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131 そういう大事な事は早くいいなさいよ

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 宿にもどると、カルロスが手を上げてきた。
 ディーオが上半身を起していた。

「寝てなさいよ」
「すまんな」


 私から鳳凰の……いいえ、焼き鳥を手に取ったカルロスは、一本勝手に食べると、別な一本をディーオに手渡す。
 ディーオが旨いなという声が、私がコートを脱いでいる間に聞こえてきた。


「で、何時治るの?」
「ああ……あと十日ぐらいで終わるだろうな」
「ちょ、そんなに掛かるの?」


 私が文句を言うと、カルロスが神妙な顔になる。
 まぁそんなもんだろ。

「さて、ガーラ帰るぞ」
「はい、先生!」
「あ、エルン。ディーオの体に効きそうな奴を書いておいた明日の朝見ておけ」
「お、ありがとー」


 折りたたまれた紙をテーブルに置くと、カルロスは帰って言った。
 ガーラを連れ出して怒られそうだなと、笑いながらいうと、ガーラがむきになって、そんな事はありません。と、顔を赤くしていうのは微笑ましい。

 二人っきりになった部屋でディーオをみると、何を見ていると怒られた。


「別に病人の心配したっていいじゃないのよ」
「そうだな……いや、そういえば……君は錬金術で何かほしい物はあるのか?」
「え?」


 なんだ唐突に、うーんと……作れないからなぁ。いやナナが横にいれば作れるのよ。実際石けんも一人で作ったし、中和剤も作れる。聖なるパンや銀水晶のネックレスもナナがいれば作れた。

 ただ、どうも一人でやってると飽きるのよね。
 あと錬金術というよりは、コックや、鍛冶師なきがする。
 もしかしたら昼に作ったすいとんも、【エルンのすいとん】として錬金術アイテムかもしれない。


「ないわね」
「…………一応言うが錬金術師だよな」
「肩書きはね」
「無いなら無いでいい」
「さて、少し寝ときなさいよ」
「そうだな、世話になった」
「はいはい」
 

 新聞でも読んで時間を潰す。新聞といっても、毎日発行ではなくて週一発行の物だ。
 読み終わる頃にはディーオは、静かに寝息を立て始めた。
 熱を測るとまだ熱い。


 仕方が無い……ベッドは一つしかないので、ソファーで寝ることにした。


 ◇◇◇


 何か酷い夢を見た気がする。
 ってか寒さで目が覚める。

「いやー、この時間は寒いわね。とりあえず、ディーオは寝てるか……ええっと、なんだっけ」

 一応熱をみる。
 お、熱が無い……これなら回復するわね。
 そうそう、カルロスが滋養強壮の品物を書いたのをくれたんだっけ。
 私はその紙を開く。

 ふむ…………コートに手を伸ばし部屋の扉をそっと閉めた。
 宿の主人にお出かけですか? といわれて、短くそうよ! といったら何故か顔が引きつられた。

 雪が降っている。
 あーっもう馬車借りればよかった! 紙に書かれている家を、数人に聞いてやっとたどり着く。
 庭の広い小さな一件屋があった、警備する人は居なく田舎はこうなのかもしれない。
 ってか、王都が厳重すぎるだけ? でも実家の屋敷には門兵いたけどなー……。


「エルンさん!」
「うおっと、あれ、ガーラ?」
「はい、ガーラです」


 冬だというのに革の軽鎧を来たガーラが歩いてくる。
 片手に剣をもち上半身タオルをかけて湯気がでているのが見えた。
 その後ろには、汗一つかいてないカルロスが片手を上げている。


「よう、やっぱり来たか」
「来たわよ、あんな言葉かかれていたら、来ないわけないじゃない」


 カルロスが置いてあったメモには、熱が下がり、ほおって置けば死ぬ。と、だけ書かれていた。
 冗談はよしこさん、というかよしこさんを知らないけど、こうして書かれているカルロスの家へと来たのだ。


「口に出てるぞ。俺の家じゃないけどな」
「そうなの?」
「ガーラのだ、俺としてはこの町で小さいカフェでも開くつもり予定だったが、こいつの祖父に会ったとたんに、今まで融資した分を返せって言われて、返せなかったら孫の面倒を見ろって話よ」
「その、先生すみません……」
「い、いや。そのガーラのせいってわけじゃ」
「二人のラブラブを見に来たんじゃないんですけどっ」
「っと、そうだったな中へ入れ」


 赤面して固まっているガーラを残して家へと入った。
 一応放置していいの? と聞いた所、大丈夫だろと返って来る。

 暖房の効いた部屋へと通されると、適当に座れといわれた。

「さて……何から話すか」
「何って、この手紙の事からに決まってるでしょ、何よ死ぬって。アトラスの風邪ってのじゃなかったんでしょ」
「ああ、違う。万が一そうだったとしても何かの縁だ薬の一本ぐらい何としても手に入れてやるつもりだった」
「そ、それはどうも」


 あまりのイケメンっぷりに、おもわずこっちの声が小さくなる。

「詳しくはしらないが、アレと同じ症状を昔見た。熱が出て目の色が変わり、昏睡して死亡する、代々そういう人間がでる家もあるそうな。一昔前は呪いといわれていたな、アレの一族にも同じ症状で死んだ奴はいないか? 俺が聞いても特にないって言ってきてな」


 思い当たる節がある、原因はしらないけどディーオの両親は既に亡くなっている。


「え、じゃぁ……あと十日ほどって」
「ああ、本人もわかってるだろうな、たぶん十日ほどでお陀仏だ」
「ちょっと、寝てるアイツを起してくる!」


 扉を開け一歩でると、何かとぶつかった。
 キャっと小さい悲鳴を上げて、ぶつかった相手は転ぶ。


「す、すみません」
「ごめん! 急いでるから」


 私は来た道を走って帰る。
 まわりの通行人が私のために道を開けてくれるから走りやすい。何度が転びそうになって宿に着く。

 急いで部屋に入り、寝てるディーオの胸ぐらをつかんでも……他の事をしても起きなかった……。


 その頃には、私もちょっとは冷静になる。

 起きないって事と、カルロスは手遅れな相手を見つけて手遅れだって言う男だっけと。
 もう一度ガーラの家へいく。今度は手土産と馬車を使って。

 ノッカーを何度も鳴らすと、うるせえよと言うカルロス不満げな声と、先生それはいいすぎですと、いうガーラの声と共に私を家へと招き入れてくれた。

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