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17 採取:近くの草原(日帰り)

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 約束の日、東門の内側で待つ。
 都市全体を囲うに用に出来た巨大な塀、その内側と外側に見張りの兵士が立っている。
 私達は邪魔にならないような木陰へと入った。
 隣には、大きなカゴを背負ったノエが居る。

「ノエ重くない?」
「重くありませんっ! ごめんなさ、いおじょうさまに荷物を持たせてしまって」
「バスケット? いいのよ、これぐらい」

 中身は軽食だ。
 ノエが朝から張り切って、作っていたのを確認している。

「に、しても遅いわよね」
「そうなんでしょうか?」
「そう、こういう待合に女の子を待たせるのはダメなのよ」
「オレならここにいる」

 背後の木から声がして、私もノエも飛びのいた。
 赤毛の少年カインが不機嫌な顔でそこに立っている。

「い、いるなら声ぐらいかけなさいよ」
「…………次からそうする」
「まぁいいわ、今日はよろしくね」

 握手の手を差し出したら、いきなり小走りに門へと向かっていった。
 おーい、差し出した私の手どうするの。

 ノエが私の手を握ってくれた。
 優しくて涙がでそうよ。

 私たちも東門へ行き外に出るのに手続きをする。
 簡単な名簿、いくらでも偽造できそうだけど偽造する事もない。
 犯罪者かどうかを調べるだけだ。

 カインのほうを見る、兵士もまさか第二王子と思わないのか、それとも既に話は通じているのか解らないけど普通に出国するようだ。私たちも後に続く。

 近場の草原までは徒歩で一時間もかからない。
 主に取れるのは、魔法の草、土、色のついた花々など。
 魔物のほうは、ぽよぽよ、旅カラス、二本角の兎とかだろう。
 ちなみに、何度も名前が出ているぽよぽよというのはスライムみたいな者だ、体の中心に核があり、その核が中和剤の材料になったりもする。

 先頭にカイン、その後ろを私とノエが手を繋いで歩く。

「ノエ、外にでるのはじめてなんです」
「私もこうして徒歩は初めてね、グランに来た時は馬車だったし。
 こうドラゴンでもばーって出れば面白いんだけどね」
「ど、どらごんですかっ!」

 前を歩いていたカインが立ち止まる。
 剣を抜くと、その刀身が日の光に照らされて輝く。

「おじょうさまっまさか、どらごん……」
「いやね冗談。冗談よ? カイン?」

 カインは答えずに剣を一振りすると、鞘へと収め歩き出そうとする。
 カインの前には二つに切られた火ぽよぽよと、水ぽよぽよが溶けている。

「ちょっと、何か言いなさいよ」

 不思議そうな顔で振り向く。

「魔物が出たら出ましたとか、下がってろとか。
 倒しましたとか、そういう一言あっても、お姉ちゃんいいと思うなー。
 あっノエその丸いのが核と思うからカゴいれておいて」
「わかりました、おじょうさま」
「ちょっと、カイン聞いてる?」
「…………次回は気をつける」

 よく見るとカインの手から血がぽたぽたと地面へと落ちる。

「うわ、血でてるじゃない」
「気にするな、護衛として無能なだけだ」
「切り傷……じゃないわね」
「核を仕留める前に溶かされた」
「だー、久々の長文と思ったらソレ? ノエ傷薬と包帯もってる?
 そうそう、それ」

 ノエから液体の傷薬もらい、カインの傷口へと振り掛ける。
 初めて使うから下限がわからない……まぁ小さいし全部かければ問題ないでしょ。

「量が多い」

 イラ。

「いいのよ、そのほうが直り早いでしょっ」

 最後に包帯を巻こうとしたら、私の手からすべって落ちた。
 包帯は転がり、赤ぽよぽよだった液体へと吸い込まれた。

「ノエ……代えは」
「ご、ごめんなさい」

 しょうがない、私は自分のハンカチを出すとカインの傷口へと縛った。

「一応言うけど、綺麗なハンカチだからね」
「…………」
「き、聞いてる?」
「…………」

 カインは、勝手に歩き出す。
 まったくもう……、ノエのほうも終わったらしくカゴを背負いなおしていた。


 ◇◇◇

 草原へついた。
 綺麗に刈り取られた草、森との隙間にある広場だ。
 これ以上いくと『東の森』といって魔物も気持ち強くなる。

 大きな布を地面へと広げる。
 角を適当な石で押さえると私は座った。
 ノエを呼び寄せると、ノエは不思議な顔で近くに寄ってくる。

「とうっ!」
「あわっお、おじょうさまっ」

 私はノエに抱きつくと、シート代わりの大きな布の上をごろごろする。
 止まった所で、暗い顔のカインと目があった。

「何?」

 返事は返ってこない、カインは顔を背ける。別にいいんですけどねー。
 目の回っているノエを再度抱きかかえると、反対側へと転がる。
 気持ちいい。

 転生前でもこう童心に帰る事は少なかった気がする。
 ノエが腕の中でアワアワいって言う。

「気持ちいい、カインも混ざる?」

 カインのほうをみると、やっぱり私を見ていなく、なんだったら背中を向けている。

「おーい、依頼主が呼んでいるんだぞー」
「っ」

 私が呼ぶと一度振り返り、慌てて首を戻した。

「ノエ、目が回りますー……おじょうさまっ!!」
「なーに?」
「し、したっ」

 起き上がったノエがの足元を指差す。
 スカートがめくれており、生足がみえている、もちろんスパッツ的なのを履いているので下着は見えない。

「カイン、もういいわよ隠したから」
「…………悪かった」
「別にいいわよ、子供じゃあるまいし、それに仮に下着が見えたぐらいで――――」
「俺と同じ歳だよな……?」

 あ、そうよね。
 エルンとしてはまだ十六歳だった。

「それはそれって事で、さて採取でもしましょうか」
「おじょうさま、手伝います!」
「ありがと、では魔法の草でも取りましょうか」

 納得していないカインをほおって置いて、採取をしようとおもう。
 魔法の草は、他の草より栄養価もある、見分け方は根元が白ければそうで、何もなければただの草。

 採取する事数十分、私は布の上で大の字になる。
 そう、飽きた。
 そりゃゲームでも半日でも十本ぐらいしか数取れないわけよ、何十本も雑草の根元調べて魔法の草だったのはわずか一本だ。

 ノエは少し遠くで丁寧に草を別けて根元を調べてる。
 えらいなぁ……。

「ノエー休憩にしましょうー」
「はい、今戻りますー」

 顔に少し土汚れをつけたノエが立ちあがり私を見る。
 その背後に突然大きな影が出来た。
 ノエの背後には、身長の数倍のある様々な色に体を変化させるぽよぽよがノエに覆い被さろうとしていた。

「ノエええええええ」

 ノエは背後の気配で振り向き、そして固まった。
 
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