グラン王国の錬金術師 if 悪役錬金術師に転生してました!

えん水無月

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48 責任の足し算

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 馬車から降り屋敷いえと帰る。
 ノエにただいまの挨拶も簡潔にすませ私は寝室へと直行した。

 テーブルの上は綺麗に片付けられており、指輪なんて何所にもない。
 思わず座り込みそうなのを我慢して、今度は一階へといく。
 ハタキをもったノエが掃除していた。

「ノエー!」
「はい、なんでしょうか」
「机の上のゴミって」
「はい! おじょうさまのお願い通り昨日全部捨てました」
「そ、そう……」

 笑顔の眩しいノエに、文句を言えるはずも無い。
 それに、部屋を片付けてと言ったのは私だ。
 でも、ノエが指輪を捨てるとも思えないので、聞いてみる事にした。

「ええっと、そのゴミの中に指輪ってなかった?」
「いいえ? あ、でもカー助君が光る何かをくわえていたかもしれません。
 ガラス球と思っていたんですけど……ノエのミスです。す、すぐに探してきます!」
「っと、別に怒ってないわ。そのカー助はどこ」

 ノエは黙って首を振る。
 私も昨日から見ていない。

「うーん、困ったわね……探知機みたいのがあればいいのに」
「ノエ探してきます!」

 走り出すノエの袖を引っ張る。
 慌てたノエが立ち止まり私を見てきた。

「あてもないんでしょうし、今はいいわ。でも見かけたら首に縄つけても捕まえておいて」
「は、はい」

 ちょっと部屋に行くわねと伝え、寝室へと篭る。
 
 まずいわね。
 ペットの責任は飼い主の責任よね。
 戦争の引き金になりそうな物を私が持っていたとしると、ばれた時がやばい。
 しかも紛失となると…………。


 私の未来は、首を切られて相手の国へと届けられる。
 どうぞ指輪はなくなりましたけど、犯人の首をお届けしますってね。

 いやいやいやいや。
 どーすんのよ!
 仮に全部ばれたと仮定して――――。


 ここはとある学園の中である。
 リポーターである女性は、マイクを片手に学園へと入った。
 そして、犯人の知人にインタビューをしてまいりますと、言うと関係者へとマイクを突きつける。
 なおプライバシー保護のため音声と顔にはモザイクを入れています。と脳内で再生された。

 男性教師Dの証言。
 『エルン君の事か、生徒の中でも評判は悪くてね、ボクに迷惑かけてばかりで困っていたんだ。いつかはやると思っていたよ』
 
 犯人と婚約した事のある青年Rの証言。
 『エルンか、突然婚約を破棄したとおもったら、いや、清々したよ』


 犯人に婚約を申し込んだ青年Kの証言。
 『エルン……婚約……断った……死ね……』


 犯人と最も仲がよいと言われている天才錬金術師N少女の証言
 『エルンさんはその、悪い人に見えるんですけど、信じたくないけど悪い人だったんですね……』

 などなど、ワイドショー的なのを思い浮かべる。

 ドン!
 机を叩くと現実へと戻ってきた。

 いっそ逃げるか? いや、それはダメよね。
 一人ならともかくノエにも迷惑がかかる、幸いノエだけなら。
 あーでも、パパも困るわよね。
 私が打ち首になったら悲しむからしら、悲しむわね……。
 
 落ち着いて考えるのよ。
 絶対にいい答えがあるはず。

「そうよ! カー助から指輪を取り返して学園の庭に落とせばいいのよ!
 後は、それを見つけるか見つけてもらうかで解決!」

 なんだ、簡単じゃないの。

 ………………。

 問題はカー助が居ない事だ。
 結局振り出しにもどったじゃないのよ!

 おじょうさまーと、私を呼ぶ声が聞こえた。
 ノエだ。

「はいはい」

 扉を開けると、困り顔のノエが立っている。

「どうしたの?」
「ヘルンさまが来客されました」

 マジで! もしかして捕まえに来たんじゃ。
 いや、まだ私が犯人とは決まってない! 決まってないわよね……?
 ノエを見ると、私の答えを待っていた。
 
「こほん、お、応接間に通して頂戴」
「わかりました」

 小さくお辞儀をすると廊下を小走りに去っていく。
 応接室に行くと、冒険者姿のヘルンが窓の外を見ていた。

「ま、待たせたわね」

 爽やかな顔で振りむき、私に笑顔を向ける。

「やぁ。エルンさん、思ったより元気そうでよかった」
「そういう、ヘルンはげっそりしてるわね」
「はっはっは、婚約者に逃げられそうでね」

 あ、いらない事を聞いたようなきがする。
 話題を変えないと。

「ご、ご愁傷様。その噂は聞いたわよ、それよりも今日は?」
「なに、事故だから仕方が無い。彼女の功績を考えれば僅かな失敗さ。
 これが人為的な犯人がいれば……いや、それよりも指輪を紛失していたのであれば」
「……あれば?」
「首を切り落としてわびを送らないと」

 まじで、まじで。
 ちょー怒ってるじゃない!

「じょ、じょうだんよね」
「もちろん」

 顔は笑っているけど、ヘルンの目が怖い。
 ノエが失礼しますというと紅茶のお代わりを持って来た。
 カタカタと震えているのは、気のせいよね……気のせいよね!? そして失礼しますと、部屋から出て行く。

「さて、僕の話はもういいだろう。
 今日来たのは、弟の様子がおかしくてね」

 弟。ええっとヘルンが第一王子だから、第二王子の……。
 私に婚約を申し込んできたカインの事だ。


「へぇ……」
「へぇってエルンさん。それもこれも、エルンさんの家に訪ねてから何だよ」
「偶然もあるものね」
「「………………」」

 私もヘルンも黙っている。
 見詰め合ったまま、ヘルンが息を大きく吐く。

「腹の探りあいは好きなほうじゃなくてね。もう、聞いてしまうよ。
 弟の……カインの何所かだめなんだ?」
「うわ、知っていて試したのね」
「悪いね」


 私は腕を組んで考える。
 駄目な所かぁ。
 性格は暗そうだけど、悪い人ではないわよね。
 顔はイケメンで剣の腕もいい。
 実家は金持ちってか王族。
 あ、でもあれよね……。

「求めてるものかしら」
「求めてる?」
「カインもリュートもなんだけど、恋人よりも友人それにほっとけない弟みたいな感じなのよね」

 ヘルンが、そうかと小さく呟くので、私は続きを話す。

「あっもしかして、あの婚約って絶対に受けないとダメなの?」
「え。ああ……いや婚礼の儀もまだだし、僕と同じ水面下って所。
 一般貴族と違って王族の婚約は複雑なんだよ、カインはエルンさんの許可を取り次第周りを説得するつもりだったけどね。
 言いたくはないけど、エルンさんってリュート君と婚約破棄しただろ? それも結構問題あるんだよ」

 うぐ、結構痛い所を突いてくる。
 そりゃ、婚約なんだし勝手に取りやめたらダメなのはわかるけどさー。
 あのままだったら殺されていたししょうがないじゃないの。
 そりゃね、記憶戻る前は相思相愛と思っていたわよ、でも段々と性格が捻じ曲がっていくリュートに騙され――――。

 ペチペチ。

 ペチペチペチ。

 腕を叩かれて前を向いた。
 ヘルンが困った顔で立っている。

「ああ、よかった。戻ってきたね。
 まぁでも、カインを振った理由はわかったよ。
 それともう一つ用事があるんだ」
「まだあるの?」
「どちらかと言えばこっちが本命というか、王子である僕が私用に使ってはダメと思うだけど、エルンさんの精霊ってカラスだったよね。指輪を探すのに手伝って欲しいんだ、カラスだから光物を探すのに役に立つと思うんだ」
「えっ!」


 申し訳なさそうに、頼みこむヘルン。
 泥棒に盗まれた物を探させるみたいな、仕方が無いし? 引き受けるしかなわよね。
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