わたしは

momo

文字の大きさ
上 下
36 / 36
第二章

イケナイことって魅惑の香り

しおりを挟む
わたしは高校入学前の春休みに、突然知らない番号から電話がかかってきた。
えっ、誰だろう…。佐倉くんなら家電のはずだし…。
恐る恐る電話に出てみる。
「もしもし…。」
「もしもし、俺マナブだけど、キミは誰? 」
「えっ…。」
「アハハ、突然驚いた?間違えて掛けてみたらキミが出たから、よかったら俺と友達になってくれん?」
突然の電話にビックリしているわたしをよそに、電話の相手はテンション高めに友達にと誘う。
「俺、もうすぐ高校生なん。独り暮らし始めたばかりでさ…。」
急に寂しげなオーラを出される。
ううっ、それは可哀想な気が…。しかも同じ年の男の子なんだぁ。
ちょっとした好奇心に負けて、
「うん…。よろしくね。」
っと答えてしまった。
「やったー!キミは何歳なん?」
「マナブ君と同じ年だよ。」
「えー、マジ偶然じゃん!俺○○駅の近くに住んでるんだ。」

あっ、その駅ならわたしの高校の近くの駅から電車一本で行ける。 
「よかったら会わない?」
「えっ、でも…。」
「俺、料理苦手でさ…何かおしえてくれん?」
困った感じでグイグイ迫られる。ドキドキしてくる鼓動に負けて、
「わかった。」
イケナイことだとは思っていたけど、会ったこともない同じ年の困っている男の子に頼られたという変な正義感と、どんな男の子何だろうっという純粋な好奇心に胸の高鳴りも抑えられずにわたしはマナブ君と会う約束をした。

春休みで特に部活もなく受験勉強から解放されて気持ちも軽くなっていたせいかな。
佐倉くんから電話はかかってくるけど、卒業してしまったし会える予定もなかったので付き合ってるのかどうかも怪しいところだった。
わたしから電話出来ないのも歯がゆくて…両思いなはずが、やっぱりわたしの片思いなのか都合が良い時だけの存在なのか…。
そんな、迷いが心の隙を生んだんだと思う。

わたしは人を信じるきもちがほんとに足りない。
きっともっと信じていられたら幸せでいられたのにって思うことが、たくさんある。
気が短いのもあって、相手が迷っていたり答えに悩んでると早急に悪い方向に勝手に思い込んで突き進んでしまう。

そのくせ押しにめっぽう弱い。グイグイ来られると今回のように押しきられてしまう。

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

電車に、揺られながら待ち合わせの駅まで向かう。
ドキドキ…どんなひとなんだろう。わたしのことどう思うかな。
独り暮らしのお部屋ってどんな感じなんだろう。

期待に胸膨らませてわたしはイケナイ方面へ電車に揺られて進んでいった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...