転生輪廻の伝承記 ~一から作る異世界文化~

菊一片

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第一生 龍影の賢者 ラウス・テオルア

第3話 生まれ変わった後の世界

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生と死の間の世界でのやり取りのあと、俺の記憶と意識が戻ったのは五歳の誕生日の日が来たときだった。
ただ、よくあるラノベにある一気に記憶が戻るパターンではなく、夢という形で毎日前世の記憶を追体験するといった形式で記憶を取り戻す形になった。
そして、昨日の夜に見た夢がまさに生まれ変わる直前の時の記憶で、それを見た翌日の朝に本当の意味で戻った。
「これが
自分の手を見つめて開いたり閉じたりして感触を確かめる。
「俺の名前は、ラウス・テオルア、で今日が五歳の誕生日っと・・・」
今の自分とその周りの状況の確認、そして、部屋の中を見渡して窓を見つける。
その窓を開けて外の様子を見てみると、
「おお!?」
周りには大き過ぎる木々が立ち並んでいた。
「樹齢何年だ?太すぎだろう・・・見える範囲から判断すると山村かな?」
記憶が戻るまで当然そんな疑問をもつことなど無い為に自分がいる村の名前しか知らない。
「村の名前は確か、マルシア、だったはず。」
これから自分の村がどこにあるのか、この村がどんな場所なのか調べながら生活していかないといけない。
「いきなり文明開化、とは絶対に無理だからな・・・」
今日は確か俺自身のの誕生日だったはずだ。
この世界だと五歳の誕生日に教会に行き、祈りを捧げる事で自分の状態や能力を簡単に把握できるスキルのようなモノを授けられるらしい。
「なんにしても、とりあえず着替えるか!」
俺はドキドキとワクワクが抑えられないの笑顔で服を着替えた。

着替えた俺は居間に向かう。
するとそこでは、母と祖母が朝ごはんの支度をしていた。
「おはよう!リム母さん、カーナばあちゃん!」
「あら?おはよう、ラウス」
「おはよう、今日は早起きだねぇ」
長い銀髪をそれぞれ結っている二人がこちらに振り向く。
「今日は五歳の誕生日、祝福の儀を受けるのですものね。この子が早起きしない訳ないか・・・」
母リムが困ったように頬に手を当て首をひねる。
「この子は赤ん坊の時から自分の好奇心に忠実だったからねぇ、もう先月ぐらいから祝福の儀に対する好奇心でいっぱいだったよ・・・」
祖母カーナが遠い目をしている、そんなに俺は好奇心の塊だろうか?・・・確かに前世の記憶が戻る前の記憶にそんな事があった気がする。
「そ、それより朝ごはんは?」
とりあえずここは子供らしく誤魔化すのがベターだ!
「ハイハイ、今日はお父さんが山ウサギマウンテン・ラビットを狩って来てくれたから野菜たっぷりのシチューだよ。」
「パンも今焼いてるからちょっと待ってなさい。」
この世界の調理レベルでシチューを食べれるのは多分最高の贅沢だろうな・・・じゅるり・・・
「・・・腹へった・・・」
とりあえずこの世界で生きる目標としてお腹いっぱい旨いもの食べる!をひとつの目標にしようか、そうでもしないと生きていけない気がする。
「まだもう少しかかるから、先に顔を洗って来なさい!」
お腹がすいて少しだらけていると、ぴしゃっと怒られてしまった。
外にある井戸から水を汲む為に家を出ると、
「むぅ~」
祖父のリウス・テオルアが何かやっていた。
体から湯気のようなモノが立ち上ぼり、体内で何かをように感じる。
「かぁ!!」
両手から何かレーザーのようなモノが放たれ、
[ズド~ン]
いろいろなモノが砕け散る音が響いた。
「あ~」
それはもう、辺りは散らかって掃除が大変そうだった・・・
俺は満足そうにしている祖父であるリウスに声を掛けずに顔を洗う為に井戸に向かうと、程なくして母と祖母の祖父に対する説教の声が聞こえてきた。
「危うく声を掛ける所だった・・・」
「おっ!?おはよう、ラウス」
井戸から水を汲んで顔を洗っていると、急に背後から声を掛けられた。
「って、いて!?」
それと同時に不意討ちももらった。
「今日で五歳になったんだから、どうせそのうちこっそり山の方に向かうんだろうけど、ちゃんと母さんやばあちゃんを納得させるぐらいに強くなってからじゃないとダメだよ!」
頭に軽く小突いたのは、五歳になった直後に俺が暴走するのではないかと危惧しているからか・・・
俺の父であるラオル・テオルアは俺が好奇心の塊である事をしっかりと理解している。
狩りに連れて行ってもらうように三歳ぐらいからごねている記憶があるな・・・
「さすがに、行かないよ!とりあえずじいちゃんにいろいろ教えて貰おうとか考えたけど・・・大丈夫かな?」
「はっはっはっ!それは父さん何も言えないな・・・」
父は軽く笑った後に俺から目を逸らした。
「まぁいいや!とりあえず朝ごはん食べよう!」
そう言って父の手を引いて俺は家に向かって走って行った。
今日から始まる新しい人生にワクワクしながら腹が減っては冒険は出来ぬ!!と朝ごはんにありついた。

朝食をとるために、皆で椅子に座り簡単な祈りを捧げる。
「大地と空、そして命の恵みに感謝を・・・」
祖父が祈りを捧げ終わったら食事の開始だ!
「いっただきま~す♪」
無意識のうちに出ていた言葉に祖母と母が首をひねる。
「「何を?」」
「二人ともラウスの事に疑問を持ってるとごはんが冷めちゃうし、全部食べられちゃうよ?」
父がさりげなくひどい事言っている。
「父さん、パンいらないなら俺が食べてあげるからちょ~だい?♪」
「ダメだよ、父さんだって腹ペコなんだから、ラウスのシチューと交換ならいいよ?」
「いや、良くないよ!?」
見かけによらず父もかなり食べる方なのだ、一番食べるのはじいちゃんだが・・・
「はぁ、朝からかなり作ったはずなんだけどねぇ・・・」
「諦めましょう、母様」
「ここに今、この子まで加わるのかい・・・ラオル、あんたはもっと頑張らないとダメだよ!ついでにリウス!あんたもたまには狩りに行きな!朝からあんなに散らかして!?」
ばあちゃんが我が家の食事事情を憂いている・・・
まぁ、一般家庭の三倍は食べてると思う。
それでも腹が減るのは仕方ない、生きている以上世界の摂理だし。
「ばあちゃん、シチューおかわり!」
そう言って俺が皿を出すと、
「はいよ、ちょっと待ってな」
何も言わずにおかわりをしてくれた、そう思ったら
「ラウス、あんたはしっかりと稼ぐんだよ!」
目を合わせて訴えられてしまった。
「う、うん!俺、頑張るよ!」
あんなに必死な表情で言われたらそう言うしかないよ・・・
「大丈夫よ母様、ラウスはしっかりとしているもの。」
母さんからのよくわからない援護を受けながら誕生日の朝食は賑やかに終えた。

俺が生まれ変わった村、マルシアには教会がある。
その教会の宗教の名は、想心教そうしんきょう、相手を想う心と心の間にこそ神は宿るという考え方から出来た宗教だ。
ただ、あまり布教はしていないらしい、というのもうちの村は俺の両親と祖父母が異常だからかなり豊かだが、普通の村だと獲物を狩るのは至難の技らしいのだ。
うちの家族はどれぐらい強いのだろうか?
それも今日の祝福の儀を終わったら理解出来るのだろうか?
そんな事をワクワクドキドキしながら考えていると村の中心に建てられた教会に着いた。
「教会に来るのも久しぶりだのう。」
じいちゃんがそんな事を言うと、
「あんたはもう少し落ち着いて祈りを捧げる事を覚えな!」
ばあちゃんが苦言をズバッと喋って、
「まあまあ、今日はちゃんと来たんですし」
父さんが二人を諌めて、
「もし今日来なかったら絶交だったけどね」
母さんがボソッと爆弾放った。
俺は苦笑いしながら家族の会話聞くしか出来なかったが、教会の中に入って辺りを見渡すと冒険したくて仕方なかった。
「ラウ~ス?ダメよ~、勝手に探索しちゃあ」
母さんに即座に捕まってしまった。
年齢通りに手をつないで拘束して俺は神父様の所に連れて行かれた。

「いらっしゃい、ラウス君。そして、おめでとう!」
「ありがとうございます、カリス神父様!」
連れて行かれた先で会った神父様は、カリス・ローン神父。
想心教の神父様でこの村の相談役も兼任している。
想心教は医療に対する研究を進めていて、現在は薬学や薬草、病気に対する研究を主に進めているそうだ。
「では、早速祝福の儀を始めようか?」
「俺以外にもいるんじゃないの?」
まだ俺しか来ていないのに、儀式を始めようとする神父様に俺は疑問を浮かべると、
「そこは大丈夫だよ、どのみち一人ずつ順番にやっていかないといけないからね。」
「へぇ~、そうなんだ・・・」
なら問題ないかな?
「それじゃあ、よろしくお願いします!」
俺が頭を下げると、
「はい、よく出来ました」
下げた頭をポンポンされた。
「まったくこういうときだけ素直なんだから・・・」
「あの子はあれでいいんだよ、好奇心が強すぎるのが少々アレだが、基本的に素直で優しいいい子じゃないか」
「あの子は何になりたいと言うでしょうね?」
「わからん、だが儂らの予想を軽く越える事を仕出かしそうじゃな」
緊張している俺を遠くから眺めて様子を見守っている家族達も期待と不安と共に見ていると、神父様が祈りを捧げた。
「我らの想い、心と心の間に住みし神よ、この世界に生まれ新たな時代を担う子供達へ、祝福を!!」
神父様の祈りと共に光が俺に降り注ぐ。
「・・・・」
あまりに幻想的な光景に言葉が出なかった。
「はて?儂の時はあんな事があったじゃろうか?」
「いや、僕の時もそんな事なかったと思うんですけど・・・」
「ひょっとして、うちの子すごい?」
「あの子なら将来、絶対大物になるってわかってた事だろう?今更何を言ってんだい?」
神父様も予想外の事に驚いている。
とりあえずいつまでもそうしてはいられないので、神父様に声を掛ける。
「神父様?この後はどうすればいいの?」
「はっ!?と、そうですね、ステータスと唱えれば自分の能力や経歴、職業が見れるようになるので家に戻ったら試しにやってみてください。これで今日の儀式は終わりですよ」
そう言って神父様は今日のイベントの終わりを告げた。
「よし、そろそろ他の子達も来るじゃろう先に家に帰って自分のステータスを見てみなさい。」
「そうね、もしかしたら何かスキルを授かっているかもしれないわね!」
「後で自分で覚えるスキルよりも祝福の儀で得られるスキルの方が特別で効果が高いからね!今から楽しみだよ!」
「二人とも落ち着いて」
緊張している時は気づかなかったけど・・・うちの家族って結構親バカ?
そんな事を考えながら俺は再び手を拘束されて家に帰った。
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