。
_人人人人人_
> ドンッ <
 ̄^Y^Y^Y^Y ̄
いてーっ。ぶつかったのか……。あれ?宙に浮いてる?あー、階段から落ちてんのかー。冷静だなー僕。あ、相手の人に謝んなくちゃーっ!
目が覚めるとベッドの上だった。「目が覚めた?」と先生。「担任の先生に伝えてくるわね。しばらく休んでなさい。」先生は続けて言った。ん?カーテンのところに誰かいる?先生も行ったし少しくらい……。どーやらダメなようだ。起き上がると頭が痛い。
「ねぇ、誰?」
5分ほど悩んでからだけど声をかけた。そうするとそこにいた子は顔を出し
「あの、さっきはごめんな。」
とだけ言った。同い年くらい?見た目は少し怖そう。
「俺、今年1ー3に転入するんだ。あ、来週から……。」
1ー3?同じクラスだ。
「で?名前何?」
「えっと……葵海。七瀬葵海。」
そう、この女っぽい【あおい】って言う名前のせいもあり女に間違われやすい。
「そっか!じゃあ次は俺!俺は桐生辰巳。」
「よろしく。辰巳。 」
「なあ、お前何組?」
「あ、1ー3。」
僕のコミュ障ぶり……。自分でも嫌になる。
「一緒じゃん!色々教えてな!」
「う、うん。」
「あれ?葵海めっちゃテンション低いじゃん?俺が高いだけかな?こっちで初めての男友達で嬉しいんだ!!」
「男って……。」
「あれ?違った?ごめん!!」
彼は謝るけど僕はただ嬉しかった。
「いや、みんな間違えるから嬉しい。」
女に間違えられ挙句の果てには「ボクっ娘?かわい~。」と言われてきて男子は本当に苦手だった。かと言って女子とも話せるわけもなくコミュニケーションなんか苦手中の苦手になっていった僕なのにこんなに会話してくれる人は久しぶりで嬉しかった。
ー翌週ー
「はーい。みんな文化祭お疲れ!早速だけど今日は片付けねー!と、その前に転入生紹介します!」
ざわつく教室の中で1人だけ知っているのはなんか特別感があって良かった。
先生が紹介した後は漫画通りの展開。転入生に質問攻め。すごいなぁ。もうみんなの中心にいる。なんだろ。この僕だけの秘密が僕だけのものでなくなっていく感じ。嫌だなぁ……。
「あ、葵海!よろしく!」
「う、うん。」
ほら、みんなの僕を見る目が変わった。
もうやだ。
それから二日間僕は学校を風邪で休んだ。
辰巳が転入してきて4日目。みんな何か群がっている。あいにく僕の席にはそこを避けていてはたどり着けない。仕方なく近づくと聞こえる女子の声。
「ねぇねぇ、辰巳くんってさー、萌香ちゃんに告白されたんだってー!」
ズキン
「えー?この間真奈美ちゃんにも告白されてたじゃん。どーすんだろー。」
「まーその二人ならどっちでも許せるけどね!」
ズキズキ
なんか胸が痛い。
その日の夜僕はインターネットで調べた。この胸の痛みについて。どうやら世間はそれを恋と言うらしい。そしてそれと同時にとあることを知った。僕は同性愛者。世間からのあまりにも辛辣な見方に思わず泣いてしまった。
寝て、起きて、学校行って、辰巳が萌香ちゃんと付き合い始めたことを聞いて……。
自覚した瞬間失恋……。情けないなぁ……。
僕は相変わらず男子に可愛がられる日々。辰巳は幸せそう。良かった…。
辰巳が付き合い始めて三ヶ月が立つ頃ある噂が流れた。それは決して良くはない噂だった。また、
「萌香ってさー、ぶりっ子だよね。」
「あいつ万引きしてたでしょ?」
「あー、いじめられててのやつ?」
「そーそー。」
「それでもないわー。」
こんな会話も耳にするようになった。
そして僕がそれを知ってからしばらくした頃。下駄箱に一通の手紙があった。
「葵海、一緒に帰ろう。4時半にココで。」
おそらく辰巳だろう。
4時半
辰巳は下駄箱のところにいた。
「来てくれたんだ。よかった。」
「久しぶりだね、二人で話すの。」
「うん!ねえ、公園よってもいいー?」
「いーよ。」
もっと愛想よく話せたら……。前より話し辛い。
「ね、葵海。大事な話がある。聞いて。」
僕は少し身構える。
「俺は今日、萌香ちゃんと別れた。」
えええええ!?
声にもならない叫び。
「えーっと、萌香ちゃんの過去がね、ちょっと……。」
あぁ、辰巳もそんな人間だったのか……。
「なーんて言うと思った?」
え?
「大事なのはこっから。」
辰巳の顔つきが変わる。
「僕は両性愛者です。」
え?
「俺は葵海のかわいいとこも女子っぽいところもなにかと頼もしいところも好き。恋愛感情で。」
待って、追いつかない。
「はは、ごめんね。気持ち悪いよね。どっちも愛せちゃうんだ俺は。」
「気持ち悪いなんてそんなことっ……。」
「いーよ気を使わないで。俺、帰るね。」
待ってという三文字が僕の口から出ることは無かった。
せっかく自覚して両思いなのになぁ……。
辰巳の話から1週間。
僕は辰巳のやったように下駄箱に手紙を入れた。
4時半
辰巳は来た。
「何かあるんだろーけど公園でいい?」
頷く。なんとなく気まずい。
「……で、どーしたの?」
あくまでも普通に接してくる辰巳。
「んと、僕は同性愛者なんだ。お前が誰かと話してるのがやだ。お前と話すほど胸が苦しい。おまえは両性愛者だけど僕は同性しか愛せない。お前が気持ち悪いなら僕はもっと気持ち悪い。」
一瞬間を開ける。
「だから、よければ付き合って下さい。」
言っちゃった。辰巳が帰った気持ちがわかるよ。
「あのさ、葵海。俺から付き合ってって言ってんのに断るわけねーだろ。馬鹿。」
気づいたら泣いていた。
「辰巳、これからも宜しくね。」
密かな密かなハッピーエンド
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