わたしは

momo

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第二章

わたしは…高校生

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桜舞い散る春の日、わたしは高校生になった。

第一志望に入れたこともありワクワクしながらの入学式。
が、…駅から歩いて通うのはわかっていたけど、心臓破りの坂が立ちはだかっていた。

しかも、ロングコース…こ、これを毎日登るのか。
面接の時は緊張のあまり何も考えずに同じ受験生の子の後を歩いていただけだったから感じなかったが、結構傾斜もキツイ。
自転車なんて、立ちこぎでも3分の一も登れないかもしれない。
こ、これは…。

そう、この心臓破りの坂のおかげで○○高校の女の子は足がたくましいなんて風評があるくらいだったのだ。
もともとスリムではなかったわたしはそこはまあ、みんなも同じくらいになってくれるのはウェルカムではあった。

帰りは大量の教科書が両手いっぱいにぶら下がった状態で坂を下っていかなくてはならず、これまた下りは楽かと思いきや、気を抜くと前のめり過ぎて転んでしまいそうになるのでやはり足の力が必要となった。


登下校で筋トレができるよっと心の中で突っ込みながら帰宅したのでした。

うみちゃんとも同じ高校だったので帰り道駅で同じになった。

「今日から高校生だね。」

『うん。よろしくね。うみちゃん』

うみちゃんのお母さんにも頭を下げた。
昔から家を行き来して遊んだりしていたので見知ったひとではあったけど、夫婦仲が悪くなりお母さんが1日じゅう働いてるとか別居したりしていると話は聞いていた。
そして、柴野くんとのことも知っているようだった。

「…また一緒だったのね。」

そう、少しわだかまりがある雰囲気で言われた。

後に、母に聞いた話だけど。
うみちゃんのお母さんとわたしのお母さんの共通のお友達がいて、その旦那さんが昔、集まりでわたしの母に言い寄ったことがあるらしい。
そこも夫婦仲が悪くレス気味だったので奥さんが冗談半分に年下のわたしの母を介抱に向かわせたところ、
酔った旦那さんが手を引いてキスをせがんでいたというのだ。
その現場を他のお母さんが見たというので、浮気を疑われて悪評を、流されていたらしい。

けしかけられたからといって手を出そうと口説いた旦那さんもだが、気が合う同級生だからと仲良くおしゃべりしていた母にも隙があったのだろう…。
いずれにしても、そのせいもあり余計に夫婦仲に亀裂が入り、別居したらしいのだ。

その一家が、引っ越した家に、うみちゃんとお母さんに兄弟が住んでるというのだ。

そしてその奥さんとうみちゃんのお母さんは同じ職場だというのだから、その噂は当然聞いていたのだろう。

仕舞いにはわたしまで柴野くんをうみちゃんから奪ったという形になったので…親が親なら子も子だと認識されてしまったらしい。

女の敵は女なのだ。
浮わついた男よりも思わせ振りな女が、絶対悪いという圧力。

押しに弱いわたしもいけなかったんだけど、このときはあまりその危険性に気づいてはいなかった。

そう…これはまだ、第二章のほんの始まりでしかないのだ。
ここから始まるわたしの物語は、途方もなく愚かで寂しさと自己肯定感の低さからくる突拍子もない行動がいかに自分の首を締めていくのかを…これでもかこれでもかと思い知ることになるのだった。
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