グラン王国の錬金術師 if 悪役錬金術師に転生してました!

えん水無月

文字の大きさ
67 / 209

65.5 ある男の日記02

しおりを挟む
 古い日記を開く。
 日記には短く、銀水晶の花を手に入れたと、だけ書いている。
 あの時か……ボクがまだ錬金術科の学生だった頃の記憶だ。


 ◇◇◇

「だから、どうして君たちは何も調べない!!」

 ボクは二人に怒鳴りつける。
 一人は不思議そうな顔をして、もう一人は酒臭い息を辺りに撒き散らす。
 どっちもボクと同じぐらいの年齢で、赤毛が馬鹿一号、褐色で銀髪が馬鹿二号だ。

「怒ったら皺ふえるよ!」
「にゃはは、怒っても起きた事はしゃーないにゃっ」

 思わず頭を抱えたくなる。
 いや、実際に抱えた。場所は氷結洞窟。
 王家の墓とは別な所で、そのさらに奥には銀水晶があるとも噂されている。その噂を持って来たのは、能天気なミーナ馬鹿一号と飲んだくれのアマンダ馬鹿二号だ。


「で。どうする気だ、ボクはまだ死にたくないぞ」


 ボクらの視線の先には、巨大すぎる氷蛇ひょうじゃが獲物を探し動いている。
 人間なんてペロリと飲み込むだろう。
 
 地下に向かう途中で、馬鹿一号が踏んだ罠。
 突然別な空間へと飛ばされ、そこで突然襲ってきたレアモンスターの一種だ。
 もっとも出合って嬉しいレアじゃなく、出会ったら死の可能性が高いほうでのレアだ。

 既に戦闘態勢に入っており、見失った僕らを探している。


「にゃはは、おねーさんに任せなさい!」
「おい、酔っ払い勝手に前に出るなっ!」
「アマちゃん、アマちゃんの冒険者レベルは五十超えたから余裕なはずだよ!」
「まっかせるにゃー!」


 コイツはまた良くわからない事を言う。
 冒険者に熟練はいてもレベルなんてものは目で見えるものじゃない。
 ましてや、こいつはまだ若い。


「「あっ」」

 
 ボクとミーナの声が、偶然ではあるがはもった。
 アマンダが氷蛇に丸呑みされたからだ。


「おい! ミーナ!! どうなってる、食われたぞ。何がパーティーは三人が丁度いいだ」
「ひっどーい、最初に三人が効率いいって言ったのはそっちじゃーん」
「う。そ、それは言ったかもしれないが護衛が食われてどうするっ。
 おい、まてそれはミニボムレベル4か?」
「ううん。ミニボムレベル9ミーナオリジナルっこれで吹っ飛ばそう。いまならアマちゃんも消化前で助かるよ」

 馬鹿はミニボムに火を点けた。
 ボクは慌てて馬鹿からミニボムを奪うと導火線の火を無理やり握り潰す。

「ひっどーい、なにするのー」
「馬鹿かっ、アレの後ろにある魔方陣まで壊れたらどうするきだ! ボムを使うなっ! もういい、ボクが囮になる。
 馬鹿は先に逃げろっ。いくら平民でも命に上下はないからな……」
「うわー、おっとこまえーでも、足が震えてるよ?」


 どこまで能天気なんだこいつらは……。


「し、しかたがないだろっ、一人でも生存者を出すのが好ましい」
「一人より三人で帰ろうよ……あっ氷蛇の様子がプルプルしてる、進化しそうだよ?」
「してたまるかっ!」


 ボクと馬鹿の目の前でアマンダを飲み込んだ氷蛇の動きが活発になった。
 尻尾や胴体を床や壁にぶつけ、苦しんでいるようだ。
 次の瞬間、腹の部分から切り裂かれ、血まみれのアマンダが笑顔出てきたのだ……。
 もちろん氷蛇は何度か胴体をくねらせた後に息絶えた。

「ミーナっちの言うとおり楽勝だったにゃ」
「でしょー。ディーオっち、また難しい顔してるー」
「誰のせいだと…………もういい、天才のボクには馬鹿どものテンションは辛い帰らせてくれ」
「えーまだ銀水晶取ってないよー売れば儲かるって話だしー」
「男の癖に小さい事にきにするにゃよー、ツケを払いたいしー」

 気づけば僕の両腕は、女性二人に掴まれている。

「やめろ! 帰るんだ!! 帰らせてくれ!!!」


 ◇◇◇

 日記を静かに閉じた。
 苦い思いとともに、棚にある銀水晶の花を見た。
 馬鹿いわく、好きな女性に送ると喜ばれるよと言われた小物だ。
 あの時、勇気を出して送ればまた違った未来もあったかもしれないな。

「ふ、ボクとした事が馬鹿な考えだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~

詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?  小説家になろう様でも投稿させていただいております 8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位 8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位 8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位 に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

処理中です...