グラン王国の錬金術師 if 悪役錬金術師に転生してました!

えん水無月

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58 雷雨の先の馬車の中

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 ガタコトと馬車が揺れる。
 狭い馬車の中なのにとてつもなく距離があるようなきがする。
 しっかし久しぶりに会ったわ、最後に見たのは私とナナがプチ行方不明になって、その結果を知らせた時だから、一月とちょっと前ね。

 なんで乗っているのかしら――あるとしたら不祥事で逃亡――!


「――――あっ、もしかして教師を首になって夜逃げ……」
「違うっ!」
「は、また口に……」
「まったく、なぜ天才であるボクが首になると思っているんだ。
 仮に首になるとしたら君のせいだな」
「どういう意味かしらっ! 最近は錬金術も頑張ってるのよ! 水の中和剤だって作れるようになっ……へっくちっ」

 クシャミをして鼻をすする。
 夏とは言え豪雨に打たれると少し寒い。

「っ……受け取れ」
「はい?」

 バサっという音と共に私の体に布が飛んでくる、良く見るとグレーのローブだ。

「え? いいの、ディーオのローブよね」
「服も濡れてる。乾かせ」

 その言葉で私は衣服を見た。
 胸の部分が透けており下着のラインがはっきりと見えた。

「ふーん、えっちじゃん」

 どこかで覚えた台詞を言うと、ディーオが激しく咳き込んだ。

「勘違いしないで欲しいっ! ボクにそういう覗き趣味はない!」
「狭いんだから怒鳴らなくても聞こえるわよ、所で馬車で何所か行く用事でもあるの?」

 雨の音と共に、馬車を操縦しているジャンの笑いも聞こえたようなきがする。

「あるから乗っている。別に隠す事でもないな両親の墓参りだ」
「え、あ…………なにかごめん」
「もう一つ言って置く、そういう同情めいた顔はしなくていい。人はいずれ死ぬ」
「それはそうなんだけど……この荷物はお土産?」


 私は積まれている木箱を指差す。
 はっきり言って邪魔である、狭い馬車の中が余計に狭い。


「旅馬車の荷物だろう。人だけを乗せる仕事じゃないからな」
「へー」

 箱はちょっと外れており、私はその隙間から中身を覗き込む。
 なんだろ? 白い……骨……? え。これって人間の……。

「おい」
「はいいっ!」

 ジャンが顔をだしていた。


「おっとそんなに驚かなくてもよくないか? 所で嬢ちゃん。やっぱり橋落ちてるな……あとちょっと顔を出してくれ」
「な、なんでもないわよ」


 見間違いよね。骨ってそう豚や鳥の骨よ。ラーメンが美味しいのよね。
 出しとる為に入れてるだけ。っとそれよりも、言われるままに布をめくり御者の横に顔をだす。
 数メートルさきにあるはずの橋が無く、流れの速い川はとてもじゃないが渡れそうにはない。

 反対側でちらちらとランプの光が見えた。
 人がいるのがわかるけど、距離がありすぎて表情まで見えない。
 そう思っているとジャンのほうでもランプに火を灯すとなにやら動かす。

「ああこれか? 貴族の旅馬車から貴族を保護したって知らせた。あっちからは了解したって返事だ」
「へぇ便利なのね」
「さて、本当にミゲールでいいのか?」
「何が?」
「そこの潰れそうな小屋あるだろ?」
「潰れそうってか潰れてるわよね」

 私の目には扉さえない殺風景な小屋もどきしかみえない。
 窓枠もあるが穴が開いている。

「別にこの橋しか道が無いわけじゃないからな、あそこで待つなら迎えを出せるらしいぞ」
「ご冗談。ミゲールの村でいいわよ、どうせ里帰りぐらいしか予定ないんだし」
「わかった。じゃぁ連絡いれて馬車を動かす、戻っておけ」

 はーいと、返事をして馬車の中へと戻る。

「と、いう事で村までよろしく」
「まったく、静にしてろ」
「はいはい、ふぁあー…………失礼」

 手を当てて口を塞ぐ、ねむい。
 さっき中途半端に寝たから眠くなって来た。このローブも暖かいのよね。

「眠いのか、ついたら起こすか?」
「本当? あ、でも寝てる間に変な事されても。冗談よ! そんな怒らないでよ」
「怒ってはいない呆れてるんだ…………そうポンポンと下らない事を思いつくもんだ」
「下らないってのは何よ。錬金術師は柔軟な発想が好ましいって本に書いてたわよ!」
「ほう、少しは勉強しているようだな、君が寝ないならボクが寝る。村までまだ数時間はあるはずだ」

 狭い馬車の中でディーオはゴロンと横になる。
 私には見えないように顔は外側になった。

 あ、本当に寝るのね。
 私も壁のほう向いて体を楽にする。
 雨の音いい具合に気持ちよくて…………突然に肩を叩かれた。

 はっ! これって噂に聞く男女のサインって奴では。
 思い起こせば、前世の記憶がなくなる前にリュートに対して暗がりで何度も肩を叩いた記憶が蘇る。
 その度に寝た振りされたけど、今となってはそれでよかったわ。
 で、どうしよう…………ってそんなわけはない、眠いからって考えすぎ。

「嬢ちゃんもう着いたべ」

 案の定ジャンの声だ。


「ず、ずいぶんと早いのね」
「そりゃ二人とも寝ていたからな。さてもう一人のほうも知り合いなんだろ? 馬を返してくるから適当に降りてくれ」

 ジャンは笑顔で言うと馬車から降りていった。
 何時の間に寝ていたのかしら……。

「ディーオ、いつまで寝てるの。着いたって言ってるわよ」
「騒ぐな、聞こえている」

 相変わらず強い雨が降っている。
 ジャンからボロボロの傘を貰い、村へと降り立った。
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